「次にくるマンガ大賞2026」1位は『さむわんへるつ』と『おかえり水平線』、歴代の1位作品は本当に“次にきた”のか?

「次にくるマンガ大賞 2026」の結果が2026年9月16日に発表されました。コミックス部門の1位はヤマノエイ「さむわんへるつ」、Webマンガ部門の1位は渡部大羊「おかえり水平線」。どちらも集英社の作品で、前者は週刊少年ジャンプ、後者は少年ジャンプ+で連載中です。

この賞は「これからブレイクしそうな作品」を一般ユーザーの投票で選ぶもので、既刊5巻以内という条件がついています。つまり結果そのものが予測です。では、その予測はどれくらい当たってきたのでしょうか。2015年の第1回から2025年までの歴代1位を並べてみると、この賞がなぜ毎年注目されるのかがはっきり見えてきます。

目次

2026年の1位に選ばれたのはこんな2作品

まずは今年の受賞作から見ていきます。ジャンルもテンポもまるで違う2作が並んだのが、2026年の特徴です。

『さむわんへるつ』は深夜ラジオでつながる高校生のラブコメ

『さむわんへるつ』(ヤマノエイ/集英社)は、真面目な生徒会長の梟森ミメイと、マイペースなクラスメイトの水尾くらげが、共通の趣味である深夜ラジオを通じて距離を縮めていくラブコメディです。ミメイが憧れていたリスナー“うなぎポテト”の正体が実はくらげだった、とわかるところから2人の関係が動き出します。

週刊少年ジャンプで2025年42号から連載が始まり、最新4巻の時点で累計50万部を突破。『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の秋本治が「毎週いやされてます」と推薦コメントを寄せたことも話題になりました。連載開始から1年足らずでの大賞受賞です。

『おかえり水平線』は海辺の銭湯で始まる義兄弟の物語

『おかえり水平線』(渡部大羊/集英社)は、海辺の小さな街の銭湯を舞台にしたヒューマンドラマです。祖父が営む銭湯を手伝いながら暮らす柿内遼馬のもとに、ある日、父親の隠し子だという玲臣がやってきます。血のつながりと家族の距離をめぐる、少しビターな物語です。

少年ジャンプ+で2025年3月23日から隔週日曜更新で連載中。書店員らが選ぶ「マンガ大賞2026」でも4位に入っており、読者投票と書店員投票の両方で評価された形になります。

そもそも「次にくるマンガ大賞」はどんな賞なのか

「次にくるマンガ大賞」は、これからのブレイクが予想される作品を発掘して紹介するという趣旨で2014年に創設されました。運営はニコニコとダ・ヴィンチ。既刊5巻以内の作品を対象とする「コミックス部門」と、Webをメイン媒体とする作品を対象とした「Webマンガ部門」の2部門があり、いずれも一般ユーザーの投票で順位が決まります。

審査員が選ぶ賞ではなく、読者が「これから来る」と思った作品に票を入れる構造になっているのが最大の特徴です。すでに完成したヒット作を表彰するのではなく、まだ巻数が少ない段階の作品だけを対象にしているため、結果は毎年そのまま「1年後から3年後のアニメ化候補リスト」に近い性格を帯びます。

2026年は特別賞として「ニコニコ漫画賞」が新設されました。作品そのものの面白さに加えて、コメントで楽しみ方が広がる作品に贈られる賞で、初代受賞作には『地味なおじさん、実は英雄でした。』が選ばれています。

「次にくるマンガ大賞2026」受賞作一覧

両部門とも20位まで発表されています。まずはコミックス部門から見ていきます。出版社は集英社が7作、小学館と講談社が5作ずつ、残りをスクウェア・エニックス、秋田書店、双葉社が分け合うという顔ぶれになりました。

コミックス部門 1位から20位

既刊巻数は2026年9月時点のものです。5巻以内という応募条件があるため、多くが1巻から5巻のあいだに収まっています。

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No.順位作品名著者出版社既刊
11位さむわんへるつヤマノエイ集英社5巻
22位ふたりバス豊林サカネ小学館3巻
33位レジスタ!藤丸小学館3巻
44位パラショッパーズ福地翼小学館6巻
55位シルバーマウンテン藤田和日郎小学館5巻
66位マネマネにちにち山本崇一朗小学館4巻
77位やめろ好きになってしまうもりぐちあきら集英社4巻
88位恋と呼ぶにはささやかですが萩原ダイスケスクウェア・エニックス2巻
99位ロクのおかしな家中村充志集英社1巻
1010位社長と酒と星ずり騎士講談社9巻
1111位黒月のイェルクナハトスズモトコウ講談社5巻
1212位ローワライ雪野朝哉講談社2巻
1313位今朝も揺られてます増田英二秋田書店5巻
1414位おしえて執事くん眞生みち講談社3巻
1515位こんづくし森長あやみ集英社3巻
1616位2年B組 勇者デストロイヤーず空知英秋集英社1巻
1717位ディグイットヨシダ。講談社4巻
1818位放課後帰宅びより松田舞双葉社7巻
1919位おさななななじみ雪森寧々集英社3巻
2020位釣って食べたいギャル澤さんふなつかずき集英社7巻

ベテランの名前が上位に並んだのも今年の特徴です。5位の『シルバーマウンテン』は『うしおととら』『からくりサーカス』の藤田和日郎、6位の『マネマネにちにち』は『からかい上手の高木さん』の山本崇一朗、4位の『パラショッパーズ』は『うえきの法則』の福地翼。16位には『銀魂』の空知英秋も入っています。新人の発掘を掲げた賞でありながら、名の知れた描き手の新作が読者票を集めるという構図になりました。

Webマンガ部門 1位から20位

こちらはWebをメインの媒体とする作品が対象です。ジャンプ+、コミックDAYS、ニコニコ漫画など、掲載先は多岐にわたります。

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No.順位作品名著者
11位おかえり水平線渡部大羊
22位ヒトナー屋宜知宏
33位灰宮先輩は怖くてかわいい神山すむ
44位大人大戦かっぴー/都築真佐秋
55位都市伝説先輩平岡一輝
66位晴野さんのことなんて全然好き如日やさか
77位アイドラトリィ大鷹シン/ホマレ
88位来見沢善彦の愚行ときわ四葩
99位WITCHRIVはくり
1010位会社と私生活-オンとオフ-金沢真之介
1111位となりの席のヤツがそういう目で見てくるmmk
1212位生活マン南田冬/あやき
1313位ブルーアーカイブ ゲーム開発部だいぼうけん!水あさと
1414位神ヨムふたりフィビ鳥
1515位大悪党少年藤近小梅
1616位羽鳥と古田の非日常茶飯事野々上大二郎
1717位盛りあがらないデートすずゆき
1818位伴天連怪談三木有
1919位ハーレム勇者伝説津夏なつな
2020位立ち飲み居酒屋でクーデレダウナー系女子大生が隣に来る話剃り残し/大窪太一

特別賞は3つ、うち1つは今年の新設

順位とは別に、協賛企業などによる特別賞も発表されました。「冷凍食品はニチレイ賞」には宮田俊哉・杉基イクラ『境界のメロディ』が選ばれています。

「U-NEXT賞」は部門ごとに選出され、コミックス部門からヨシダ。『ディグイット』、Webマンガ部門からはくり『WITCHRIV』が受賞しました。どちらも本編のランキングでも上位に食い込んだ作品です。

そして今年から新設されたのが「ニコニコ漫画賞」。作品そのものの面白さに加えて、みんなのコメントで楽しみ方が広がる作品に贈られる賞で、初代受賞作は『地味なおじさん、実は英雄でした。』でした。読みながら他人の反応も一緒に楽しむという、Webマンガならではの読み方を評価する賞が加わったことになります。

歴代1位のその後を並べると、予測の精度が見えてくる

ここからが本題です。2015年の第1回から2025年まで、両部門の1位に選ばれた作品がその後どうなったかを、年代順に追いかけてみます。

2015年から2017年、最初期にヒロアカとかぐや様が出てきた

第1回にあたる2015年のコミックス部門1位は『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平/集英社)でした。受賞の翌2016年にはテレビアニメが始まり、その後は劇場版もシリーズ化する長期タイトルへ成長しています。Webマンガ部門の1位は『ヲタクに恋は難しい』(ふじた/KADOKAWA)で、こちらも2018年にアニメ化、2020年には実写映画化されました。

2017年のコミックス部門1位『かぐや様は告らせたい』(赤坂アカ/集英社)は2019年にアニメ化、その後に実写映画も公開されています。同年のWebマンガ部門1位は『うらみちお兄さん』(久世岳/KADOKAWA)で、2021年にアニメ化。この時期にはすでに、受賞から2年前後で映像化という流れができあがっていました。

一方、2016年のコミックス部門1位『背すじをピン!と ~鹿高競技ダンス部へようこそ~』(横田卓馬/集英社)は、競技ダンスを題材にした青春作品として高い評価を受けながら、現時点で映像化の発表がありません。歴代1位を通して見ても、これは珍しいケースです。

2018年から2020年、薬屋とスパイファミリーが並んだ3年間

2018年のコミックス部門1位は『来世は他人がいい』(小西明日翔/講談社)。任侠の世界を舞台にした緊張感のあるラブストーリーで、2024年10月にテレビアニメが放送されました。Webマンガ部門1位の『先輩がうざい後輩の話』(しろまんた/一迅社)も2021年にアニメ化しています。

2019年は、いま振り返ると当たり年でした。コミックス部門1位が『薬屋のひとりごと』(日向夏原作)、Webマンガ部門1位が『SPY×FAMILY』(遠藤達哉/集英社)。前者は2023年に、後者は2022年にアニメ化し、どちらも劇場版まで展開する国民的タイトルになりました。受賞した年の時点では、まだどちらも数巻しか出ていません。

2020年はコミックス部門が『アンデッドアンラック』(戸塚慶文/集英社)、Webマンガ部門が『僕の心のヤバイやつ』(桜井のりお/秋田書店)。いずれも2023年にアニメ化されています。この3年間の6作品は、すべて映像化にたどり着きました。

2021年から2023年、推しの子と怪獣8号、そして今秋放送の作品

2021年のコミックス部門1位『【推しの子】』(赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社)は2023年にアニメ化され、実写でも映像化されました。同年のWebマンガ部門1位『怪獣8号』(松本直也/集英社)も2024年にアニメ化。どちらも受賞から2年から3年での放送開始です。

2022年はコミックス部門が『メダリスト』(つるまいかだ/講談社)で2025年にアニメ化、Webマンガ部門が『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』(地主/スクウェア・エニックス)で、2026年のテレビアニメ化が発表されています。後者は2025年7月時点で累計250万部を突破しました。

そして2023年の2作は、いままさに放送を迎えるところです。コミックス部門1位『生徒会にも穴はある!』(むちまろ/講談社)は2026年10月から放送開始、Webマンガ部門1位『気になってる人が男じゃなかった』(新井すみこ/KADOKAWA)は2027年1月からの放送が決まっています。受賞から3年から4年かけて、順番に映像になっていく構図です。

2024年から2026年、まだ結果の出ていない現役組

2024年のコミックス部門1位『カグラバチ』(外薗健/集英社)は、2026年4月28日にテレビアニメ化が発表され、2027年4月からの放送が決まりました。受賞から発表まで約2年、放送までは約2年半という計算になります。

一方、同年のWebマンガ部門1位『ふつうの軽音部』(クワハリ/出内テツオ/集英社)、2025年の両部門1位である『魔男のイチ』(西尾維新/宇佐崎しろ/集英社)と『サンキューピッチ』(住吉九/集英社)は、いずれも現時点で映像化の公式発表がありません。ただし歴代の傾向を踏まえれば、この3作が「まだ発表されていないだけ」である可能性は十分にあります。今年の『さむわんへるつ』と『おかえり水平線』も、同じスタートラインに立ったところです。

この賞を通過点にしてアニメ化まで届いた作品については、『ドカ食いダイスキ!もちづきさん』のアニメ化を取り上げた記事でも詳しく触れています。2026年10月から放送が始まる『生徒会にも穴はある!』を含む今期のマンガ原作アニメは、秋アニメのまとめ記事で一覧にしました。

歴代1位作品と、その後の映像化状況

2015年から2026年までの1位作品を一覧にまとめました。「その後」の欄は2026年9月時点で公表されている情報です。

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No.発表年コミックス部門1位その後Webマンガ部門1位その後
12015年僕のヒーローアカデミア(堀越耕平)2016年アニメ化ヲタクに恋は難しい(ふじた)2018年アニメ化・実写映画化
22016年背すじをピン!と(横田卓馬)映像化の発表なしトモちゃんは女の子!(柳田史太)2023年アニメ化
32017年かぐや様は告らせたい(赤坂アカ)2019年アニメ化・実写映画化うらみちお兄さん(久世岳)2021年アニメ化
42018年来世は他人がいい(小西明日翔)2024年アニメ化先輩がうざい後輩の話(しろまんた)2021年アニメ化
52019年薬屋のひとりごと(日向夏 原作)2023年アニメ化SPY×FAMILY(遠藤達哉)2022年アニメ化・劇場版
62020年アンデッドアンラック(戸塚慶文)2023年アニメ化僕の心のヤバイやつ(桜井のりお)2023年アニメ化
72021年【推しの子】(赤坂アカ×横槍メンゴ)2023年アニメ化・実写映像化怪獣8号(松本直也)2024年アニメ化
82022年メダリスト(つるまいかだ)2025年アニメ化スーパーの裏でヤニ吸うふたり(地主)2026年アニメ化
92023年生徒会にも穴はある!(むちまろ)2026年10月放送開始気になってる人が男じゃなかった(新井すみこ)2027年1月放送開始
102024年カグラバチ(外薗健)2027年4月放送開始ふつうの軽音部(クワハリ/出内テツオ)発表なし
112025年魔男のイチ(西尾維新/宇佐崎しろ)発表なしサンキューピッチ(住吉九)発表なし
122026年さむわんへるつ(ヤマノエイ)これからおかえり水平線(渡部大羊)これから

数字で見ると、この賞の打率は8割を超えている

2015年から2023年までの9年間、両部門を合わせた1位作品は18作あります。このうち映像化が決まっていないのは『背すじをピン!と』の1作だけ。残る17作はすべてアニメ化か実写化、あるいはその両方にたどり着いています。

もちろん、受賞したから映像化されたのではありません。順序は逆で、読者が早い段階で「これは来る」と見抜いた作品が、その後も支持を広げて映像化に届いた、と考えるほうが自然です。ただ、結果として「読者の直感の集計」がこれだけの精度を持っていることは事実です。既刊5巻以内という縛りがあるおかげで、まだ世間に知られていない段階の作品が浮かび上がってくる仕組みも効いています。

裏を返せば、受賞作を追いかけることは、2年後から3年後のアニメ化ラインナップを先に知ることに近い行為でもあります。今年の20位までのリストには、まだアニメになっていない作品がずらりと並んでいます。

放送が始まる前に、原作で読んでおく

アニメ化が発表されてからコミックスを探すと、書店でも中古市場でも品薄になりがちです。原作で先に読んでおくと、放送時に「どこまでやるか」「どこを変えたか」という別の楽しみ方ができるようになります。

『さむわんへるつ』と『おかえり水平線』はどちらも巻数が少なく、いまから追いつくのが簡単なタイミングです。過去の受賞作も、中古の全巻セットなら一気に読めます。上に挙げた作品のうち、在庫があるものは各リンクから探せます。

アニメ化が発表されてから放送までにどれくらい待つことになるのかは、『幼稚園WARS』の記事で作品ごとに比べています。

アニメ化の1年前に棚を作れる施設は強い

待合スペースや休憩スペースにマンガを置いている施設にとって、この賞の一覧は仕入れの参考資料としてよくできています。アニメが始まってから話題作を追加すると、すでに全国の書店と取り合いになっていて、揃えるのに時間もコストもかかります。放送の1年から2年前に棚へ入れておけば、話題が来たときにはすでに「ここに全巻ある施設」になっているわけです。

巻数が少ないのも利点です。既刊5巻以内が対象という条件のおかげで、受賞作は1作あたりの占有スペースが小さく、棚の入れ替えもしやすい。人気が出なければ差し替えれば済みますし、当たれば滞在時間が伸びます。

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