10代は20代より“紙派”だった! 「マンガ意識調査2026」から読み解く、若い世代が紙のマンガを選ぶ理由

スマートフォンでマンガを読むのが当たり前の世代ほど、実は紙のマンガを手に取っている。そんな意外な結果が、2026年11月2日に株式会社コミチが公開した「マンガ意識調査2026」で示されました。マンガを読む人のうち「紙が中心」と答えた割合は、20代の29%に対して10代は44%。紙で読む理由に「所有して手元に残したい」を選んだ10代は59%で、全年代でもっとも高い数字でした。

一方で、出版科学研究所の推計では、2025年のコミック市場の76.1%はすでに電子が占めています。お金の流れでは電子が4分の3を超えているのに、なぜ10代の読者は紙を選ぶのでしょうか。今回は調査の中身を確かめたうえで、ほかの調査や市場データも重ねながら、その理由を探ってみます。

目次

「マンガ意識調査2026」はどんな調査なのか

この調査は、Webマンガ雑誌の運営支援などを手がけるコミチが、11月3日の「まんがの日」に向けて公開したものです。実施はマイボイスコム株式会社のインターネット調査で、期間は2026年10月2日から5日。全国の15〜69歳の男女3,000人が回答し、そのうち過去1年にマンガを読んだ人は1,544人でした。マンガ読者に限らず一般の人に聞き、毎年同じ設問で続ける定点調査として設計されています。

「マンガ離れ」と呼べる人は6.7%

話題になったのは、まず「マンガ離れ」の中身です。過去1年にマンガを読んだ人は51.5%、読んでいない人は48.5%。ただ、読んでいない人のうち「5年前も今も読んでいない」人が全体の32.8%を占め、「5年前より減って読まなくなった」人は6.7%にとどまりました。読まない人の多くは、もともと読む習慣がなかった人だったということです。

読まれている媒体を見ると、紙のコミックスが34.4%、アプリ・Webマンガが34.1%とほぼ並び、電子書籍が28.8%、紙のマンガ雑誌は17.6%でした。読者の48.1%は紙と電子の両方を使っており、電子のみの30.0%、紙のみの22.0%を上回っています。減っているのは紙の雑誌で、紙の単行本は今もアプリと同じくらい読まれている、という見取り図です。

10代の数字は119人の回答から

注目の10代の結果は、15〜19歳のマンガ読者119人の回答にもとづいています。コミチ自身も「来年以降の調査で引き続き確かめていく」としており、調査ページでは非確率型のWebパネルによる調査であること、人数の少ない区分は数字の変動が大きいことを「調査の限界」として明記しています。44%という数字は、傾向を示すひとつの手がかりとして受け止めるのがよさそうです。

市場の4分の3は電子、それでも紙を好む10代

では、マンガ市場全体ではどうなっているのでしょうか。紙の存在感が強いという調査結果と、市場の数字とでは、見えている景色がかなり違います。

2025年のコミック市場は紙23.9%、電子76.1%

出版科学研究所によると、2025年のコミック市場(推定販売金額)は紙と電子を合わせて6,925億円で、前年比1.7%減と7年続いたプラスから一転しました。紙のコミックスとコミック誌の合計は14.0%減の1,652億円、電子コミックは2.9%増の5,273億円です。同研究所は、2024年に『呪術廻戦』『僕のヒーローアカデミア』『【推しの子】』といった大型作品が相次いで完結したこと、2025年は『メダリスト』『薫る花は凛と咲く』などのヒットがあったものの規模がやや小粒になったことを挙げ、読者のデジタルシフトが進んでいると分析しています。

ただし、2026年上半期の発表では、紙のコミックスは約7%減と下げ幅が縮小しました。電子コミックは2.5%増と伸びを保ちつつも、伸び率の鈍化が続いています。また、市場の数字は「いくら売れたか」を示すもので、「誰がどの形で読んでいるか」とは別の物差しです。人数で見た読書の実態と、金額で見た市場のシェアがずれるのは不思議なことではありません。

電子コミックの利用者でも約6割が「紙が好み」

紙を好む若い世代の姿は、別の調査でも確認できます。oricon MEが電子コミックサービスの利用者に聞いた2024年の調査では、紙と電子どちらで読むのが好みかという質問に、「紙」「どちらかと言えば紙」を合わせた紙派が59.2%にのぼりました。年代別で最も高かったのは10代の69.5%です。ふだん電子コミックを使っている人に限っても、10代の約7割が紙のほうが好きだと答えていることになります。

10代全体がマンガを読んでいるわけではない

一方で、別の角度の数字もあります。全国学校図書館協議会の「第71回学校読書調査」は、2026年に初めてマンガ(雑誌はのぞく)の読書冊数を尋ねました。読売新聞の報道によると、5月の1か月間にマンガを1冊も読まなかった割合は小学生28.2%、中学生40.2%、高校生50.8%でした。比べる過去の数字がまだないため増減は分かりませんが、10代の誰もが紙のマンガに親しんでいるわけではない点も、あわせて押さえておきたいところです。

調査から見える、若い世代が紙を選ぶ理由

ここからは、なぜ紙なのかを考えていきます。まずは調査で数字として裏付けがある理由から見ていきましょう。

好きな作品を「手元に残したい」

いちばんはっきりしているのは、所有したいという気持ちです。マンガ意識調査2026では、紙で読む理由に「所有して手元に残したい」を選んだ10代が59%でした。oricon MEの調査でも、紙派の理由として「書棚に並べてコレクションしたいから」が41.0%、「物としての所有感や本の質感を大切にしているから」が40.8%と上位に入っています。

電子書籍も購入すれば読み続けられますが、本棚に背表紙が並ぶ様子や、手に取れる重さは紙ならではのものです。好きな作品を集めること自体が楽しみになっている若い世代にとって、紙の単行本は読むための道具であると同時に、持っていたいものでもあるのでしょう。

ページをめくる感覚と、物語への没入

oricon MEの調査で紙派の理由の1位だったのは、「実際にページをめくる感覚を楽しみたいから」の48.1%でした。マンガに限った調査ではありませんが、アスマークが18〜34歳の読書する人400人に聞いた2025年1月公表の調査でも、紙の本を選ぶ理由のトップは「話により没入できるから」(42.7%)です。同じ調査では、SNS疲れを感じている人ほど「一時的にSNSや電子端末から離れるため」に読書をする割合が高い(31.0%)という結果も出ています。

紙と電子で読んだあとの脳の働きに差が見られたとする研究については、以前の記事で詳しく紹介しました。紙で読む体験そのものに価値を見いだす人がいることは、こうした研究からも考えることができます。

よく言われる理由は、どこまで当てはまるか

紙が好まれる理由としては、ほかにもいくつかの見方がよく語られます。ただし、ここから挙げるものは、今回確認できた調査では10代に限った数字の裏付けがまだないものです。一般的な見方として紹介します。

アプリの年齢制限という事情

コミチ代表の萬田大作さんは、調査を解説したnoteの記事で、マンガアプリには18歳以上でないと使えないものも少なくないと指摘し、10代が紙を手に取る背景にはそうした事情もあるのではないかという見方を示しています。課金のしやすさや、使える決済手段が限られることも含め、10代にとって電子のほうが手を出しにくい場面があるのかもしれません。調査の数字そのものではなく、調査を行った側の受け止めとして読んでおくのがよいでしょう。

貸し借りができて、友だちと話題にしやすい

紙の単行本は、友だちやきょうだいと貸し借りできます。電子書籍は購入したアカウントにひもづくため、1冊を回し読みする使い方には向きません。マンガ意識調査2026では、10代の37%がSNSを作品と出会うきっかけに挙げていましたが、SNSで知った作品を実際に手渡しで広げていく流れがあるとすれば、紙の役割はそこにもありそうです。

見開きで読みやすく、目も疲れにくいという声

見開きのページを一度に見渡せること、ぱらぱらとめくって読みたい場面に戻れることも、紙の長所としてよく挙げられます。画面を長時間見ると目が疲れるので紙のほうが楽だ、という声もよく聞かれます。ただし、目の疲れ方は端末や読む環境、人によっても違い、マンガ読者に限った確かな数字は見当たりませんでした。

中古やレンタルなら全巻を手頃にそろえられる

完結した長編を一気に読みたいとき、中古の全巻セットやレンタルを使えば、新刊でそろえるより費用を抑えられることがあります。紙の本は読み終えたあとに手放すこともでき、何度も持ち主を変えながら読まれていきます。とはいえ、電子コミックでも割引やポイント還元などのキャンペーンが活発に行われていると出版科学研究所は報告しており、手頃さはどちらか一方だけの強みとは言い切れません。

紙か電子かではなく、使い分ける時代へ

こうして見ると、若い世代は電子を避けて紙を選んでいるというより、目的に応じて両方を行き来していると考えるほうが自然です。マンガ意識調査2026では読者の48.1%が紙と電子の両方を使っていました。oricon MEの調査でも、電子派の理由は「一台のデバイスで大量のマンガを持ち運べるから」67.1%、「すぐに購入でき、どこでも気軽に読めるから」66.8%、「家のスペースを節約できるから」64.5%と、紙にはない便利さが高く評価されています。

気になる作品はアプリの無料話やランキングで見つけ、本当に好きになった作品は紙で手元にそろえる。そんな読み方は、調査の数字とも矛盾しません。マンガ意識調査2026では、AIが制作に関わったマンガに抵抗があると答えた人が10代で50%と、60代の24%を大きく上回ったことも報告されています。若い世代の作品へのこだわりの強さは、紙を選ぶ理由とも根の部分でつながっているのかもしれません。

紙と電子をめぐる主な調査・データ一覧

この記事で取り上げた調査とデータを、時期や対象とあわせて整理しました。

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No.調査・データ(発表元)時期・対象主な数字
1マンガ意識調査2026(株式会社コミチ)2026年10月2〜5日/全国15〜69歳3,000人「紙が中心」は10代44%・20代29%。10代の59%が紙で読む理由に「所有して手元に残したい」
2電子コミックサービス利用実態データ(oricon ME)2024年/電子コミックサービス利用者紙派59.2%、10代は69.5%。紙派の理由1位は「ページをめくる感覚」48.1%
32025年コミック市場(出版科学研究所)2025年1〜12月の推定販売金額6,925億円(前年比1.7%減)。紙23.9%・電子76.1%
42026年上半期出版市場(出版科学研究所)2026年1〜6月の推定販売金額紙コミックスは約7%減で下げ幅縮小、電子コミックは2.5%増
5第71回学校読書調査(全国学校図書館協議会)2026年6月/小学4年〜高校3年の約1万人5月にマンガを1冊も読まなかった割合は小28.2%・中40.2%・高50.8%(読売新聞報道)
6若者の読書に関するアンケート(株式会社アスマーク)2024年12月/読書する18〜34歳400人紙の本を選ぶ理由1位は「話により没入できる」42.7%(マンガに限らない)

好きな作品は、紙で全巻そろえて読み返す

紙のマンガのよさは、好きな作品を本棚に並べ、読みたいときにすぐ読み返せることにあります。出版科学研究所の発表に名前が挙がった作品のうち、2024年に完結した『呪術廻戦』(芥見下々/集英社)、『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平/集英社)、『【推しの子】』(原作:赤坂アカ、作画:横槍メンゴ/集英社)は、最終巻まで刊行されているので全巻を一度にそろえやすい作品です。2025年のヒット作として挙げられた『メダリスト』(つるまいかだ/講談社)と『薫る花は凛と咲く』(三香見サカ/講談社)は、アニメで知った人が原作を紙で読み進めるのにも向いています。

スマートコミックを運営する春うららかな書房は、紙のコミックを中心に扱う会社です。中古の全巻セットなら、手頃な価格で作品をまとめて手元に置くことができます。

スマホ世代の若者が、本棚の前で足を止める場所に

10代が紙のマンガを好むという結果は、施設の運営者にとってもヒントになります。家ではアプリで読んでいる人でも、本棚にずらりと並んだ背表紙を見れば、気になる1冊を手に取りたくなるものです。学生寮や学生向けマンション、専門学校のラウンジ、カフェや温浴施設のくつろぎスペースなど、若い世代が過ごす場所に紙のマンガコーナーがあれば、スマホから少し離れて物語に入り込む時間をつくれます。

IT・アニメ系の専門学校が交流ラウンジに3,000冊のマンガコーナーを設け、学生同士の交流やオープンキャンパスでの印象づくりにつなげている事例もあります。

スマートコミックは、紙のコミックを中心に扱う春うららかな書房が運営する、法人・店舗向けのコミックレンタルサービスです。完結した人気作の全巻から話題の新刊まで、利用者の年代や施設の雰囲気に合わせた選書をおまかせいただけます。仕組みや費用の考え方は解説記事にまとめているほか、料金表・事例資料からもご確認いただけます。

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