『呪術廻戦』のマンホール蓋が西池袋に登場! 銀河鉄道999、ポケふた、ガンダムと続いてきた“足元の聖地”はなぜ人を呼ぶのか
TVアニメ『呪術廻戦』のデザインマンホール蓋が、東京都豊島区の西池袋に設置されます。豊島区の発表によると、設置開始は2026年10月21日(水)の予定で、雨天の場合は10月26日(月)または28日(水)にずれ込みます。描かれるのは虎杖悠仁と日車寛見、伏黒恵と髙羽史彦の2組で、蓋は2基です。
理由は明快です。アニメ第3期「死滅回游 前編」では、池袋西口公園をはじめ池袋が物語の舞台の一つとして登場しています。作中で呪術師たちが駆け抜けた街の路面に、そのキャラクターが描かれた蓋がはめ込まれるわけです。
ところで、マンガやアニメのマンホール蓋はいつから、どうしてこれほど増えたのでしょうか。北九州の『銀河鉄道999』、全国に広がる「ポケふた」、各地のガンダムマンホール。足元の小さな円がなぜ人を街に呼ぶのか、今回の西池袋を入口にたどってみます。
西池袋の『呪術廻戦』マンホール、設置場所と見どころ
豊島区の公式ページによると、虎杖悠仁と日車寛見の蓋は池袋西口五差路付近(豊島区西池袋3丁目)、伏黒恵と髙羽史彦の蓋は東京メトロ有楽町線・副都心線の要町駅付近(西池袋5丁目)に設置されます。池袋駅の西口から要町方面へ歩けば、2基を続けて巡れる位置関係です。設置後は区の公式ページと公式Xで告知されます。
組み合わせにも見どころがあります。日車寛見と髙羽史彦は、どちらも死滅回游編で初めて登場するキャラクターです。主人公の虎杖や伏黒と並んで新キャラが蓋の主役を張るのは、アニメ第3期の舞台として池袋が登場した今回ならではの人選といえそうです。
区は設置の狙いとして、作品に親しめる新たなスポットをつくり、作品ファンやマンホール愛好家を含む国内外の来街者に豊島区の魅力を伝えることを挙げています。「デザインマンホール蓋と作品ゆかりの地を巡って」という呼びかけからも、蓋そのものより、蓋を目印に街を歩いてもらうことに主眼があると読み取れます。
完結後も話題が続く『呪術廻戦』
『呪術廻戦』(芥見下々/集英社)は、2018年3月に「週刊少年ジャンプ」で連載が始まり、2024年9月に完結しました。豊島区の紹介文によれば、コミックスの全世界シリーズ累計発行部数はデジタル版を含め1.5億部を突破しています。TVアニメは2026年1月から第3期「死滅回游 前編」が放送され、第4期「死滅回游 後編」の制作も決まっています。
完結から2年が経っても、アニメの新シリーズに合わせて街との企画が続いているのがこの作品の強みです。当サイトでは、横浜の大観覧車が作品の世界観に染まった企画も取り上げました。作品そのものの魅力は、作品紹介の記事でも詳しく紹介しています。
そもそも「デザインマンホール」はどこから始まったのか
自治体ごとに絵柄の違うマンホール蓋は、1977年に沖縄県那覇市で生まれたものが始まりとされています。その後、1980年代後半に当時の建設省が、下水道のイメージアップのため各自治体に独自デザインの蓋を提唱し、全国へ広がりました。地元の花や名所、特産品を描いた蓋は、もともと下水道を身近に感じてもらうための広報手段だったわけです。
流れを大きく変えたのが、2016年4月に始まった「マンホールカード」です。下水道広報プラットホーム(GKP)と自治体が共同で発行するカード型のパンフレットで、第1弾は全国28自治体で配布されました。カードは原則として現地で手渡しされるため、集めるには実際にその街へ足を運ぶ必要があります。蓋を見に行くこと自体が、旅の目的になり始めました。
ここにマンガ・アニメのキャラクターが加わると、蓋は作品ファンにとっての巡礼スポットに変わります。下水道の広報物として始まった円い鋳物が、作品と街を結ぶ目印になっていく過程を、代表的な事例で見ていきます。
マンガ・アニメのマンホール蓋が全国に広がるまで
キャラクターの蓋が本格的に注目を集めたのは2010年代後半からです。作者の出身地や作品の舞台といった「ゆかり」を足がかりに、自治体と作品側が組む形が定着していきました。
作者ゆかりの地から始まった『銀河鉄道999』の蓋(2018年・北九州市)
北九州市は2018年、下水道100周年の記念事業として、市にゆかりのある漫画家・松本零士さんの作品と連携したデザインマンホール蓋を制作しました。代表作『銀河鉄道999』のキャラクターを中心に9種類があり、JR小倉駅周辺と北九州空港周辺に設置されています。駅や空港に降り立った旅行者を、作品のキャラクターが足元で迎える格好です。
『銀河鉄道999』(松本零士/小学館)は、宇宙を走る列車で少年・鉄郎が旅をするSFの古典です。作家の地元が記念事業の顔に作品を選ぶという、マンガ蓋の基本形を示した例といえます。
各地の名物と組み合わさって増え続ける「ポケふた」(2018年〜)
同じ2018年の12月、鹿児島県指宿市にイーブイを描いたマンホール蓋が設置されました。これがポケモンのマンホール蓋「ポケふた」の第1号です。その後は各地の名物や風景とポケモンを組み合わせたデザインで設置が続き、ファミ通の報道によると2021年3月の時点で15都道府県・159枚に達していました。
ポケふたの特徴は、全国で次々に見つかる「しるし」として、集めて回る楽しみを前面に出したことです。地図を手に1枚ずつ巡るファンの動きは、マンホールが観光資源になりうることを広く知らしめました。原作はゲームですが、マンガでは『ポケットモンスターSPECIAL』(日下秀憲・真斗・山本サトシ/小学館)が長く続くシリーズとして親しまれています。
生みの親の故郷へ届いたガンダムマンホール(2021年〜)
2021年7月には、バンダイナムコグループが「ガンダムマンホール」プロジェクトの始動を発表しました。東京都稲城市と埼玉県所沢市での展開を経て、本格始動の第1弾に選ばれたのは、ガンダムの生みの親である富野由悠季さんの出身地、神奈川県小田原市です。8月1日から、小田原城を背にしたガンダムと、小田原漁港のちょうちん灯台を背にしたシャア専用ズゴックの2種類が設置されました。
プロジェクトは自治体からの応募を受け付ける形で広がり、その後は北海道稚内市や山梨県甲府市、島根県松江市などにも、それぞれの土地の名所と組み合わせた蓋が登場しています。作品側から自治体へ呼びかけるという、新しい進め方を示した例です。マンガでは『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(安彦良和/KADOKAWA)が、ファーストガンダムの物語を描き直した作品として知られています。
作中の設定が蓋を呼んだ『キャプテン翼』(2025年・富良野市)
作品の舞台やキャラクターの出身地も、蓋を置く理由になります。北海道富良野市は、『キャプテン翼』の人気キャラクター・松山光の出身地として知られています。そのつながりから2025年に『キャプテン翼』のマンホール蓋が設置され、2026年7月31日からはマンホールカードの配布も始まりました。
『キャプテン翼』(高橋陽一/集英社)は、世界のトッププロにも影響を与えたサッカーマンガです。作者の地元だけでなく、作中の設定まで含めて「ゆかり」を探す動きが広がっていることがわかります。
作者の故郷を街ぐるみで作品色に染めた例としては、鳥取県北栄町も外せません。青山剛昌さんの出身地である北栄町では、青山剛昌ふるさと館へ続く「コナン通り」に、銅像やオブジェと並んで『名探偵コナン』のマンホール蓋が置かれています。鳥取県がマンガで街を彩ってきた積み重ねは、以前の記事でもレポートしました。
豊島区はなぜアニメの蓋を増やしているのか
今回の『呪術廻戦』は、豊島区にとって3作品目のアニメデザインマンホールです。最初は2020年2月17日に東池袋1丁目付近へ設置された「池袋PRアニメ」の蓋で、同年11月からは池袋東口観光案内所でマンホールカードも配布されています。
2作品目は、2026年7月10日に池袋駅西口(中央出口)付近へ設置された『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』の高松燈の蓋です。登場する5人の名前が高松、千早、要町、長崎、椎名町という区内の地名に由来していることから、作品を手がけるブシロードが寄贈しました。そして3カ月後に、西池袋の『呪術廻戦』2基が続きます。
背景には、区が「マンガ・アニメのまち」を掲げてきた歩みがあります。手塚治虫らが暮らしたトキワ荘があった街として、区はトキワ荘マンガミュージアムを運営し、マンガ・アニメ・トキワ荘振興課という専門の部署も置いています。区によれば、アニメツーリズム協会の「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」にも区内の7作品が認定されています。蓋の設置は、こうした聖地を点で終わらせず、歩いて巡る線につなげる仕掛けの一つと見ることができます。
足元の聖地が人を呼ぶ3つの理由
1つ目は、その場所でしか見られないことです。グッズや広告と違い、マンホール蓋は道路に埋め込まれているため、写真を撮るにはその街へ行くしかありません。マンホールカードの配布も現地が原則で、「行った人だけが手にできる」という希少性が来訪の動機になります。
2つ目は、いつでも無料で見られることです。展覧会やコラボカフェには会期や入場料がありますが、蓋は設置されている限り24時間そこにあります。アニメの放送が終わった後も、完結から何年経っても、ファンが訪れる理由が街に残り続けます。期間限定の企画が終わると人の流れが途切れてしまう、という聖地の悩みに対する一つの答えです。
3つ目は、歩くきっかけになることです。今回の西池袋のように蓋が複数あると、ファンは駅から目的地まで、あるいは蓋から蓋へと街を歩きます。その途中で飲食店に入ったり、作中に出てきた公園に立ち寄ったりと、街での滞在が自然に延びていきます。区が「作品ゆかりの地を巡って」と呼びかけているのは、まさにこの回遊を狙ってのことでしょう。
一方で、蓋は生活道路の一部でもあります。撮影の際は通行や交通の妨げにならないよう、設置自治体の注意事項に従って楽しむことが前提です。
マンガ・アニメのデザインマンホール主な事例
ここまで紹介した事例を、設置の時期とゆかりの種類で整理しました。
| No. | 設置時期 | 作品 | 自治体・場所 | ゆかり |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2018年 | 銀河鉄道999 ほか松本零士作品(9種類) | 福岡県北九州市(小倉駅周辺・北九州空港周辺) | 作者ゆかり・下水道100周年 |
| 2 | 2018年12月〜 | ポケふた(第1号はイーブイ) | 鹿児島県指宿市から全国へ | 各地の名物・風景 |
| 3 | 2020年2月 | 池袋PRアニメ | 東京都豊島区東池袋 | 区のPRアニメ |
| 4 | 2021年8月〜 | ガンダムマンホール(本格始動第1弾) | 神奈川県小田原市ほか | 生みの親の出身地 |
| 5 | 2025年 | キャプテン翼 | 北海道富良野市 | キャラクターの出身地 |
| 6 | 2026年7月 | BanG Dream! It’s MyGO!!!!! | 東京都豊島区西池袋(池袋駅西口) | キャラクター名が区の地名 |
| 7 | 2026年10月(予定) | 呪術廻戦(2基) | 東京都豊島区西池袋(五差路付近・要町駅付近) | アニメ第3期の舞台 |
10月21日以降、西池袋で虎杖と伏黒を探してみる
設置が始まったら、池袋駅西口から五差路、要町駅へと2基を巡る散歩がおすすめです。途中には死滅回游で舞台になった池袋西口公園もあります。歩く前に原作で死滅回游編を読み返しておけば、日車や髙羽がどんな人物なのかが頭に入り、蓋の前で足を止める時間がぐっと味わい深くなるはずです。
雨天時は設置日がずれるため、出かける前に豊島区の公式ページか公式Xで設置済みかどうかを確かめておくと安心です。
蓋を目当てに来た人に、もう一歩長くいてもらうには
マンホール蓋の巡礼は、見て撮ったら次の場所へ移る「通過型」の楽しみ方になりがちです。せっかく作品目当てに街まで来たファンが、休憩や宿泊の場所で同じ作品にもう一度出会えれば、その時間は「ついで」から目的の一部に変わります。
スマートコミックは、ホテルや温浴施設、カフェなどにマンガコーナーを設置するサービスです。話題の作品や地域ゆかりの作品をまとめて置けば、聖地巡りの合間に原作を読み返せる場所として、施設に立ち寄る理由が一つ増えます。作品の選び方や導入の流れは、料金表・事例資料からご確認いただけます。
