『Dr.STONE』展が12月10日から池袋で開幕、滑車を引いて石化を歩く“科学王国ミュージアム”へ。マンガで科学を体験する展示は科学館で育ってきた
3700年の石化から目覚めた千空たちが、文明をゼロから組み直していく物語が、今度は展示ホールに「博物館」として立ち上がります。TVアニメ『Dr.STONE』の大規模展覧会「TVアニメ『Dr.STONE』展 科学王国ミュージアム」が、2026年12月10日から2027年1月4日まで、東京・池袋のサンシャインシティ展示ホールAで開催されることが決まりました。10月17日に公式サイトがオープンし、チケットの販売も始まっています。
会場のテーマは、最終シーズンのラストで描かれた「科学王国の博物館」です。設定資料や原画を見るだけでなく、千空が作った滑車で重い石器を持ち上げたり、暗闇の中で石化の時間を歩いたりと、手と体を動かす展示が並びます。
実は『Dr.STONE』は、アニメ放送中から国立科学博物館や電力会社の科学館と組んできた作品でもあります。マンガやアニメを入口に科学を「体験」させる展示は、いつ、どこから広がってきたのでしょうか。展覧会の見どころを押さえたうえで、科学館とマンガが手を組んできた歩みをたどります。
累計2000万部、そもそも『Dr.STONE』とは
『Dr.STONE』(原作:稲垣理一郎/作画:Boichi/集英社)は、2017年から2022年まで「週刊少年ジャンプ」で連載されたサバイバル科学冒険マンガです。単行本の累計発行部数は2000万部を突破しています。
ある日、全人類が謎の光で石になり、数千年後に目覚めた高校生・石神千空が、科学の知識だけを武器に文明を一から再建していきます。火起こしやガラス、電気、薬、そして気球や通信機まで、作中のクラフトは実在の科学に基づいて描かれ、読み進めるうちに理科の知識が自然と身につく少年マンガです。
TVアニメは2019年に第1期が始まり、最終シーズンとなる第4期「Dr.STONE SCIENCE FUTURE」で2026年に完結を迎えました。今回の展覧会は、その完結を記念して開かれます。
作品のあらすじや見どころは、スマートコミックの作品紹介記事でも詳しく取り上げています。
暗闇を歩き、滑車を引く。科学王国ミュージアムの見どころ
会場に入ってまず待っているのが「石化復活ロード」です。暗闇の中を歩きながら、千空が石化から目覚めるまでの3700年という途方もない時間を体感する導入になっています。物語の第1話と同じ地点から、来場者も科学王国の一員として歩き出す仕掛けです。
体験展示の目玉が「アルキメデスの“滑車”体験コーナー」です。第1期第6話で、木に挟まれたコハクを助けるために千空が生み出したクラフトを実際に試せます。公式サイトによると、持ち上げるのは重さ10kgの石器です。腕力ではなく仕組みで重さを分けるという、作中で何度も描かれた「科学の力」を自分の手で確かめられます。
ほかにも、気球をモチーフにしたエリアでは千空・クロム・龍水が見た上空1200mの景色を大型映像で楽しめ、「百夜が遺したレコード」の展示では歌姫・リリアンの歌声とともに音楽が3700年ぶりに蘇った場面を追体験できます。科学王国の総力で石化光線を破った名シーンを再現する「全員同じ幅で並ぶ石化体験フォトスポット」、記者の南が記録し続けたアルバムを再現した寄せ書きスポットも用意されます。もちろん第1期から最終シーズンまでの設定資料、絵コンテ、名シーンの原画といった「見る」展示も充実しています。
キービジュアルはキャラクターデザインの岩佐裕子さんによる描き下ろしで、最終話で描かれた白衣に赤いローブ姿の千空が、第1期メインビジュアルの構図をなぞる形で描かれました。「科学王国の旗」をテーマにした12人の描き下ろしイラストも制作され、千空以外の11人は10月22日に公開される予定です。
会期は2026年12月10日(木)から2027年1月4日(月)までで、12月31日と1月1日は休業です。開場は10時から19時(最終入場18時30分)。通常チケットは前売で一般(高校生以上)2,000円、中学生以下1,500円、当日はそれぞれ2,300円と1,800円です。限定の「メモリアル箔アクリルパネル」が付くグッズ付きチケット(前売で一般4,500円、中学生以下4,000円)も数量限定で販売されています。
混雑が予想される12月10日から13日と、2027年1月2日から4日は日時指定の抽選制です。会期最終日の1月4日は千空の誕生日にあたり、1月2日から4日の来場者には「石神千空 バースデーステッカー」が配られます。未就学児は保護者1名につき2名まで無料なので、冬休みの家族のお出かけ先にもなりそうです。最新の販売状況は公式サイトで確認できます。
国立科学博物館、でんきの科学館、TeNQ。科学の現場と組んできた『Dr.STONE』
今回の展覧会が「博物館」を名乗るのは、作品の結末に由来するだけではありません。『Dr.STONE』はアニメの放送と並行して、本物の科学施設と何度もコラボレーションを重ねてきました。科学館の側から見ても、科学そのものを物語の主役に据えた作品は組みやすい相手だったはずです。
2022年、国立科学博物館で「Dr.STONEとめぐる科学の世界」
2022年6月21日から9月4日まで、東京・上野の国立科学博物館で「Dr.STONEとめぐる科学の世界」が開かれました。作中に登場する実験やクラフトを、展示と研究者による解説で学ぶミニ企画展に加え、千空役の小林裕介さんとあさぎりゲン役の河西健吾さんによる常設展示の音声ガイドも用意されました。見慣れた常設展示も、キャラクターの声に導かれて歩くとまるで違う見え方になる、という仕掛けです。
2025年、名古屋・でんきの科学館が20年ぶりの来館記録
2025年7月29日から8月31日まで、中部電力が運営する名古屋の「でんきの科学館」でもコラボイベントが行われました。キャラクターが館内の展示を解説するパネルや、館内に隠れた「メカ千空」を探す企画、電気の仕組みを学びながら回るクイズ&スタンプラリーが実施されています。報道によると8月11日には1日で6,942人が来館し、同館は20年ぶりに1日の来館者数の記録を更新しました。
2026年、宇宙ミュージアムTeNQで企画展「ROAD TO THE MOON」
2026年7月18日から10月18日までは、東京ドームシティの宇宙ミュージアム「Space Travelium TeNQ」で企画展「ROAD TO THE MOON」が開かれました。物語終盤の月への挑戦にちなみ、作中の月や星空が印象的な場面をピックアップした展示やフォトスポット、千空役・小林裕介さんの録り下ろしボイスが用意され、企画展は施設の入館料だけで楽しめる形でした。同じTeNQでは2026年1月から4月にかけて「宇宙兄弟展 2026」も開かれており、宇宙を描いたマンガが宇宙施設に呼ばれる流れが続いています。
マンガで科学を体験する展示は、科学館から広がってきた
こうしたコラボは『Dr.STONE』が初めてではありません。マンガの世界を入口にして、来場者に科学を体験してもらう展示は、とくに東京・お台場の日本科学未来館を中心に、10年以上前から形を変えながら続いてきました。代表的な例を年代順に見ていきます。
2010年「ドラえもんの科学みらい展」(日本科学未来館)
2010年6月12日から9月27日まで日本科学未来館で開かれたのが「ドラえもんの科学みらい展」です。ひみつ道具が現在の科学技術でどこまで実現できているのかを、楽しみながら体験するという企画でした。「あったらいいな」の道具を入口に、実在のロボット技術や研究を紹介する構成は、その後のマンガ×科学展示のひな形になったと言えます。
2012年「科学で体験するマンガ展」(日本科学未来館)
2年後の2012年7月7日から10月15日には、同じ日本科学未来館で企画展「科学で体験するマンガ展 ~時を超える夢のヒーロー~」が開かれました。取り上げたのは『ドラえもん』『鉄腕アトム』『サイボーグ009』『怪物くん』『ひみつのアッコちゃん』の5作品で、各作品のブースに2種ずつ、計10種類の体験が用意されています。高速で動く敵を特殊なゴーグルで見破る「009!最高幹部をつきとめよ!」や、アトムと一緒に3D地図の上を飛ぶ展示など、マンガの名場面を最新技術で「やってみる」形に置き換えたのが特徴でした。
2018年「名探偵コナン 科学捜査展」(日本科学未来館ほか)
2018年4月18日から7月8日まで日本科学未来館で開かれた「名探偵コナン 科学捜査展~真実への推理(アブダクション)~」は、来場者が捜査手帳を手に事件を解く参加型の展示です。毛利小五郎に容疑がかかったオリジナルの事件を、事件発生、現場検証、聞き込みという実際の捜査の流れに沿って追い、科学捜査の手法を体験しながら真相にたどり着きます。科学警察研究所が協力しており、その後は名古屋市科学館でも開催されています。
2021年~「ポケモン化石博物館」(三笠市立博物館ほか全国巡回)
国立科学博物館が地域の博物館と組んで制作したのが、巡回展「ポケモン化石博物館」です。2021年夏に北海道の三笠市立博物館で始まり、島根県立三瓶自然館サヒメル、2022年の国立科学博物館、豊橋市自然史博物館などを巡りました。ポケモンの「カセキポケモン」と現実の化石や古生物を並べ、「観察・比較」という科学の基本的な手法で違いと共通点を探す内容です。国立科学博物館は、官民連携による地域振興を目的とした初の巡回展と位置づけています。ゲーム発の作品ですが、マンガ『ポケットモンスターSPECIAL』を入口にする子どもも少なくありません。
科学館はなぜマンガと組むのか。「見る」から「試す」への変化
4つの例を並べると、ひとつの共通点が見えてきます。どの展示も、マンガの絵を飾ることより、作品の中の出来事を来場者に「試させる」ことに重心を置いているという点です。ひみつ道具の実現度を確かめる、捜査手帳で事件を解く、化石とポケモンを見比べる。いずれも、キャラクターに会いに来た人を、気づけば科学の手法の当事者にしてしまう設計になっています。
科学館にとっては、普段は理科に関心の薄い層や、親子連れの新しい客層を呼び込めるのが大きな利点です。でんきの科学館が20年ぶりの来館記録を出したことは、その効果をわかりやすく示しています。一方で作品の側から見ると、科学館での展示は「物語の中の科学は本物だった」という裏付けになり、作品世界への信頼を深めます。双方にとって得のある組み合わせだからこそ、コラボが繰り返されてきたのでしょう。
今回の『Dr.STONE』展は、こうした流れが逆向きに表れた例とも言えます。これまでは科学館がマンガを招いてきましたが、今回は作品の側が展示ホールに自前の「科学館」を建てました。滑車で石器を持ち上げる体験は、まさに科学館の体験展示そのものです。体験型の展覧会全体の広がりについては、渋谷で会期延長となった『俺だけレベルアップな件』展の記事でもまとめています。
マンガ×科学の体験展示 主な事例(一覧表)
本記事で取り上げた展示を、開催年順に整理しました。
| No. | 開催年 | 展示名 | 会場 | 体験のポイント |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2010年 | ドラえもんの科学みらい展 | 日本科学未来館 | ひみつ道具が今の科学でどこまで実現しているかを体験 |
| 2 | 2012年 | 科学で体験するマンガ展 | 日本科学未来館 | 5作品の名場面を最新技術で再現する10種類の体験 |
| 3 | 2018年 | 名探偵コナン 科学捜査展 | 日本科学未来館ほか | 捜査手帳を手に科学捜査でオリジナル事件を解く |
| 4 | 2021年~ | ポケモン化石博物館 | 三笠市立博物館ほか | カセキポケモンと化石を観察・比較する巡回展 |
| 5 | 2022年 | Dr.STONEとめぐる科学の世界 | 国立科学博物館 | 作中の実験・クラフトのミニ企画展と音声ガイド |
| 6 | 2025年 | Dr.STONE×でんきの科学館 | でんきの科学館(名古屋) | 展示解説パネルとスタンプラリー、20年ぶりの来館記録 |
| 7 | 2026年 | ROAD TO THE MOON | Space Travelium TeNQ | 月や星空の名場面の展示と録り下ろしボイス |
| 8 | 2026~27年 | TVアニメ「Dr.STONE」展 科学王国ミュージアム | 池袋・サンシャインシティ | 滑車体験や石化復活ロードなど体を動かす展示 |
冬休みは池袋で、千空の科学を自分の手で確かめる
12月の開幕までは、あと2か月足らずです。展示は第1期第6話の滑車や百夜のレコードなど、物語の具体的な場面と結びついているので、原作を読み返してから行くと「あの場面だ」と気づける瞬間が格段に増えます。とくに最終盤の展開を踏まえたキービジュアルや博物館というテーマは、結末まで読んでいるかどうかで受け取り方が変わるはずです。
日時指定の抽選が行われる開幕直後と年明けの3日間は、早めの申し込みが安心です。家族で出かけるなら、子どもと一緒に原作を読んでおくのもおすすめです。作中の実験を家で試してみるだけでも、会場での体験がぐっと面白くなります。
「読む」の先に「試す」を置くと、お客様の滞在は長くなる
科学館がマンガと組んで新しい客層を呼び込んできた流れは、温浴施設やホテル、商業施設にもそのまま応用できます。ポイントは、マンガを置くだけで終わらせず、読んだ後に「ちょっと試せる」きっかけを添えることです。科学マンガの棚の横に簡単な工作や実験の紹介を置く、季節の自由研究シーズンに理科系の作品を集めるといった小さな工夫でも、親子のお客様が過ごす時間は変わってきます。
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