「また必ず泊まりたい」と思わせる魔法とは何か?リピーター獲得で安定経営を実現する戦略

2025年最新版リピーター獲得の魔法のレシピ顧客を「常連」に変える秘訣とは?

ホテル業界では今、リピーター争奪戦が静かに、そして熾烈に繰り広げられています。新規開業が相次ぐ中、一度来たゲストを再び迎え入れる力こそが、安定経営の鍵を握っているのです。

近年、各エリアでホテル・旅館の新規オープンラッシュが続き、宿泊施設間の競争は年々厳しさを増しています。この飽和状態の市場で勝ち残るためには、初回利用のお客様をいかにして「常連」へと変えられるかが決定的に重要です。安定した客室稼働率と持続可能な収益基盤を築くためのリピーター戦略、その成功の秘訣を探っていきましょう。

目次

ホテルにとってリピーターとは?

顧客のニーズに応えるサービス・接客だけでは、顧客は物足りなさを感じてしまうかもしれません。人間は好奇心いっぱいの生き物です。まだ見たことがない、経験したことがないホテルのほうが、魅力を感じやすいのです。また同じ場所で宿泊先を探す場合、「今度は他のホテルも調べてみよう」となりがちです。

さらに、すでに宿泊したことがあるホテルの経験・思い出は、時間の流れとともに次第に薄れていきます。もう一度宿泊していただくためには、ホテルを覚えておいてもらうための「コンタクト」、そして好奇心を刺激する「アクション」が必要です。ホテルから顧客への的確なアプローチを行わないと、受け身の姿勢だけではリピーターを獲得することはできません。

ホテル・旅館でリピーターの獲得が重要な3つの理由

1. 自社の売上の安定化に繋がる

定期的に利用してくれるリピーターが増えれば、売上の基盤ができます。売上の基盤ができていれば新規顧客の獲得に割けるリソースにも余裕が生まれるため、さらなる利益の安定化に繋がります。日本交通公社の調査によれば、リピーター率が高いホテルでは客室稼働率も高いということが分かっています。つまり、リピーター獲得によって客室稼働率を高く維持することに繋がるのです。

2. マーケティングコストの削減に繋がる

新規顧客を獲得するためには、金銭的コストや労力面で負担が大きくなりがちです。リピーターを1人獲得するコストを1とすると、新規顧客を1人獲得するコストは5倍かかるといわれています(1:5の法則)。過去に自社を利用した顧客なら、メールやSNSなどでアプローチできますが、新規顧客を獲得するためには広告の出稿などが必要なためです。つまり、リピーター獲得に注力すれば、マーケティングコストを削減しながら売上向上を図れます。

3. ファン化により口コミ効果が期待できる

リピーターとはつまり、自社ホテルや旅館のファンでもあります。そのため、質の高い口コミを拡散してくれる可能性が高いといえます。自社に好意的な口コミが広がれば、新たな利用客の増加に繋がります。

また、リピーターはインターネット上で口コミを書いてくれるだけでなく、リアルの場で知人などに自社ホテルや旅館を紹介してくれることも多いのです。実生活上の知人からの紹介は売上増加への貢献度も高いため、その様なアクションを行ってくれるファンは「ロイヤルカスタマー」とも言えます。

リピーターを把握できていないケースも

ホテルによっては顧客管理が不十分で、リピーターを把握できていないケースもあります。会員システムを整備し、顧客管理を一元化する必要があります。

ホテル予約時に、宿泊者の顧客情報は獲得できています。問題はそこから顧客情報を登録しているだけの場合です。一律にDMやクーポンを発送していては、リピーター獲得にはつながりません。顧客の客層や年齢、ニーズを見極めていないためです。大切な顧客情報を管理するには、顧客管理システムをリピーター獲得につながるシステムとして活用、または導入しなければなりません。

季節によって客層は移り変わります。夏・冬は家族連れ、春・秋は少人数から修学旅行のような団体客、外国からの観光客とさまざまです。これら顧客層が求めるニーズはまったく異なります。リピーターとして獲得しようとするのであれば、顧客に合わせたアプローチが必要です。

ホテル・旅館のリピーターを増やすために事前にすべきこと

1. 自社ホテル・旅館の現状を把握する

まずは、自社ホテル・旅館の現状を把握することが大切です。例えば、施設を利用する客層や売上などを分析し、現状においてどの様な客層からどれだけの売上が得られているのかなどを把握するようにしましょう。その際、リピーター率やどのプラン・どの部屋の予約が多いのかなど、多角的にデータを収集した上で分析する必要があります。

2. ターゲット設定と細かなニーズを把握する

リピーター獲得のためには、リピートしてほしい顧客は誰なのか、どの様なニーズがあるかなど細かな情報を把握し、それらに合わせた施策を実行する必要があります。顧客のニーズや情報を把握する手段として、アンケートや顧客管理システム(PMS)の利用がおすすめです。例えば、顧客管理システムを活用して食事の好みや記念日などの情報を把握しておけば、顧客に合わせた施策を実行できます。

3. 従業員の理解・協力を得ておく

ホテル・旅館でのリピーター獲得を成功させるためには、既存従業員の協力が欠かせません。従業員に対し、「なぜリピーターを獲得したいのか?」「どんな施策を検討しているのか?」というような目的や手段をしっかりと周知し、必要な顧客情報をホテル全体で共有することも大切です。上で紹介した顧客管理システムを活用すれば、情報共有もスムーズにできます。

必ずチェックしたいリピーター比率! 客室稼働率にも影響!?

一般的な宿泊施設のリピーター比率(リピーター率)は10~30%程度と言われています。宿泊者数全体のうちリピーターの割合が3割以上であれば合格ラインと言えそうです。規模別に比較すると、小規模ほどリピーター比率が高くなる傾向があるようです。

リピーター比率が上がれば客室稼働率も上がる

リピーター比率は客室稼働率に直結すると言われています。リピーター獲得が稼働率向上の近道になります。

新規顧客獲得を目指した宣伝広告と比べて、リピーターは低コストで獲得できることが大きなメリットです。リピーターほどホテルの利益を確かなものにしてくれる存在はありません。とても頼りになる貴重な顧客です。

ホテル運営を新規顧客だけでまかなうことは困難です。リピーターを大切にして再度宿泊いただくことで、今度はクチコミから新たな顧客を獲得することができます。

リピーターを増やすための効果的な7つの施策

ここでは具体的な事例やポイントを紹介します。リピーターを増やしたいからと、闇雲に一斉に手紙やメールを送っても効果がありません。それぞれ顧客の求めるニーズが違うからです。リピーターとなる顧客目線で考えると、多くのヒントを見つけることができます。

1. 会員制度を作る

会員制度を作ることでお客様に効率よくコンタクトができる、自社サイトからの予約を促せるなどメリットは多数あります。さらに会員情報を登録してもらっているため、どんな顧客がどの時期に宿泊するのかや食事の好みなど、施設の利用情報を豊富に取得することができます。

これらの顧客それぞれのニーズに合わせた情報発信を行うと、より効果が望めます。会員として優遇された特典や招待を受けると、顧客としては「もう一度利用してみよう」という気持ちも高まります。

リピーター獲得のためには、まず会員制度やメンバーズカードなどを整備しましょう。会員として持っていてうれしくなるデザインのカードやバッジがあるとより効果的です。

2. リピーター特典の設定

リピーター特典としては宿泊ポイントの付与や、メールマガジンでの特典配布などがおすすめです。宿泊ポイントをメールで特典として送ることで、宿泊時に利用することができます。しかし、毎回同じような特典では効果はさほど期待できません。

なぜならどこでも行っているようなものだと、真新しさを感じないからです。ここで必要なことは「あなただけの特典」として感じてもらうことができる特典です。

たとえば、ある夫婦が夏に宿泊された際にフレンチレストランでディナーを召し上がられました。食事が終わる頃にシェフから、料理の説明やお礼などの会話をされていました。夫婦にとって印象に残る思い出になったかもしれません。その後、夫婦の自宅に招待状が届きます。ワインプレゼントの特典も案内されていますが、もっとうれしい特典も同封されていました。「シェフからの手紙」です。

お礼の手紙とともに、夫婦の結婚記念月の1月にシェフ特製のディナーが振る舞われることが案内されています。そして、夏の宿泊時にお好みだった魚介類が冬本番を迎え、さらにおいしくなってメニューに登場することが書かれています。ワイン・魚介類がお好きだったこと、夫婦の結婚記念月が1月だったこと。これらはシェフと会話をしたからこそ知り得た情報で、「あなただけの特典」として招待することができます。

割引やサービスばかりではなく、それぞれのお客様の心に届く特典を考える必要があります。

3. お礼のメール・お手紙・メールマガジンなど

宿泊のお礼・挨拶メールやお手紙、またはメールマガジンなどで顧客との接点を多く作ることはリピーター獲得に有効です。しかし一般的な文章では、最後まで読んでもらうことができません。顧客の心に届く内容でなければなりません。

たとえば、「おいしいケーキ」ではなく、「スイス産の濃厚なチーズを使ったとろけるケーキ」のほうが顧客が受ける印象が違います。

また、どんな思いでどんな顧客をイメージして試行錯誤しながら完成させたのか、ストーリーを伝えることも、顧客の心をひきつけます。これらはメールや手紙ばかりではなく、SNSをフル活用して情報発信することで、早くダイレクトに顧客に伝えることができます。

4. 季節・イベント情報の発信

その時期だけのイベントや季節の料理などをメールやホームページなどで情報発信することもリピーターの獲得につながります。つまりホテルとしては季節が移り変わるごとに、集客のチャンスがやってくるのです。この機会を有効に使わないわけにはいきません。

そこには、ホテルとしてのコンセプトを明確に発信する必要があります。これまで解説してきたように、他と同じことを行っていては顧客に興味を持ってもらうことはできません。立地が山なのか海なのか、客層はビジネスかファミリーか、そしてもっとも大切な顧客は何を求めているのか? 顧客のニーズに、「あなただけの」といった特典を季節やイベントと組み合わせることで、その効果は飛躍的に向上します。

5. 戦略的なクーポン活用でリピーターを増やす

クーポン施策は、リピーター獲得のための効果的なマーケティング手法です。単なる値引きではなく、戦略的に設計されたクーポンは、顧客に「また来たい」と思わせる強力な動機付けになります。

効果的なクーポン戦略のポイント

  1. パーソナライズされたクーポン
    前回の滞在で把握した顧客の好みに合わせたクーポン(例:スパを利用した方にはスパ割引券、和食を注文した方には日本料理の特典など)は、単なる値引きよりも顧客満足度を高めます。
  2. タイミングを考慮した配布
    宿泊直後のお礼メールと共に送るクーポンや、閑散期前、記念日の数週間前など、顧客の行動を促すタイミングでの配布が効果的です。
  3. 段階的な特典設計
    リピート回数に応じて特典が豪華になる仕組みは、継続的な利用を促進し、顧客の「ステータス意識」も刺激します。リピーターと常連客で異なる特典を用意することで、顧客のロイヤルティを高められます。

クーポン戦略を成功させるには、顧客データの適切な管理と分析が欠かせません。単なる値引きクーポンは短期的な集客には効果があっても、客単価の低下を招き、長期的な収益を圧迫する恐れがあります。代わりに、高単価商品への誘導や特別な体験を提供するクーポンが、収益とリピート率の両方を高める効果的な方法です。

詳しいクーポン活用法や成功事例については、「クーポン活用で集客力アップ! ホテルのクーポン・割引施策完全ガイド」をご覧ください。ホテルの規模や客層に合わせた最適なクーポン戦略を選び、リピーターづくりに役立てましょう。

6. 設備とサービスの継続的な進化

リピーターを維持するには、設備やサービスに継続的な変化と進化を取り入れることが大切です。高速Wi-Fiや充電ステーションの整備、ファミリー向けの無料離乳食提供や親子向けイベントの開催など、顧客ニーズに合わせた設備の充実を図りましょう。

また、従業員のスキルアップも重要です。接客サービスの質を高めることが顧客満足度向上に直結します。従業員教育の徹底と並行して、従業員満足度の向上も図りましょう。従業員のモチベーションが高まれば、おのずとサービス品質も向上し、顧客満足度アップにつながります。

7. 手軽に導入できる差別化ポイント:漫画コーナーなど

リピーターの獲得には大がかりな設備投資をせずとも実現できる「ちょっとした差別化」も重要です。例えば、多くのホテルで取り入れられ始めている「漫画コーナー」の設置は、初期投資が少なく、すぐに始められるサービスです。老若男女問わず気軽に楽しめる漫画は、雨の日や観光の合間のひとときを快適にし、「このホテルでの滞在が心地よかった」という印象を残します。

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リピーター獲得のための最新トレンド

AIとデータ分析を活用した次世代のパーソナライゼーション

デジタル技術の進化により、ホテル業界でもデータ駆動型のパーソナライゼーションが可能になりました。顧客データを分析し、個々の嗜好やパターンを把握することで、一人ひとりにカスタマイズされた体験を提供できます。

例えば、AIを活用した顧客分析システムを導入すれば、過去の宿泊履歴や選択したサービス、口コミ内容などから顧客の好みを予測し、次回予約時に最適な部屋やプランを提案できます。また、IoT技術を活用した客室内の温度や照明の自動調整など、前回の滞在時の設定を記憶して再現することも可能です。

こうしたテクノロジーの活用は、大手ホテルチェーンだけでなく、中小規模の宿泊施設でも導入しやすいクラウドサービスが増えています。初期投資を抑えながらも、大企業に引けを取らないパーソナライズされたサービスを実現できる時代になっています。

コロナ後の新たなニーズへの対応

パンデミックを経て、旅行者の価値観や行動パターンは大きく変化しました。安全・衛生面への意識の高まり、長期滞在型の旅行の増加、ワーケーションの普及など、新たなニーズに対応することがリピーター獲得の鍵となっています。

具体的には、非接触型チェックインシステムの導入、清掃・消毒プロセスの可視化、長期滞在向けの割引プラン、ワーク環境が整った客室の提供などが効果的です。特に注目すべきは「ステイケーション」(地元や近郊での宿泊を伴う休暇)の需要増加で、地元住民をターゲットにした特別プランの開発も検討する価値があります。

変化し続ける顧客ニーズに柔軟に対応し、新しい生活様式に寄り添うサービスを提供することで、新たなリピーター層の開拓につなげましょう。

リピーター戦略の効果測定とPDCAサイクル

リピーター獲得には継続的な取り組みが欠かせません。単に施策を実行するだけでなく、その効果を数値化して測定し、改善していくサイクルを確立することが成功への鍵です。

具体的な指標としては「リピート率」(全予約数に対するリピーター予約の割合)、「顧客生涯価値(LTV)」(一人の顧客がもたらす長期的な収益)、「リピーターからの紹介率」などが挙げられます。これらの指標を定期的に確認し、目標値との差異を分析することで、より効果的な施策へと改善できます。

また、リピーターからの直接的なフィードバックも貴重な情報源です。滞在中やチェックアウト時のアンケートだけでなく、滞在後一定期間が経過した時点でのアンケートも実施すると、より正確な評価が得られるでしょう。

参考にしよう!リピート率が高いホテル・旅館

星野リゾート

創業100年以上の歴史を持つ「星野リゾート」はリピーター率が高く、客室稼働率も約70%となっており、宿泊業界におけるマーケティングのお手本とされています。

地域ごとに独自のコンセプトやサービスを打ち出し、自社ならではの魅力を作り出している点が、星野リゾートの人気の理由です。また、従業員満足度の向上を重視し、既存従業員のアイデアを採用するなど積極的な協力を得ている点も注目されています。

アパホテル

アパホテルは「全国どこでも同じ品質のサービスを提供する」というコンセプトと、戦略的なマーケティングでリピーター獲得に成功している好例です。特に以下の点が注目されます。

  1. 独自の特典戦略
    アパカレーの無料提供など、他チェーンにはない独自の特典を設定し、宿泊客に印象的な体験を提供しています。一見小さな特典でも、オリジナリティがあることで顧客の記憶に残ります。
  2. 会員プログラムの充実
    アパポイントカードなどの会員制度を充実させ、リピート利用するほど特典が増える仕組みを構築しています。会員限定価格や特典を設けることで、予約サイト経由ではなく自社サイトからの直接予約を促進しています。
  3. 一貫したブランド体験
    どの店舗でも同じ品質の客室とアメニティを提供することで、ビジネス客にとって「安心して予約できる」宿泊先としての地位を確立しています。この一貫性がリピーターの信頼獲得につながっています。

アパホテルの戦略は、小~中規模のホテル・旅館でも応用できる要素が多くあります。独自の「名物」を作り、それを特典として提供することや、会員制度の充実などは、比較的低コストで導入できる施策です。

杉乃井ホテル

大分県別府温泉・観海寺(かんかいじ)温泉にある「杉乃井ホテル」は2021年の楽天トラベルの調査でリピート率1位を獲得しています。

ボウリング場やゲームコーナーなどのエンターテイメント施設の充実が杉乃井ホテルの人気の理由です。また、別府湾を見晴らす大展望露天風呂や、プールや温泉泥セラピーなどさまざまな設備を楽しめる屋外型温泉「アクアガーデン」も、リピーター獲得に貢献しています。

リピーター獲得で安定経営を実現しよう

社ホテルの売上を安定させるためにも、リピーター獲得は欠かせません。リピーターを獲得するためには、顧客のニーズを正確に把握しつつ、適切な施策を実行する必要があります。

さまざまな施策がある中で、予約サイトや公式サイトの改善、顧客管理システムの活用、パーソナライズされた特典の提供、心に響くコミュニケーションなどが、リピーター獲得に重要な要素です。顧客一人ひとりに寄り添い、その声に耳を傾け、期待を超える価値を提供し続けること。それこそが「また必ず泊まりたい」と思わせる真の魔法なのです。

リピーター獲得の旅は、終わりのない挑戦ですが、その先には持続可能な経営と、真の顧客満足という豊かな未来が広がっています。

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