ホテルのオリジナルアメニティ開発——地域の特色を活かした差別化事例と導入の実務

「アメニティがよかった」は、口コミに書かれやすいキーワードの一つです。大手チェーンが全国統一のアメニティを提供する中、中小ホテル・旅館が地域の特色を活かしたオリジナルアメニティを用意することは、低コストで実現できる差別化策です。

ただし、「オリジナルアメニティを作りたいが、何から始めればいいかわからない」という声も多く聞かれます。本記事では、地域資源を活用したアメニティの事例を紹介した上で、開発の実務ステップとコスト感を解説します。

目次

なぜオリジナルアメニティが差別化になるのか

OTAで宿泊施設を比較するとき、客室の広さや料金は数字で一目瞭然ですが、「泊まってみないとわからない体験」は写真と口コミでしか伝わりません。アメニティは、ゲストが客室で最初に手に取るものであり、「この宿は他と違う」という印象を作る最初の接点です。

さらに、SNS時代においてアメニティは「シェアされやすいコンテンツ」です。見た目が美しい、パッケージにストーリーがある、地元の素材が使われている——こうした要素があると、ゲストが写真に撮ってInstagramやXに投稿する確率が上がります。

一方で、2023年以降はSDGsの観点から使い捨てアメニティの見直しも進んでいます。プラスチック資源循環促進法の施行により、歯ブラシやカミソリなどの使い捨てプラスチック製品の削減が求められる中、「量より質」「使い捨てより持ち帰りたくなるもの」へのシフトが、差別化とサステナビリティを両立させる方向性です。

地域資源を活かしたアメニティ事例

実際にどのようなオリジナルアメニティが作られているか、アプローチ別に紹介します。

地元の素材を使ったスキンケア・バスアメニティ。温泉地であれば温泉成分を配合した化粧水やバスソルト、柑橘の産地であれば柚子やみかんの精油を使ったボディソープ、茶の産地であれば茶葉エキスを配合したシャンプーなど。地元の素材は「ここでしか手に入らない」というストーリーを自然に生みます。

地元の工芸品・伝統技術を活かした非消耗品。今治タオル、播州織のハンドタオル、信楽焼の石鹸置き、木曽ヒノキのルームフレグランスなど。使い捨てではなく「持ち帰って使い続けたい」品質のものは、ゲストの記憶に残りやすく、口コミにも書かれやすい。

地元企業とのコラボレーション。地域のクラフトビール醸造所と連携したウェルカムドリンク、地元の和菓子店と共同開発したオリジナル茶菓子、地域のアロマ工房と作ったオリジナルブレンドのルームスプレーなど。コラボレーションは双方にとってPR効果があり、地元メディアに取り上げられるきっかけにもなります。

環境配慮型のアメニティ。竹製の歯ブラシ、固形シャンプーバー、リフィル式のディスペンサー、地元の間伐材を使ったアメニティトレイなど。環境意識の高いゲスト層へのアピールと、使い捨てコストの削減を同時に実現できます。

オリジナルアメニティ開発の実務ステップ

ステップ1 自施設のターゲットとブランドの確認

どんなゲストに来てほしいのか、自施設のブランドは何を伝えたいのか。ビジネスホテルとリゾート旅館では、ふさわしいアメニティの方向性がまったく異なります。ターゲットの明確化は「ホテルの差別化戦略」で解説しています。

ステップ2 地域の素材・パートナーをリサーチする

地元の商工会議所、観光協会、特産品販売所を訪ね、「宿泊施設向けに小ロットで供給できる地元企業」を探します。意外なところに協力先が見つかることがあります。

ステップ3 小ロット・低コストから始める

いきなり全客室分を大量発注するのではなく、まず100〜200個程度の小ロットで試作し、実際にゲストの反応を見ます。口コミで言及されるか、SNSに投稿されるか、フロントで「これは何ですか?」と聞かれるか。反応が良ければ本格発注に移行します。

コストの目安として、地元素材を使ったバスアメニティ(シャンプー・コンディショナー・ボディソープのミニボトルセット)は、OEM(受託製造)で1セット200〜500円程度から製作可能な場合があります。ただし、ロット数や素材によって大きく変動するため、複数の製造元に見積もりを取ることをおすすめします。

ステップ4 「ストーリー」を添えて提供する

アメニティそのものだけでなく、「なぜこのアメニティを選んだか」のストーリーを添えることで、価値が何倍にもなります。客室内にカードを1枚置き、「このシャンプーは○○地区の柚子農家と一緒に作りました」と書くだけで、ゲストの体験が「消耗品を使った」から「地域の物語に触れた」に変わります。

ステップ5 効果を測定する

導入前後の口コミ内容を比較し、アメニティに関する言及が増えたかを確認します。SNSでの投稿数、フロントでの反応、リピーターの声など、定性的な評価も重要です。

まとめ

オリジナルアメニティは、大きな設備投資なしに「この宿は他と違う」という印象を作れる差別化策です。地元の素材や企業と連携し、小ロットから始めて反応を見る。ストーリーを添えて提供し、口コミで効果を測定する。

アメニティに限らず、ホテルの差別化には複数のアプローチがあります。全体像は「ホテルの差別化戦略——価格競争から脱却する5つのアプローチ」で解説しています。

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