『鋼の錬金術師』が22年ぶりにUSJへ帰ってくる! セーラームーンも北斗の拳も、完結から何年たってもファンが集まる“復活コラボ”の事例
荒川弘さん原作のTVアニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』が、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)とコラボすることが2026年10月28日に発表されました。USJのスペシャル・イベント「ユニバーサル・クールジャパン 2027」の一環として、2027年春に期間限定のプログラムが開幕する予定です。荒川さんの連載中の最新作『黄泉のツガイ』も同時に登場し、こちらはテーマパークとのコラボ自体が初めてになります。
USJの発表によると、ハガレンとのコラボは2005年春の「鋼の錬金術師 プレミア・ツアー」以来、22年ぶり2回目です。原作の連載が終わったのは2010年ですから、完結から17年たって再びパークに戻ってくることになります。
連載が終わり、アニメの放送も終わった作品が、なぜ何年もたってから大きなコラボやイベントの主役に返り咲くのでしょうか。2005年の初コラボを振り返ったうえで、同じように長い時間を経て戻ってきたマンガの事例を集めてみました。
2005年、ハガレンはUSJ初の「日本のTVアニメ」だった
最初のコラボ「鋼の錬金術師 プレミア・ツアー」は、2005年3月19日から5月8日までの期間限定で開催されました。3月11日から18日には、専用の引換券を持つ人だけが入れる先行開催も行われています。当時の報道によると、会場は毎日放送(MBS)がパーク内で運営していたテレビ番組の見学施設を転用したもので、見学スペースに大総統の部屋などハガレンの世界を再現し、最後にシアターで未公開の映像を上映する構成でした。
2004年11月の日本経済新聞は、USJがアメリカの映画やテレビ以外を題材にしたアトラクションを設けるのはこれが初めてだと報じています。今回のUSJの発表でも、プレミア・ツアーは「パーク初の日本のTVアニメとのコラボレーション」と紹介されました。いまでこそ冬から春のUSJはマンガ・アニメ作品でにぎわいますが、その最初の一歩を踏み出したのがハガレンだったわけです。
USJとマンガの関係は、2007年に始まった「ワンピース・プレミアショー」を起点に語られることが多く、当サイトでもその流れを年表にまとめています。ハガレンのプレミア・ツアーは、その2年前に行われていた先駆けの企画でした。
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ちなみに2005年のプレミア・ツアーが開かれたのは、2003年に始まった最初のTVアニメ版が人気を集めていた時期でした。2027年に登場するのは、原作の最終回までを描いた2009年から2010年放送の『FULLMETAL ALCHEMIST』です。同じハガレンでも、22年の間にパークへ持ち込まれる物語そのものが入れ替わっているのは、長く続く作品ならではといえます。
完結から16年、2026年のハガレンはふたたび動き出していた
『鋼の錬金術師』は月刊「少年ガンガン」(スクウェア・エニックス)で2001年から2010年まで連載され、単行本は全27巻で完結しています。USJの発表では全世界のシリーズ累計が9,000万部を突破したとされており、第49回小学館漫画賞も受賞した作品です。
2026年は作品の誕生から25周年にあたり、8月13日には東京の松屋銀座で「鋼の錬金術師×黄泉のツガイ展」が開幕しました。展覧会はその後、名古屋、札幌、金沢、大阪、福岡などを巡回し、2027年2月まで続く予定です。今回のUSJコラボは、この周年の盛り上がりがそのままパークへつながった形といえるでしょう。
もうひとつ見逃せないのが、同じ作者の新作の存在です。『黄泉のツガイ』はシリーズ累計750万部を超え、2026年春のTVアニメ化に続いて第2期の制作も決まっています。展覧会もUSJも、ハガレン単独ではなく『黄泉のツガイ』と並べて企画されました。新作で荒川作品を知った若い読者が旧作へさかのぼり、昔からのファンが新作を手に取るという、両方向の入口が用意されているわけです。2027年春のパークで2作品を見比べる前に、それぞれの原作に触れておくのもおすすめです。
長い年月を経て、コラボやイベントに戻ってきた作品
完結した作品が何年もたってから大きな企画の主役になる例は、ハガレンだけではありません。ここでは、連載終了から20年以上たってテーマパークや展覧会、街なかの企画に戻ってきた作品を4つ取り上げます。
美少女戦士セーラームーン(武内直子/講談社)
「なかよし」で1992年から1997年まで連載された『美少女戦士セーラームーン』は、連載終了から19年後の2016年に、初めての総合展「美少女戦士セーラームーン展」を六本木ヒルズの東京シティビューで開きました。会期は4月16日から6月19日までで、武内直子さんの描き下ろし原画も展示されています。
2018年には誕生25周年を記念して、USJで「美少女戦士セーラームーン・ザ・ミラクル 4-D」が始まりました。USJはこれを、セーラームーン史上初のアトラクション化と紹介しています。その後も2019年、2022年と続き、2026年12月2日からはユニバーサル・クールジャパン 2027の第1弾として4度目のコラボが開催されます。ファンの評判が高かった4-Dアトラクションが復活し、新たにストーリー・ライドも加わります。ハガレンと同じイベントに名を連ねていることからも、USJが「長く愛される作品」を軸に据えていることがうかがえます。
シティーハンター(北条司/集英社)
「週刊少年ジャンプ」で1985年から1991年まで連載された『シティーハンター』では、依頼人が駅の伝言板に「XYZ」と書き込むのがおなじみの場面です。携帯電話のない1980年代らしい仕掛けですが、この伝言板が現実の新宿駅に2度よみがえりました。
1度目は2019年、『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』の公開に合わせてJR新宿駅の中央東口に期間限定で設置されたものです。2度目は2023年、『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』の公開時で、今度は東改札外のスペースに置かれました。連載終了から30年近くたっても、作品の舞台そのものを使った企画が成り立つのは、新宿という街と作品の結びつきがそれだけ強いからでしょう。
北斗の拳(武論尊・原哲夫/集英社)
1983年から1988年まで「週刊少年ジャンプ」で連載された『北斗の拳』は、連載開始40周年の2023年に、作品史上初となる大規模な原画展「北斗の拳40周年大原画展 ~愛をとりもどせ!!~」を開催しました。東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで10月7日から11月19日まで開かれ、ラオウ編までの136話、約3,000ページの原稿と当時の彩色画から400枚が選ばれています。
展覧会はその後、2024年に兵庫県立美術館、2025年に福岡アジア美術館へと巡回しました。主催者は全世界での発行部数が1億部を超えると紹介しています。完結から35年たってから「初めての大原画展」が開かれたという事実は、それだけ待っていたファンがいたことの裏返しでもあります。
幽☆遊☆白書(冨樫義博/集英社)
1990年から1994年まで連載された『幽☆遊☆白書』は、冨樫義博さんの画業35年を記念した「冨樫義博展 -PUZZLE-」で、『HUNTER×HUNTER』などと並んで展示の柱になりました。会場は森アーツセンターギャラリーで、2022年10月28日から2023年1月9日まで、直筆原稿やカラーイラストなど350点以上が並んでいます。
2026年9月には、TVアニメ版の蔵馬がヘアケアブランドの特別講師に就任するコラボも話題になりました。作中で敵から「トリートメントはしているか?」と問われた有名な場面が出発点になっていて、原作を読んでいた世代ほど楽しめる企画です。
“復活コラボ”の事例一覧
ここまでの作品を、連載期間と戻ってきた年で整理しました。完結からの年数は、連載終了の年からその企画の年までを数えています。
| No. | 作品 | 連載期間 | 戻ってきた年 | 企画 | 完結からの年数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 鋼の錬金術師 | 2001〜2010年 | 2026年 | 鋼の錬金術師×黄泉のツガイ展(全国巡回) | 16年 |
| 2 | 鋼の錬金術師 | 2001〜2010年 | 2027年春 | USJ ユニバーサル・クールジャパン 2027(22年ぶり2回目) | 17年 |
| 3 | 美少女戦士セーラームーン | 1992〜1997年 | 2016年 | 初の総合展「美少女戦士セーラームーン展」 | 19年 |
| 4 | 美少女戦士セーラームーン | 1992〜1997年 | 2018年 | USJで初のアトラクション化 | 21年 |
| 5 | 美少女戦士セーラームーン | 1992〜1997年 | 2026年12月 | USJで4度目のコラボ、4-D復活とストーリー・ライド | 29年 |
| 6 | シティーハンター | 1985〜1991年 | 2019年/2023年 | 劇場版公開に合わせ新宿駅に「XYZ」の伝言板が復活 | 28年/32年 |
| 7 | 北斗の拳 | 1983〜1988年 | 2023年 | 史上初の大原画展(東京・兵庫・福岡を巡回) | 35年 |
| 8 | 幽☆遊☆白書 | 1990〜1994年 | 2022年 | 冨樫義博展 -PUZZLE- | 28年 |
| 9 | 幽☆遊☆白書 | 1990〜1994年 | 2026年 | 蔵馬がヘアケアブランドの特別講師に | 32年 |
完結作が戻ってくるとき、何がきっかけになっているのか
並べてみると、復活のきっかけにはいくつかの型があることがわかります。もっともわかりやすいのは周年です。ハガレンの25周年、セーラームーンの25周年、北斗の拳の40周年、冨樫さんの画業35年と、節目の年が企画を立てる理由になっています。周年は作り手側にとっても、ファンにとっても「いま改めて」と言いやすいタイミングなのでしょう。
次に、新しい映像や新作の存在です。シティーハンターの伝言板は、どちらも新作の劇場版の公開に合わせて置かれました。ハガレンの場合は、作者自身の新作『黄泉のツガイ』がアニメ化され、旧作と並べて企画される流れができています。新しい入口があると、完結作も「懐かしいもの」で終わらず、いまの話題として扱われるようになります。
そして、こうした企画を支えているのは、作品とともに年を重ねたファンの存在です。連載当時に子どもや学生だった読者は、いまでは自分で遠出の予定を立て、グッズや入場料にお金をかけられる大人になりました。USJに足を運ぶ人、原画展のために東京や大阪まで出かける人、SNSで「あの場面が来た」と盛り上がる人がいるからこそ、完結から20年、30年たった作品でも企画が成立するのだと考えられます。
2027年春のUSJの前に、エドとアルの旅を読み返す
USJでのハガレンのプログラムの詳細は、今後発表される予定です。パークでどんな「超リアル」な体験が待っているかはまだわかりませんが、エドワードとアルフォンスがたどった旅を知っているかどうかで、楽しみ方は大きく変わるはずです。全27巻で完結しているので、春までに通して読み返すには、ちょうどいい長さでもあります。
あわせて『黄泉のツガイ』を読んでおけば、同じ作者が20年の間に描いてきた2つの世界を、パークで続けて味わえます。昔ハガレンに夢中になった方も、アニメで黄泉のツガイから入った方も、それぞれの入口から荒川作品を読み比べてみてください。
昔のファンが帰ってくる棚を、施設にもひとつ
今回の事例が示しているのは、完結した作品にも人を動かす力が残っているということです。新作の話題作だけでなく、ハガレンやセーラームーン、北斗の拳のように何十年も読み継がれてきた作品は、親子や夫婦、昔からの友人同士で話題を共有しやすく、幅広い年代のお客様に手に取ってもらえます。
温浴施設やホテル、ネットカフェのマンガコーナーでも、USJのコラボや原画展のような話題に合わせて、往年の名作を目立つ場所に並べてみてはいかがでしょうか。「懐かしい」と手を伸ばしたお客様が、全巻を読み切るために滞在を延ばしたり、もう一度来館したりするきっかけになります。
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