「SAKAMOTO DAYS展」7月17日開幕! ラフから完成原稿まで、原画展でしか味わえない“生原稿の凄み”とは
鈴木祐斗さんの人気漫画『SAKAMOTO DAYS』の展覧会「SAKAMOTO DAYS展」が、2026年7月17日から9月6日まで、東京ドームシティのGallery AaMoで開催されます。会場は「坂本商店、営業中」から「彩りのある日々」まで7つのゾーンで構成され、作品の名場面や世界観を体感できる大規模な内容です。開幕に先立つオープニングイベントには、アニメで朝倉シン役を演じる声優の島﨑信長さんも登壇しました。
この展覧会の主役は、ずばり「創作の軌跡」です。完成した誌面には残らない、ラフやネーム、線画、そして作者の生原稿。それらを間近で見られるのが、原画展という場の醍醐味です。今回はSAKAMOTO DAYS展を入り口に、原画展でしか味わえない生原稿や制作過程の魅力を、これまでの名作原画展とあわせて掘り下げます。
「SAKAMOTO DAYS展」とは。創作の軌跡を7つのゾーンで
本展では、完成原稿やカラーイラストが150点以上、さらに未発表のラフやネーム、いわゆる“ボツ絵”などの秘蔵資料が80点以上そろいます。見どころのひとつが、ラフや線画の段階と完成原稿とを見比べられるコーナーです。正面を向いていた顔が完成版では横顔に変わっているなど、鈴木さんが最後の最後まで絵を突き詰めていった過程が、そのまま目の前に並びます。「ZONE2」では、複製のペン入れ原稿が舞うように装飾された「ぐるぐる線画タワー」も登場します。
ゾーンの終盤には、鈴木さんの愛用品や仕事場の風景を映したパネルも展示されます。なかでも話題になったのが、消しカスを丸めて握りこぶしより大きくなった“黒い球”。登壇した島﨑さんも、その異様な存在感に作者の試行錯誤の熱量を感じたと語っています。会期中は無休で、全日日時指定制。料金は一般2000円、中学・高校生1500円、小学生900円です。単行本28巻が8月4日に発売され、アニメ第2期が2027年1月に控えるなど、作品全体が盛り上がるタイミングでの開催です。
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印刷では消えてしまう、原画・生原稿だけの魅力
そもそも、なぜ人はわざわざ原画展に足を運ぶのでしょうか。ふだん私たちが読む単行本や雑誌は、印刷という工程を経た複製です。そこでは、原稿用紙に引かれた線の勢いや、インクの濃淡、ホワイトで修正した跡といった細部が、どうしても均されてしまいます。生原稿には、作者がペンを走らせたその瞬間の呼吸が、そのまま残っています。原画展は、その呼吸に直に触れられる場所です。
もうひとつの魅力が、制作過程を追体験できることです。ラフからネーム、線画、そして完成原稿へ。ふだん読者が目にするのは、いちばん最後の完成形だけです。けれど原画展では、そこにたどり着くまでに作者が何を選び、何を捨てたのかという舞台裏をのぞけます。SAKAMOTO DAYS展の比較コーナーは、まさにこの面白さを凝縮した展示だといえます。
生原稿・制作過程が主役になった、名作原画展
生原稿や制作過程を主役に据えた原画展は、これまでにも数多く開かれ、そのたびに大きな話題を呼んできました。SAKAMOTO DAYS展の楽しみ方を深めるためにも、代表的な展覧会を開催年順に振り返ってみます。
2008〜2010年 井上雄彦「最後のマンガ展」。会場で描く、その場だけの原画
『バガボンド』などで知られる井上雄彦さんが、上野の森美術館を皮切りに全国を巡回した展覧会です。この展示のために描き下ろした約140点の肉筆画で、会場そのものをひとつの物語として体験させる構成が話題になりました。既存の原稿を並べるのではなく、その場で物語を描くという、原画展でしか成立しない体験を打ち出した象徴的な催しです。
2012年 大友克洋「GENGA展」。『AKIRA』生原稿2300ページの物量
『AKIRA』の大友克洋さんが、デビュー以来のキャリアを網羅した初の大規模原画展です。展示された原画は約3000点。目玉は、『AKIRA』の生原稿およそ2300ページを一挙に並べた圧倒的な物量でした。一枚一枚の緻密な書き込みを浴びるように見せる展示は、原画そのものの密度に圧倒される体験として、多くの来場者の記憶に残りました。
2016年 浦沢直樹展「描いて描いて描きまくる」。単行本1冊まるごとの原稿
『20世紀少年』『MONSTER』などの浦沢直樹さんの展覧会は、「読者が手にする漫画がどう作られるか」を体感させることをコンセプトにしていました。単行本1冊分の原稿をまるごと展示したうえ、構想メモや少年時代の漫画ノート、秘蔵のスケッチまで公開。会場では実際に作画するライブ映像も上映され、制作過程そのものを主役に据えた構成が高く評価されました。
2018年 荒木飛呂彦原画展「JOJO」。カラー原画の生々しい発色
『ジョジョの奇妙な冒険』の連載30周年を記念し、国立新美術館などで開かれた原画展です。初公開を含む約280点の原画が並び、とりわけ荒木飛呂彦さんの鮮烈なカラー原画が主役となりました。印刷では失われてしまうインクの発色や彩色の生々しさを目の当たりにできる貴重な機会で、東京と大阪の2会場で26万人以上を動員しています。
2019年 進撃の巨人展FINAL。編集者の赤入れが残る生原稿
『進撃の巨人』の諫山創さんの展覧会では、アニメ後半の原画を中心に展示が組まれました。特別展示として公開されたのが、B4サイズのネーム原稿や、担当編集者が赤と青のペンで指示や感想を書き込んだ生原稿です。作品が作者ひとりではなく、編集者とのやり取りのなかから生まれていく過程が見えると、大きな注目を集めました。
2012年・2021年 ONE PIECE展・鬼滅の刃展。名場面の原画と作家の仕事場
アニメ化で人気を集めたヒット作の大型原画展も、生原稿や作家の仕事ぶりを見せる場になってきました。尾田栄一郎さん監修の「ONE PIECE展」は2012年に開かれ、名場面の原画に加えて作者の仕事机を再現し、東京だけで51万人以上を動員しています。連載完結後の2021年に開かれた「鬼滅の刃 吾峠呼世晴原画展」でも、作者直筆の原画およそ400点で物語の世界がたどられました。
常設で生原稿に会える場所もある
こうした催しは会期限定のものがほとんどですが、生原稿を日常的に見られる場所もあります。川崎市の藤子・F・不二雄ミュージアムは、およそ5万点の原画を収蔵し、そこから選んだ生原稿やカラー原画を常設で展示しています。展示室では「まんがができるまで」のプロセスも紹介され、『ドラえもん』などの世界がどう生み出されたのかを、いつでもたどれるようになっています。
一覧で振り返る、生原稿・制作過程が見どころの原画展
ここまで紹介してきた原画展を、開催年順に整理します。時代も作品もさまざまですが、どれも「完成形だけでは分からない部分」を見せてくれる点で共通しています。
| No. | 開催年 | 展覧会 | 作者・作品 | 生原稿・制作過程の見どころ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2008〜2010年 | 井上雄彦 最後のマンガ展 | 井上雄彦『バガボンド』ほか | 会場のための描き下ろし肉筆画 約140点 |
| 2 | 2012年 | 大友克洋 GENGA展 | 大友克洋『AKIRA』ほか | 生原稿 約2,300ページを一挙展示(原画約3,000点) |
| 3 | 2012年 | ONE PIECE展 | 尾田栄一郎『ONE PIECE』 | 名場面の原画と作家の仕事机の再現(東京51万人超) |
| 4 | 2016年 | 浦沢直樹展 描いて描いて描きまくる | 浦沢直樹『20世紀少年』ほか | 単行本1冊分の原稿・ネーム・ライブ作画映像 |
| 5 | 2018年 | 荒木飛呂彦原画展 JOJO | 荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』 | 印刷では出ないカラー原画の発色(26万人超) |
| 6 | 2019年 | 進撃の巨人展FINAL | 諫山創『進撃の巨人』 | 編集者の赤入れが残るネーム・生原稿 |
| 7 | 2021年 | 鬼滅の刃 吾峠呼世晴原画展 | 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』 | 完結後に公開された直筆原画 約400点 |
| 8 | 2026年 | SAKAMOTO DAYS展 | 鈴木祐斗『SAKAMOTO DAYS』 | ラフ・線画・完成原稿の見比べ、生原稿・愛用品 |
こうして並べてみると、原画展の本当の楽しみが見えてきます。それは、きれいに仕上がった一枚の絵を鑑賞することだけではありません。むしろ、そこに至るまでの迷いや修正、作者の試行錯誤の跡にこそ、原画展ならではの見応えがあります。SAKAMOTO DAYS展も、まさにその楽しみを凝縮した展覧会だといえます。
個人の皆様へ。原作を読んでから、原画に会いに行く
原画展は、そのまま訪れても十分に楽しめます。ただ、原作を読んでから足を運ぶと、一枚の原画から受け取れるものが大きく変わります。「あの場面の、あのコマの原画だ」と分かるだけで、目の前の線の一本一本に物語が宿って見えてきます。SAKAMOTO DAYS展のオープニングに登壇した島﨑さんも、図録を読み込んでからもう一度展示を見たくなる、と語っていました。
SAKAMOTO DAYS展の会期は9月6日までで、全日日時指定制です。人気の展覧会は日時枠が早く埋まることもあるため、原作を読み返しながら、余裕をもって計画を立てておくのがおすすめです。
この夏から冬にかけては、SAKAMOTO DAYS展のほかにも全国各地でマンガ展・原画展が続きます。開催時期の一覧は、下半期のカレンダー記事にまとめています。気になる展覧会を探すときの参考にしてください。
施設運営者の皆様へ。“見る”と“読む”をつなぐ
原画展の盛り上がりは、「見る」体験と「読む」体験がつながったときに、人の心が最も動くことを教えてくれます。商業施設や図書館、カフェなどで作品の特集コーナーやミニ展示を企画するとき、その場で実際に作品を読める棚があれば、来場者の満足度は大きく高まります。パネルや複製原画で心を掴まれた人が、すぐそばで物語の続きを手に取れる。展示と読書がひと続きになった空間は、記憶に残る体験を生み出します。
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