ポケモンカードが初めて映画の主役に、『ポケモン:ワイルドカード』2027年公開へ。カードで戦う物語はマンガがずっと先に描いてきた
「ポケットモンスター」のカードゲームを題材にした長編アニメーション映画『ポケモン:ワイルドカード』が、2027年に公開されることが発表されました。アメリカ・サンフランシスコで行われた「ポケモンワールドチャンピオンシップス2026」で明らかにされたもので、あわせて特報とスーパーティザービジュアルも披露されています。
約35秒の特報には、ネオンが光る夜の街の欄干に現れるばけのかわポケモンのミミッキュと、ミミッキュのように黄色いフードをかぶったポケモンカードプレイヤー・ミキヤが登場します。監督は『THE FIRST SLAM DUNK』で演出を手がけた北田勝彦さん、キャラクターデザインは林明美さん、制作はCloverWorksが担当します。ポケモンの新作映画としては7年ぶりの公開です。
ポケモンの映画は1998年の第1作以来、ゲームやTVアニメ本編の物語を劇場サイズに広げてきました。カードゲームそのものを題材にするのは、これが初めてになります。とはいえ、カードで戦う人間を描く物語自体は目新しいものではありません。むしろマンガの世界では、30年近く前から主要なジャンルのひとつであり続けてきました。
そもそもポケモンカードは、どれだけの規模なのか
ポケモンカードゲームは、1996年10月20日に『ポケットモンスターカードゲーム』として株式会社メディアファクトリーから発売されました。ゲームボーイ用ソフト『ポケットモンスター 赤・緑』の発売が同じ1996年の2月ですから、ゲーム本編とほぼ同時期に走り出したことになります。
公式発表によると、2024年3月末の時点で世界約93の国と地域での販売実績があり、全世界での累計製造枚数は648億枚以上に達しています。今回の発表の舞台になった「ポケモンワールドチャンピオンシップス」は、そのカードゲームの世界一を決める大会です。競技としての土壌がここまで育った状態で、ようやく映画の題材になったという順序は覚えておく価値があります。
なお、ポケモンの前作映画は2020年12月25日に公開された『劇場版ポケットモンスター ココ』でした。シリーズ23作目にあたり、1998年から毎年夏に公開されてきたシリーズで初めての冬公開となった作品です。そこから7年ぶりの新作が、カードゲームを題材にした完全な新機軸で戻ってくることになります。
カードで戦うマンガは、30年前から描かれてきた
カードゲームを題材にした物語には、大きく分けて二つの流れがあります。マンガの中で生まれた架空のカードゲームが現実の商品になった流れと、先に売られていたカードゲームがマンガの題材になった流れです。どちらの方向にも代表作があり、しかも互いに影響し合ってきました。
『遊☆戯☆王』は、マンガの中のカードを現実に持ち出した
高橋和希さんの『遊☆戯☆王』は、集英社「週刊少年ジャンプ」の1996年42号から2004年15号まで連載されました。コミックスは全38巻、シリーズ累計発行部数は2026年5月時点で4400万部を突破しています。連載開始は、同じジャンプで『SLAM DUNK』が1996年27号に最終回を迎えたわずか数か月後のことでした。
この作品はもともと一話完結の形で始まり、主人公の遊戯がさまざまなゲームで相手を裁く構成でした。ところが読者に好評だった架空のカードゲーム「マジック&ウィザーズ」を再登場させたことで人気が回復し、以降はカードバトルを軸にした物語へと舵を切ります。そして1999年、そのカードゲームが「遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム」として現実の商品になりました。
現実になったあとの伸びが尋常ではありませんでした。2009年7月にギネス・ワールド・レコーズから「世界で最も販売枚数の多いトレーディングカードゲーム」として認定され、2011年6月には販売枚数251億7000万枚で自らの記録を更新しています。マンガの中の遊びが、世界規模の産業を生んだ形です。
『デュエル・マスターズ』は、カードゲームからマンガが生まれた
松本しげのぶさんの『デュエル・マスターズ』は、小学館「月刊コロコロコミック」で1999年5月号から2005年3月号まで連載されました。こちらは順序が逆で、先にあったトレーディングカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング」を題材にマンガが始まり、のちにタカラ(現タカラトミー)とウィザーズ・オブ・ザ・コーストが作った「デュエル・マスターズ」へと接続していきます。
小学生読者に向けて、カードの強さや駆け引きを絵と台詞で伝えるという役割をマンガが担いました。コロコロコミックはこの後もミニ四駆やベイゴマ、ヨーヨーといったホビーで同じ手法を繰り返しており、カードゲームはその系列の中でも特に息の長いジャンルになっています。
『ちはやふる』は、100枚の札を競技として描き切った
末次由紀さんの『ちはやふる』は、講談社「BE・LOVE」で2007年から2022年まで連載された競技かるたのマンガです。全50巻、累計発行部数は2700万部を超えています。広瀬すずさん主演で実写映画も3部作として作られました。
トレーディングカードゲームではありませんが、決められた札を相手より速く取るという意味では、これも間違いなくカードで戦う物語です。畳の上の格闘技と呼ばれる競技の緊張感を少女マンガの文法で描いたことで、それまで縁のなかった層まで競技かるたの存在が届きました。作品をきっかけにかるた部の入部者が増えたという話も各地で聞かれます。
『ONE PIECE』は、マンガからカードを生む流れをいまも続けている
尾田栄一郎さんの『ONE PIECE』は、連載25周年を記念して「ONE PIECEカードゲーム」を2022年7月8日に発売しました。スターターデッキ4種とブースターパックが同時に投入され、以降も定期的に新弾が出ています。
『遊☆戯☆王』が20年以上前に示した、マンガの人気がそのままカードの価値になるという構図は、いまも現役です。長期連載作品がカードゲームを立ち上げる例は近年も続いており、キャラクターの数と関係性の蓄積が、そのままカードの層の厚さに変換されていきます。
カードとマンガ、生まれた順番で並べてみる
どちらが先だったのかという視点で並べると、この30年の動きが見えやすくなります。
| No. | 作品(著者/掲載) | 連載期間 | カードとの関係 |
|---|---|---|---|
| 1 | 『遊☆戯☆王』(高橋和希/週刊少年ジャンプ) | 1996年42号〜2004年15号 | マンガが先。作中の架空カードが1999年に実商品化し、2011年に251億7000万枚でギネス記録を更新 |
| 2 | 『デュエル・マスターズ』(松本しげのぶ/月刊コロコロコミック) | 1999年5月号〜2005年3月号 | カードが先。マジック:ザ・ギャザリングを題材に始まり、同名カードゲームへ接続 |
| 3 | 『ちはやふる』(末次由紀/BE・LOVE) | 2007年〜2022年 | 競技かるた。全50巻、累計2700万部超。実写映画3部作も制作 |
| 4 | 『ONE PIECE』(尾田栄一郎/週刊少年ジャンプ) | 1997年〜連載中 | マンガが先。連載25周年を機に2022年7月8日「ONE PIECEカードゲーム」を発売 |
| 5 | 『ポケモン:ワイルドカード』(劇場アニメ) | 2027年公開 | カードが先。1996年発売・累計648億枚以上のポケモンカードを初めて映画の題材に |
648億枚のカードが、ようやく物語の主役になる
こうして並べると、『ポケモン:ワイルドカード』の位置づけがはっきりしてきます。ポケモンはこれまで、ゲームとTVアニメという二つの本流で物語を語ってきました。カードは長らく「そのキャラクターを使って遊ぶための商品」であって、物語の舞台ではなかったわけです。
その関係が今回ひっくり返ります。舞台はネオンの光る夜の街、主人公はポケモンカードプレイヤーのミキヤ。ゲームの旅でもアニメ本編の続きでもなく、カードを握って戦う人間の物語として作られようとしています。『遊☆戯☆王』が四半世紀前に切り開いた領域に、648億枚を刷ってきた側が満を持して入ってくるという構図です。
監督の北田勝彦さんが演出で参加した『THE FIRST SLAM DUNK』も、2027年3月20日から全国で上映されることが決まっています(再上映の広がりについてはこちら)。2027年は、スポーツとカードという別々の競技を描いた作品が同じ年にスクリーンへ並ぶ年になりそうです。
公開までの時間は、カードで戦う物語を読み直す時間になる
公開は2027年ですから、待ち時間はたっぷりあります。ポケモンの世界をマンガで追いたい方には、1997年から続く『ポケットモンスターSPECIAL』が最も長く読み応えのある選択肢になります。カードバトルそのものを味わいたいなら『遊☆戯☆王』、少年向けホビーマンガの熱量を浴びたいなら『デュエル・マスターズ』、競技としての張り詰めた空気を求めるなら『ちはやふる』という具合に、入り口はいくつもあります。
どれも巻数がまとまっていて、続きが気になる作りになっているのも共通点です。腰を据えて読み始めるには、公開までの1年余りはちょうどいい長さかもしれません。
親子連れが集まる場所に、何を置いておくか
施設を運営される立場から見ると、ポケモンの新作映画は数年に一度の大きな追い風です。カードゲームは小学生からその親世代まで競技人口が広く、映画をきっかけに家族で足を運ぶ動きが生まれます。待ち時間や休憩の時間をどう過ごしていただくかが、そのまま滞在時間の差になります。
マンガコーナーは、こうした幅広い年齢層を同時に受け止められる数少ない設備です。小学生には『デュエル・マスターズ』や『ポケットモンスターSPECIAL』のような入りやすい作品を、その親世代には連載当時に読んでいた『遊☆戯☆王』を、女性のお客様には『ちはやふる』をというように、同じ棚の中で世代ごとの入り口を用意できます。家族の誰か一人だけが暇を持て余すという状況を減らせるのが、この設備の強みです。
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