『THE FIRST SLAM DUNK』が2027年3月20日から全国上映へ、公開から4年たったアニメ映画が劇場に戻る動きが止まらない

映画『THE FIRST SLAM DUNK』が「THE FIRST SLAM DUNK 2027 in cinema」として、2027年3月20日から4月1日にかけて全国の映画館で上映されることが決まりました。8月29日に公式サイトで発表され、追って公式X(旧Twitter)でも伝えられたもので、「春。はじまりの季節に。あの夏がはじまる。」というフレーズとともに新しいビジュアルも公開されています。

劇場公開は2022年12月ですから、4年3か月ぶりの全国上映ということになります。配信でも円盤でも観られる作品が、なぜまた全国のスクリーンに並ぶのでしょうか。実はいま、公開から何年もたったアニメ映画が次々に劇場へ戻ってきています。

目次

4年間、ずっと劇場にいた『THE FIRST SLAM DUNK』

原作の『SLAM DUNK』は、集英社「週刊少年ジャンプ」の1990年42号から1996年27号まで連載された井上雄彦さんの少年マンガです。高校バスケットボールを題材に選手たちの人間的な成長を描き、世界累計発行部数は1億8500万部以上、世界30の国と地域で出版されています。連載当時はこの作品をきっかけにバスケを始める少年少女が続出し、1993年10月から1996年3月にかけてTVアニメも放送されました。

実は『SLAM DUNK』が劇場にかかるのは、今回で5度目の形になります。連載中の1994年3月12日に『スラムダンク』が公開されたのを皮切りに、同年7月9日に『スラムダンク 全国制覇だ! 桜木花道』、1995年3月4日に『スラムダンク 湘北最大の危機! 燃えろ桜木花道』、7月15日に『スラムダンク 吠えろバスケットマン魂!! 花道と流川の熱き夏』と、1年半で4作が続けて公開されました。

ただしこの4作はいずれも東映アニメフェアという枠での上映です。複数のアニメ映画をまとめて春休みや夏休みに公開する形式で、1本あたりの上映時間も短く設計されていました。人気作品が単独で全国のスクリーンを埋め、しかも4年にわたって上映を重ねるという今回のような形は、当時は想定されていなかった興行の姿です。

『THE FIRST SLAM DUNK』は、その原作者である井上さん自身が脚本と監督を手がけた映画化作品として2022年12月に公開されました。湘北の切り込み隊長を務めるポイントガード・宮城リョータを軸に、王者・山王工業との一戦を描いています。沖縄で生まれ育ったリョータには3つ上の兄がいて、地元で有名な選手だったその背中を追うようにバスケにのめり込んだ。そんなプロローグから物語は始まります。

公開後の歩みが、この作品はとりわけ独特でした。まず2023年8月までロングラン上映が続き、そのあとも復活上映が何度も組まれます。2024年8月13日からは全国300館以上での復活上映が実施され、この時点で累計動員1119万人、興行収入162億円を突破しました。最終的な累計興行収入は166.7億円に達しています。

直近では2026年8月29日と30日に、都立明治公園で無料の野外上映が行われたばかりでした(公園でアニメを上映する広がりについてはこちらの記事にまとめています)。そこから間を置かずに、2027年春の全国上映が発表されたことになります。上映劇場などの詳細は決まり次第発表されるとのことです。

公開から年月がたった映画が、次々に劇場へ戻っている

旧作の再上映そのものは昔からありましたが、ここ数年は規模も企画のつくり込みも明らかに変わってきました。全国300館規模でかけられる旧作が珍しくなくなり、上映フォーマットや記念年を理由に、作品が何度も劇場へ呼び戻されています。

ジブリ4作品の同時上映が見せた旧作の底力

2020年6月26日、スタジオジブリの4作品が全国372館で同時に再上映されました。新型コロナウイルスの影響で新作の公開が止まり、劇場にかける作品そのものが足りなくなっていた時期のことです。「一生に一度は、映画館でジブリを。」というコピーとともに始まったこの上映では、週末の興行収入ランキングの上位をジブリ作品が占めるという、それまでにない光景も生まれました。『千と千尋の神隠し』はこの再上映で約88億円を積み増し、累計興行収入が約316.8億円となって歴代1位の記録を更新しています。

新作の前に旧作を、『鬼滅の刃』が定着させた助走

2025年5月9日から5週間の期間限定で、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のリバイバル上映が行われました。通常版370館とIMAX版53館の合計423館という規模で、本編は4Kでリマスターされ、ドルビーアトモスとドルビーシネマ向けには新しくリミックスも施されています。2020年の公開から数えて初のリバイバル上映であり、同じ年の7月18日に公開された『無限城編 第一章』へ向けた助走という位置づけでした。新作の直前に前作を劇場でかけ直す運びは、いまでは大型シリーズの定番になりつつあります。

4KとIMAXが、旧作を新作のように見せる

2025年10月24日、『もののけ姫』の4Kデジタルリマスター版がIMAXの61館で公開されました。最初の3日間で10万8000人を動員し、興行収入2億4000万円を記録します。この反響を受けて11月7日からは全国171館へ拡大され、ドルビーシネマ10館と英語字幕版8館を含む2週間限定の上映が行われました。1997年公開の作品が、映像と音のフォーマットを入れ替えただけで新作並みの動員を見せた例です。

25周年という理由だけで、劇場に戻ってくる

2025年7月11日には、『劇場版カードキャプターさくら 封印されたカード』が全国56館で再上映されました。劇場公開25周年を記念した上映で、当時と同じように短編『ケロちゃんにおまかせ!』も併映されています。翌7月12日には東京・新宿ピカデリーで、木之本桜役の丹下桜さんと李小狼役のくまいもとこさんが登壇する記念舞台挨拶も開かれました。周年という区切りが、そのまま上映の理由になっています。

桜前線を追いかけて北上した上映

2024年には、新海誠さんの『秒速5センチメートル』が「桜前線上映」と題して再上映されました。桜の開花に合わせて上映地域を南から北へ動かしていくという形で、3月29日に西日本と南関東、4月12日に北関東と北海道という順に、全国106館での上映が予定されています。同じフィルムでも、いつどこでかけるかを設計すれば新しい体験になるという発想でした。

ここ数年に行われた主なリバイバル上映

規模と時期を並べてみると、旧作の上映が単発の企画ではなくなっていることがよく分かります。

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No.作品上映時期規模と内容
1『千と千尋の神隠し』ほかジブリ4作品2020年6月26日〜全国372館で同時上映。『千と千尋』は累計316.8億円となり歴代1位を更新
2『秒速5センチメートル』2024年3月29日〜桜前線に合わせて南から北へ。全国106館での上映を予定
3『THE FIRST SLAM DUNK』2024年8月13日〜全国300館以上で復活上映。累計動員1119万人、興収162億円を突破
4『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』2025年5月9日〜5週間423館。4Kリマスター。『無限城編 第一章』公開前の上映
5『劇場版カードキャプターさくら 封印されたカード』2025年7月11日〜全国56館。劇場公開25周年記念で短編も併映
6『もののけ姫』4Kデジタルリマスター2025年10月24日〜IMAX61館で先行し3日で2.4億円。11月7日から171館へ拡大
7『THE FIRST SLAM DUNK 2027 in cinema』2027年3月20日〜4月1日全国上映。上映劇場は決まり次第発表

劇場に戻る理由は、ひとつではない

並べてみると、再上映を後押ししている事情がいくつも重なっていることが見えてきます。ひとつはフォーマットです。4KリマスターやIMAX、ドルビーシネマといった仕様は自宅では再現しにくく、すでに何度も観た作品でも劇場へ足を運ぶ動機になります。『もののけ姫』が公開から28年を経てIMAXで数字を出したのは、その分かりやすい例でしょう。

もうひとつは新作との接続です。『鬼滅の刃』のように続編の直前に前作をかけ直せば、シリーズを追いかけている観客の熱を落とさずに新作へつなげられます。周年記念も同じで、25周年や30周年という区切りは、当時観ていた層に「いま観に行く理由」を渡してくれます。

三つ目に、体験の設計そのものが売り物になってきたことが挙げられます。『秒速5センチメートル』が桜前線に合わせて上映地域を北上させたように、いつ、どこで、どう観るかを組み立てれば、同じフィルムでも新しい企画になります。都立明治公園での野外上映も、この発想の延長線上にあるものでした。

そして根っこにあるのは、旧作が本当に人を集めるという実績が積み上がったことです。ジブリ4作品の同時上映が週末ランキングの上位を占め、『千と千尋の神隠し』が再上映で歴代1位の記録を塗り替えたあたりから、旧作は空いた枠を埋めるための番組ではなくなりました。『THE FIRST SLAM DUNK』が公開から4年たっても全国上映を組めるのは、この4年で積み上げた1100万人超という動員そのものが根拠になっているからです。

上映を待つ半年は、原作を読み返す時間になる

2027年3月20日までは、まだ半年以上あります。映画は宮城リョータを軸に山王工業戦を描いた作品ですから、原作の該当エピソードを読み返してから劇場へ行くと、同じ場面でも見え方が変わります。全31巻を通して読み直すのもいいですし、映画で描かれた最終盤だけを追いかけるのでも十分に楽しめます。

あわせて、井上雄彦さんが手がけた作品を続けて読むという道もあります。上映情報が出そろうまでの数か月は、そういう寄り道をするのにちょうどいい長さです。

スポーツマンガの棚は、男性のお客様の滞在時間を伸ばす

施設を運営される立場から見ると、話題作の再上映は集客の追い風になります。映画が公開されるたびに原作を読み返したくなる人が生まれ、その受け皿が近くにあれば、待ち時間や休憩の時間がそのまま滞在時間に変わるからです。

特にスポーツマンガは、男性のお客様が手に取りやすいジャンルとしてよく機能します。温浴施設やサウナ、ホテルのラウンジ、待合スペースのように、座って過ごす時間が生まれる場所であれば、バスケットボールや野球、サッカーといった競技ものを揃えておくだけで、滞在の質は変わってきます。1冊読み始めると次の巻に手が伸びるという性質も、長く座っていただくうえでは効いてきます。

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