「糖分のフリーレン」とファンが返した明治ミルクチョコ100周年イラスト、公式のネタがXで大喜利になるのはなぜ?
「明治ミルクチョコレート」の発売100周年を記念して、マンガ家40人が描き下ろしたお祝いイラストが2026年10月28日から明治のブランドサイトで公開されています。作品の公式Xや作家本人が次々にイラストを投稿するなか、とくに反応が集まったひとつが『葬送のフリーレン』でした。
描かれたのは、フリーレン、フェルン、シュタルクの3人が、チョコレートがぎっしり詰まった宝箱を囲んで板チョコを食べている姿です。アニメ!アニメ!の報道によると、ファンからは絶賛の声にまじって「糖分のフリーレン」という書き込みも寄せられ、Xで話題となりました。
作品名をひとひねりした一言が、なぜこれほど自然に出てきたのでしょうか。調べていくと、ファンの側に「〇〇のフリーレン」という型がすでに共有されていたことが見えてきます。公式が出したネタにファンが言葉を足して楽しむ、いわばXでの大喜利です。この現象を、フリーレンの例とほかのマンガの例から読み解きます。展覧会の会期や参加作家の一覧は、こちらの記事にまとめています。
宝箱いっぱいのチョコに、ファンが「糖分のフリーレン」と返した理由
明治のブランドサイトに並ぶフリーレンのイラストでは、3人が宝箱から取り出したチョコを手にしています。報道で紹介されたコメントを見ると、宝箱いっぱいのチョコを見て、フリーレンがへそくりで買い占めたのではないかと想像する声や、箱の中身を数えるような書き込みが並んでいます。
この宝箱には、作品を知る人ならすぐに思い当たる意味があります。作中のフリーレンは宝箱を見つけると開けずにいられず、宝箱に化けた魔物「ミミック」に頭からかじられてしまいます。ABEMA TIMESはこの場面を、ファンの間で“鉄板芸”とも呼ばれるお約束として何度も取り上げてきました。
つまり明治のイラストは、チョコを食べる穏やかな場面でありながら、ファンが知っているお約束を思い出させる絵になっていました。そこに「葬送」を「糖分」に入れかえた一言が重なったわけです。「〇〇のフリーレン」の〇〇を差しかえる遊びは、実はファンより先に公式アカウントが続けてきたものでした。
「〇〇のフリーレン」は公式が育ててきたお題
アニメ『葬送のフリーレン』の公式X(@FRIEREN_PR)は、告知や季節の投稿に、作品名をもじった一言を添えることがよくあります。過去の投稿を順にたどると、ファンが同じ型で返せるようになるまでの流れがよくわかります。
2023年秋、ハロウィンにミミックを持ちこむ
第1期の放送中だった2023年10月末、公式Xはミミックにかじられるフリーレンの場面をハロウィンのネタとして投稿しました。ABEMA TIMESによると、ファンからは「お約束すぎる」と笑う声が相次ぎました。作中のお約束を公式が自分から笑いに変えたことで、ミミックは作品を代表するネタとして定着していきます。
2025年3月、「速報のフリーレン」で第2期を告知
2025年3月5日、公式Xは「速報のフリーレン」という一言とともに、フリーレンのぬいぐるみが教卓に座る写真を投稿しました。黒板には第2期が2026年1月から放送されるという知らせが書かれていました。待ちに待った発表を、作品名のもじりで伝えたかたちです。
2026年、応援イラストから「平成のフリーレン」「剛昌のフリーレン」
第2期の放送が始まった2026年1月からは、公式Xでほかのマンガ家による応援イラストの公開が続きました。リアルサウンドの記事によると、『ぷにるはかわいいスライム』のまえだくんさんは、平成の女の子のような服を着たフリーレンを「平成のフリーレン」として描いています。描き手の側も、作品名のもじりをイラストの題にしていたわけです。
6月には、『名探偵コナン』の青山剛昌さんによる直筆色紙の写真が、「剛昌のフリーレン」という一言を添えて改めて投稿されました。ABEMA TIMESは、この言葉に「語呂良すぎる」という反響が集まったと伝えています。人の名前まで「〇〇のフリーレン」に収まることで、この型がどんな言葉でも受け止められることがはっきりしました。
2026年夏から秋、「収納のフリーレン」と「早々のハローウィン」
2026年7月には、大きく口を開けたミミックの中に、フリーレンのぬいぐるみがすっぽり収まった写真が「収納のフリーレン」として投稿されました。作中の「暗いよー!! 怖いよー!!」というセリフの吹き出しが添えられているのに、ぬいぐるみの表情はくつろいで見えるという、ちぐはぐさも笑いを誘いました。
10月30日には、かぼちゃ風の衣装を着たぬいぐるみの写真が「早々のハローウィン」として投稿されています。ここでは「葬送」を同じ読みの「早々」に、「フリーレン」を「ハローウィン」に変えて、前後の両方をもじっています。明治のイラストはその直前に公開されたもので、ファンが「糖分のフリーレン」と書きこんだのも、公式が何度も出してきたお題に答えたものと読めます。
フリーレンはお菓子や食べ物との組み合わせでも話題になってきました。コラボカフェで登場した杖のチュロスについては、こちらの記事で取り上げています。
公式が出したネタにファンが乗った、マンガまわりの例
公式が笑いの土台をつくり、受け手がそこに言葉を足して広げていく形は、フリーレンだけのものではありません。マンガの展覧会、お菓子メーカー、テーマパーク、動画番組と、仕掛ける側を変えながら同じ形が見られます。
2015年『NARUTO』展×吉本興業の大喜利ポスター
2015年7月から大阪で開かれた「連載完結記念 岸本斉史 NARUTO−ナルト−展」の告知として、JR大阪駅に名場面のセリフを差しかえたポスターが並びました。吉本興業とのコラボ企画で、若手芸人3組がシリアスな場面に思いもよらない一言をあてた大喜利です。Jタウンネットによると、ネットでは公式がつくった“コラ画像”として大きな話題になりました。
ファンが勝手にやれば作品を傷つけかねない遊びを、公式が自分たちの手で、展覧会の宣伝として出してみせた例です。マンガの名場面を大喜利のお題にする発想は、10年以上前からあったことがわかります。
2019年 明治「きのこの山・たけのこの里 国民総選挙」
今回の主役である明治も、ファンが乗れるお題を長く育ててきた会社です。どちらのお菓子が好きかで議論になる「きのこ・たけのこ」の話題を、明治は国民総選挙という企画に仕立てました。2019年の国民総選挙では投票数が1,058万7,785票にのぼり、きのこ党が初めて勝利したと発表されています。
100周年のイラストでも、この話題に乗る反応が出ていました。アニメ!アニメ!の記事では、神尾葉子さんの『花より男子』のイラストに、道明寺はきのこ派なのかと読みとる声が紹介されています。マンガのキャラクターと、明治が育ててきたお菓子の話題が、ファンの頭の中でつながったわけです。
2026年 USJの「チェンソーまん」
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、2026年9月11日から11月8日まで開かれる「ハロウィーン・ホラー・ナイト」で、『チェンソーマン』のアトラクションに合わせたフード「チェンソーまん」が登場しました。作品名の「マン」を中華まんの「まん」に置きかえた名前で、アニメ!アニメ!も見出しで大きく取り上げています。メニュー名そのものが、ファンが口に出したくなるダジャレになっている例です。
2026年 マンガ家が絵だけで答える『週刊マンギリ』
2026年10月2日には、プロのマンガ家が大喜利のお題に絵だけで答えるYouTube番組『週刊マンギリ』の配信が始まりました。番組名はマンガと大喜利を組み合わせたもので、第1回には『ROOKIES』の森田まさのりさんら3人が出演しています。セリフや説明文は書かず、絵と「ドーン」のような擬音だけで笑わせるのがルールです。
ファンがマンガを使って大喜利をするだけでなく、描き手のほうが大喜利の場に出てくる流れも生まれています。マンガの絵そのものが、笑いのお題にも答えにもなる素材だということがよく表れています。
公式ネタがXで大喜利になった例の一覧
ここまでの例を、時期の順に並べます。
| No. | 時期 | 作品・企画 | 公式が出したネタ | 受け手の反応 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2015年7月 | 『NARUTO』展×吉本興業 | 名場面のセリフを差しかえた大喜利ポスター | 公式の“コラ画像”として話題に |
| 2 | 2019年 | 明治「きのこの山・たけのこの里 国民総選挙2019」 | 2つのお菓子で派閥をつくる投票企画 | 投票数1,058万7,785票 |
| 3 | 2023年10月 | 『葬送のフリーレン』公式X | ミミックの場面をハロウィンのネタに | 「お約束すぎる」と笑いに |
| 4 | 2025年3月 | 『葬送のフリーレン』公式X | 「速報のフリーレン」で第2期を告知 | 喜びと待ちきれない声 |
| 5 | 2026年1〜6月 | 『葬送のフリーレン』応援イラスト | 「平成のフリーレン」「剛昌のフリーレン」 | 「語呂良すぎる」と反響 |
| 6 | 2026年7月 | 『葬送のフリーレン』公式X | 「収納のフリーレン」 | くつろぐぬいぐるみが話題に |
| 7 | 2026年9月 | USJ×『チェンソーマン』 | フード名「チェンソーまん」 | 作品名のダジャレとして注目 |
| 8 | 2026年10月 | YouTube『週刊マンギリ』 | マンガ家が絵だけで大喜利に答える | 描き手が大喜利の場へ |
| 9 | 2026年10月 | 明治ミルクチョコレート100周年×『葬送のフリーレン』 | 宝箱いっぱいのチョコを囲む3人のイラスト | 「糖分のフリーレン」がXで話題に |
公式のネタが大喜利になるための3つの条件
並べてみると、ファンが乗ってくる公式ネタにはいくつか共通点があります。ひとつめは、型がシンプルなことです。「〇〇のフリーレン」は、前の2文字を入れかえるだけで誰でも参加できます。「チェンソーまん」も、カタカナをひらがなに変えただけの一文字違いです。入口が低いほど、受け手は気軽に自分の答えを出せます。
ふたつめは、作品の中にみんなが知っているお約束があることです。ミミックにかじられるフリーレンや、NARUTOのシリアスな名場面のように、元ネタを知る人どうしで同じ絵を思い浮かべられるから、ずらした一言が笑いになります。明治のイラストで宝箱が効いたのも、ファンがこのお約束を共有していたからでした。
みっつめは、公式が自分の作品の文脈を守ったうえでネタにしていることです。明治のイラストは作家本人が描き下ろしたもので、フリーレンの宝箱も作品の持ち味を踏まえた演出でした。反対に、2026年1月には弁当チェーンのほっかほっか亭の公式Xが、マンガの一場面を使ったユーザーの投稿を、場面の背景を知らないまま引用して謝罪しています。J-CASTニュースによると、同情する声も多く集まりましたが、公式がマンガ由来のネタを扱うときには、元の作品をよく知っていることが前提になると示した出来事でした。
公式が作品を大切に扱ったうえで余白のあるネタを出し、ファンがそこに一言を足していく。明治のイラストに寄せられた「糖分のフリーレン」は、この関係がうまく回っているときに生まれる反応だといえそうです。
元ネタを知ってから、もう一度イラストを見てみる
明治のブランドサイトでは、40人のお祝いイラストとメッセージを見ることができます。フリーレンの宝箱のように、作品を読んでいるかどうかで見え方が変わる絵はほかにもありそうです。気になったイラストがあれば、元の作品を読んでから見返すと、ファンがどこに反応していたのかがよくわかります。
12月には東京国際フォーラムで「明治ミルクチョコレート100周年展」も開かれます。それまでにフリーレンのミミックの場面を読み返しておけば、宝箱のイラストの前で思わず笑ってしまうかもしれません。
元ネタがわかる棚が、お客様どうしの会話をひとつ増やす
Xで大喜利が盛り上がるのは、元ネタを知っている人どうしが同じ絵を思い浮かべられるからでした。これは、施設のマンガコーナーでも同じです。話題になっている作品が手に取れる場所にあると、「これがあのミミックの話か」と、ネットで見た話題と作品が結びつき、一緒に来た人との会話が生まれます。
温浴施設やホテル、カフェのマンガコーナーで、いまXで話題になっている作品をそろえておくことは、お客様の滞在に小さな楽しみを足すことにつながります。スマートコミックは、話題に合わせた選書から定期的な入れ替えまでをまとめてお手伝いしています。棚づくりをお考えの際は、料金表・事例資料をご覧ください。

