横浜みなとみらいの花火は何の曲で上がっていた? 45分1万8,000発の全曲リストで確かめたら、アニメ主題歌は0曲でもマンガ生まれの曲が3曲あった

2026年8月24日(月)、横浜のみなとみらい21地区で「横浜グリーンエクスポ応援 みなとみらいフェスティバル」が開かれました。大トリを飾ったのは、45分間に約1万8,000発を打ち上げる音楽花火「スカイシンフォニー in ヨコハマ presented by コロワイド」です。全編にわたって音楽と花火が同期する演出が特徴で、テレビ朝日の報道によると10万人以上の観客が夜空を見上げました。

この大会は2025年8月4日の開催中に打ち上げ台船で火災が起き、途中で中止となった経緯があります。2026年は第三者委員会の提言を受け、打ち上げ筒のステンレス化や台船の増設、発数の削減といった安全対策を講じたうえで、例年の8月第1月曜から準備期間を確保した8月24日に日程を移しました。2023年から2025年までは25分間で約2万発でしたが、今年は45分間で約1万8,000発と、ゆとりのある構成に変わっています。

正直に言うと、筆者はここ数年、花火大会から足が遠のいていました。だから今回、45分の打ち上げのあいだずっと音楽が流れていたと聞いて、まず素朴に驚いたのです。花火に曲がつくのは、いまでは当たり前のことなのでしょうか。流れたのは嵐やMrs. GREEN APPLEをはじめ誰もが知る人気曲ばかりで、会場にいた多くの人は聴けばすぐに分かったはずです。ただ、書籍の卸売を本業とする私たちには、つい職業柄気になってしまうことがあります。全16曲のうち、マンガやアニメから生まれた曲はどれくらいあったのか。音楽花火の現在地と、当日の全曲の中身を順に確かめていきます。

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そもそも「音楽花火」はいつから、どれくらい広まったのか

花火の点火は1980年代半ばに電気点火が主流になり、コンピュータで打ち上げの順番と時間を制御できるようになりました。愛知県岡崎市の磯谷煙火店は1989年にコンピュータ制御の点火器を開発し、1991年に花火と音楽を同期させた「メロディー花火」を生み出しています。東京の日本橋丸玉屋も1994年に米国製の花火専用コンピュータを導入し、日本で初めて花火と音楽が同期するショーを演出したと自社の沿革に記しています。

日本経済新聞が2010年に丸玉屋を取材した記事によると、制御システムは30分の1秒の単位で打ち上げを管理し、1台のコントローラーで最大2,047本の筒を扱えるとのことでした。曲のサビやリズムに花火の開く瞬間を合わせる「音ハメ」は、この技術があって初めて成り立ちます。みなとみらいの花火を打ち上げているのも、この丸玉屋です。

音楽花火が全国に広がった象徴的な出来事が、2005年に始まった長岡まつり大花火大会の「復興祈願花火フェニックス」です。平原綾香さんの「Jupiter」に合わせて幅2kmにわたって花火が上がるこのプログラムは、以後の大会に大きな影響を与えました。2025年には、伝統ある諏訪湖祭湖上花火大会が競技部門に「音楽スターマイン」を初めて導入しています。

では、全国の花火大会のうちどれくらいが音楽花火を採用しているのでしょうか。公式な統計は見当たりませんが、手がかりはあります。ウォーカープラスが掲載する花火大会は全国で約900大会。花火情報サイトのジョルダンで2026年の大会を「音楽」で検索すると100件がヒットし、イープラスの花火サイトでは「音楽×花火コラボあり」のタグが付いた大会が累計で336件あります。長岡、大曲、ふくろい遠州、真駒内、幕張といった大規模大会ではほぼ定着している一方、地方の小規模な大会まで含めればまだ多数派ではない、というのが現在地です。

2026年のみなとみらい、流れた全16曲を確かめた

主催者はセットリストを公表していないため、来場者が公開した全編の記録動画2本の曲目を突き合わせ、Xの投稿とも整合することを確認した曲目です。公式発表ではない点をお断りしたうえで、16曲を順に並べます。クレーンを使った仕掛け花火のパートは、どの記録でも曲名が特定されていません。

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No.曲名アーティスト由来・タイアップ
1He’s a PirateKlaus Badelt映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』テーマ(オープニング)
2Jump(Armin van Buuren Remix)Van Halen協賛社の文字花火パート
3DNA (More Than A Game)Andrea Bocelli, David Guetta ほかFIFAワールドカップ2026公式アンセム
4Such a NightMichael Bublé
5My Sails Are SetSonya Belousova & Giona Ostinelli feat. AURORANetflix実写ドラマ『ONE PIECE』ナミのテーマ(原作マンガあり)
6風と町Mrs. GREEN APPLENHK連続テレビ小説『風、薫る』主題歌
7みんなのうたサザンオールスターズ
8frostline角野隼斗フィギュアスケート鍵山優真選手のエキシビション曲
9烏 – Raven米津玄師NHKサッカーテーマ
10Wasted NightsONE OK ROCK実写映画『キングダム』主題歌(原作マンガあり)
11(曲名未特定)クレーン仕掛け花火パート
12One Love映画『花より男子F』主題歌(原作マンガあり)
13Heal the WorldMichael Jackson
14A Question of HonourSarah Brightmanテレビ朝日サッカー中継テーマ
15A World of ImaginationPhilippe Briand & Gabriel Saban
16World In UnionKatherine Jenkinsラグビーワールドカップ公式テーマ(フィナーレ)

アニメ主題歌は0曲、それでもマンガ生まれの曲が3曲あった

16曲を眺めてまず目につくのは、スポーツの曲の多さです。ワールドカップの公式アンセム、NHKとテレビ朝日のサッカーテーマ、ラグビーワールドカップのテーマ、フィギュアスケートのエキシビション曲と、5曲がスポーツにまつわる曲でした。2026年はワールドカップとミラノ・コルティナ冬季五輪の年であり、横浜は2002年のワールドカップ決勝が行われた街でもあります。ウォーカープラスの取材に演出担当のクリエイティブディレクターが「さっきも同じような花火を見た、と思われないように工夫している」と語っていたとおり、その年の空気を選曲で映す構成です。

一方で、TVアニメや劇場アニメの主題歌は1曲もありませんでした。ただし、原作がマンガである作品の曲は3曲あります。Netflixの実写ドラマ『ONE PIECE』でナミのテーマとして使われたAURORAの「My Sails Are Set」、実写映画『キングダム』の主題歌であるONE OK ROCKの「Wasted Nights」、そして映画『花より男子F』の主題歌だった嵐の「One Love」です。嵐の曲では夜空にメンバーカラーの5色が並び、Xでもっとも多く投稿された場面になりました。

3曲に共通するのは、いずれもアニメではなく実写化作品の曲であること、そして原作がすべて集英社のマンガであることです。『ONE PIECE』は週刊少年ジャンプ、『キングダム』は週刊ヤングジャンプ、『花より男子』はマーガレット。掲載誌も読者層も異なる3作が、実写という入口を経て同じ夜空に並んだことになります。

2023年から2025年は、毎年「その年のアニメ曲」が入っていた

アニメ主題歌が0曲だった2026年は、実はこの大会としては珍しい年です。過去3年の記録をさかのぼると、毎年その年を代表するアニメ主題歌が必ず1曲以上使われていました。

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No.開催年使われたアニメ・マンガ由来の曲作品(原作)
12023年アイドル/YOASOBITVアニメ『【推しの子】』OP(赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社)
22024年Bling-Bang-Bang-Born/Creepy NutsTVアニメ『マッシュル-MASHLE-』第2期OP(甲本一/集英社)
32025年オトノケ/Creepy Nuts、Lilac/Mrs. GREEN APPLETVアニメ『ダンダダン』OP(龍幸伸/集英社)、TVアニメ『忘却バッテリー』OP(みかわ絵子/集英社)
42026年My Sails Are Set、Wasted Nights、One Love実写『ONE PIECE』『キングダム』『花より男子F』(いずれも集英社原作。アニメ主題歌は0曲)

これはみなとみらいに限った傾向ではありません。花火鑑賞士のやた香歩里さんは2024年の記事で、花火大会の選曲には年ごとの流行があると指摘しています。2019年はクイーンと「パプリカ」、2020年から2021年は『鬼滅の刃』の関連曲、2022年は『鬼滅の刃』遊郭編の「残響散歌」と『ONE PIECE FILM RED』の「新時代」、2023年は「唱」と「アイドル」、2024年は「Bling-Bang-Bang-Born」が各地の大会を席巻したといいます。

つまりここ数年、全国の花火大会で「その年の曲」の座を占めてきたのは、アニメの主題歌でした。アニメが国民的なヒット曲を生み、その曲が花火のリズムを決め、10万人が同時に聴く。マンガから始まった物語が、夏の夜空の演出にまで届いている構図です。2026年のみなとみらいでアニメ曲が姿を消したのは、大会がスポーツの年に舵を切ったからで、アニメ曲の勢いが落ちたからではないと見るのが自然でしょう。

アニメの曲だけで打ち上がる花火大会も生まれている

流行曲として使われるだけでなく、アニメやマンガの作品そのものを主役にした花火イベントも増えています。2022年9月には富士急ハイランドで「鬼滅の刃 花火の響宴」が開かれ、名場面を花火と音楽、レーザーで再現しました。2023年10月には横浜の山下ふ頭で『ONE PIECE FILM RED』の劇中歌に合わせた1万3,000発の花火が予定されましたが、運営側の資材調達ができず直前に中止となっています。

2025年からは、1970年代から90年代の名作アニメ18作品の主題歌29曲と花火を同期させた「アニメクラシックス アニソン花火」が山梨、大阪、北九州で開かれ、2026年5月には岡崎でも開催されました。ディズニー楽曲だけで構成する「Disney Music & Fireworks」も2023年から全国を巡っています。2026年8月の長岡まつり大花火大会では、長岡の花火を舞台にしたアニメ映画『君と花火と約束と』の主題歌に合わせたミュージックスターマインが上がりました。

横浜でも、2026年4月と6月に劇場版『名探偵コナン』と組んだ「横浜ナイトフラワーズ」で蝶ネクタイや眼鏡の形の花火が上がり、7月には『映画ちいかわ』とのコラボ花火が予定されていました(大雨警報で中止)。音楽花火の技術が花火を「物語を語る装置」に変えたことで、マンガとアニメは花火大会にとって、いちばん語りやすい題材になっています。

花火で聴いた曲の、その先の物語を原作で

2026年のみなとみらいで流れた3曲は、いずれも原作マンガが刊行中または完結済みで、花火の余韻のまま読み始められます。『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)はNetflixの実写版が原作の東の海編を描いており、AURORAの歌が流れた場面の元になったナミの過去は原作の8巻から9巻にあたります。『キングダム』(原泰久/集英社)は映画が描いた序盤をはるかに越えて連載が続いており、『花より男子』(神尾葉子/集英社)は全37巻で完結しています。

2023年から2025年にみなとみらいの夜空を彩ったアニメの原作も、あわせてまとめました。

ONE PIECEや名探偵コナンについては、こちらの記事でも取り上げています。

花火大会の帰り道に、夏の夜をもう少し過ごせる場所を

花火大会は、10万人が同じ曲を聴いて同じ空を見上げる、年に一度の体験です。ただ、帝国データバンクの2026年の調査によると、動員10万人以上の主要106大会のうち84大会が有料席を設け、5大会が中止を決めました。警備費や火薬の高騰で、花火を「無料で気軽に」楽しめる機会は少しずつ減っています。

だからこそ、花火大会の前後の時間を受け止める場所に価値が出てきます。会場近くの温浴施設やホテル、飲食店、ネットカフェに、その夜に流れた曲の原作マンガが並んでいたらどうでしょうか。『ONE PIECE』の曲で盛り上がった帰り道に、ナミの過去を原作で読み返す。そんな過ごし方ができる施設は、花火の余韻ごとお客様を迎えることになります。夏の花火に限らず、アニメの主題歌が街で流れるたびに、原作の棚は「続きを読む場所」として働きます。

スマートコミックは、施設向けにマンガコーナーを設置するコミックレンタルサービスです。地域のイベントや季節の話題に合わせた作品のご相談にも対応していますので、夏の夜の滞在づくりをお考えでしたら、お気軽にお問い合わせください。

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