魔物たちの住宅事情を次々解決! 孤独な少女と魔物建築士一行のリフォーム・アドベンチャー『ソアラと魔物の家』

みなさんは、どんな家に住みたいですか? 「一戸建ての2階建てがいいな」「庭はどれくらいの広さがいいかな?」のように、先々住む家を想像するのはなかなか楽しいものです。
とはいえ、実際に住む家を作るとなると、いろいろと大変。子ども部屋をどうするか、親の介護に備えて段差をなくしたり手すりを付けたりもするべきか……などなど、考えることがたくさんあり、実際、家を建てたりリフォームしたりする場合は、その道のプロの助けが必須です。
今回は、魔物たちの世界における家作りのプロたちを描いた『ソアラと魔物の家』をご紹介します。
孤独な少女ソアラと魔界建築士たちの冒険が始まる
舞台は人と魔物が争う世界。孤児の少女ソアラは軍に拾われ、魔物狩りの兵士になるべく鍛えられます。
しかし、ソアラが初陣を迎えたその日に、なんと、魔物たちが休戦を希望。突如戦いが終わってしまいました。
自由になったソアラですが住む家もなければ、家族も友人もいない。行くあてもなくさまよう彼女が出会ったのは、3人のドワーフたち。魔界建築士キリクとその仲間でした。
彼らがゴブリンたちの住処を快適なものにリフォームさせていくのを目の当たりにしたソアラ。成り行きでその仕事を手伝ってしまい、「役に立つ」と認めたキリクの誘いで、彼らの旅に同行することになるのです。
魔物たちの住宅事情はなかなか大変
魔物とは、多種多様な生き物たち。大きな巨人に小さな種族、空を飛ぶ者や動きの素早い者など、その属性や能力はさまざまです。
それだけに彼らの住宅事情も千差万別。しかし、天才魔界建築士・キリクは魔物たちの希望や悩みを理解して、それを解消する住居を見事に作り上げていきます。
ゴミだらけの洞窟に住んでいたゴブリンたちのためのゴミを食べてくれる食虫植物が付着した床の家、移動の遅いスライムが楽に移動できる装置付きハウス、さらには、異種族結婚をした魔物たちが共存できる家など、行く先々でキリクたちが素材や道具を駆使するリフォームぶりは、まさに絶妙。
完成した家の詳細な見取り図や仕掛けを見て、その仕事の優秀さ、ひいてはこの作品を作り上げている描き手のイマジネ―ションの豊かさに唸ってしまいます。
漫画やゲームでよく目にするモンスターたちが、その特性上こういう家を必要としているのか……というのがよくわかる点でも、ファンタジー好きな人には非常に興味深い作品といえるでしょう。
旅の中でソアラが見つけていくものとは……?
魔物といえば、じめじめした洞窟やおぞましい魔王城などに住むイメージです。しかし、この作品では魔物たちが人間の住む家がいかに素晴らしいかを知り、自分たちも快適な住まいがほしいと望むようになっています。
そして物語の中で、魔物たち以上に住まいの価値を学んでいくのは、主人公のソアラです。
彼女は人間ではありますが天涯孤独、幼い頃から兵士になるべく過酷な訓練を受けてきて、心地よい暮らしとは無縁でした。だからこそ、キリクたちと旅を通してソアラは初めて家とは単なる寝床ではないのだと知ります。そして、魔物たちの家作りを手伝いながら自分の力が役に立ち、誰かのために何かをしてあげられるうれしさをも実感していくのです。
今、この記事を書いている時点でコミックス3巻まで刊行中。今後の展開で、ソアラたちにピンチが訪れたり、キリクの過去が明かされていったりすることが示唆されています。今後、よりスリルあり涙ありのアドベンチャー的展開が期待でき、まだまだ続きが見逃せない作品です。