8月11日は「山の日」。登山に興味が湧く漫画3選

8月11日が山の日になったのは?
8月11日は山の日。なぜこの日が山の日になったのか、ご存じの方はいるでしょうか。
個人的に「歴史的な山に関する祭や出来事でもあったんだろうなあ」と思っていました。しかし、そうした事実は皆無。まず「山の日を作ろう」として、日本山岳会や日本山岳協会、日本山岳ガイド協会などの関係団体が企画を立ち上げます。そして2013年に党派を超えた「『山の日』制定議員連盟」が発足。関係者や議員が持ち寄ったいくつかの候補日の中から、お盆に近いことで連休になりやすい8月11日に決められたそうです。
なお、当初は翌8月12日が有力だったものの、1985年8月12日、群馬県にある御巣鷹山に日航機123便が墜落した事故があったことから、その日を祝日にするのが避けられたとのこと。
ともあれ山の日が決まったことで、8月11日を中心として、各地で関連イベントが行われています。詳しくは、公益財団法人「全国山の日協議会」サイトをご覧ください。
こうした山の日に関連したイベントが夏休みやお盆前後に行われることもあり、町からほど近い場所にあって初級者から親しめる低山から、しっかりした装備を整えた上級者が挑む高山、そして日本最高峰である富士山まで、山の魅力にとりこになった多くの登山ファンによって賑わいをみせています。あふれる動植物などの自然環境に囲まれることで、心身のリフレッシュにつながり、新たな日常に戻った時の心の支えになると思います。
ただし、こうして登山者が増えることで問題になっているのが軽装登山です。軽装と言うよりも普段着で山に挑んだあげく、遭難して大騒ぎになって…が一連の流れ。山に登る行為は、都心近郊にある低山でも非日常的な行為と考えるべきでしょう。
それら登山をテーマにした漫画は、数多く描かれてきました。そこで今回は山を全く知らない人でも登山に興味が湧くと思われる3つの漫画を紹介します。
登山に興味が湧く漫画3選
■『イカロスの山』(塀内夏子/2005〜2007年)
2005年、中国とロシア国境に新たな8000メートル級の山が見つかった、という架空設定から話が始まる本作。最初の登頂者には山に名前を付ける権利が与えられると発表されたことから、世界各国の登山家が目の色を変えて初登頂を目指します。もちろん日本からも挑戦者が現れ、かつて学生時代にパートナーを組んだ2人が、紆余曲折を経て登頂パーティーに加わることになります。
衛星写真の分析が進み、ドローンの発達が加わったこともあり、地上における人跡未踏の地は大きく減ったと言っても良いでしょう。その直前の年代を舞台に設定したことで、本作は興味深い展開を描いています。
学生時代に各地の山で名コンビだった2人が、卒業後は別の進路を進み、再度道を同じくするまでの流れも重厚感が感じられます。最終的には予想できるラストを迎えるのですが、ギリギリまで他国の登山パーティーと競り合いとなる展開からは目が離せないものがあります。
■『高尾の天狗と脱・ハイヒール』(氷堂涼二/2015〜2018年)
三十路のOL、御岳ノリコが主人公。わがままが原因で彼氏に振られたノリコが、勢いのままハイヒールで高尾山に登り、高尾山を根城にする子天狗に出会ったことから物語は始まります。最初は初心者向けの高尾山コースですら歩き慣れていなかったノリコですが、週末ごとに高尾山に向かい、いろんな経験を重ねていく中で山歩きに習熟しつつ、人としても大きく成長する姿を描いています。
今回紹介する他の2作と異なり、グッと身近な登山がテーマです。高尾山は、関東近郊から電車で1時間足らずの距離にあることから、日本はもちろん世界でも有数の登山客(年間250万〜300万人)を集めています。ただし、その分トラブルも多いのも事実。
本作の主人公は無謀なハイヒールを脱いで装備を整えるところから始めているため、初心者が参考になる面も多そうです。高尾山の常連となったノリコが、半日がかりとなる縦走コースも踏破するまでに成長するのは、見事と言うべきでしょう。続編の「高尾の天狗とミドリの平日」もあわせてどうぞ。
■『山を渡る-三多摩大岳部録-』(空木哲生/2018〜2025年)
長年の伝統と実績を誇る三多摩大学の山岳部。しかし部員の減少により、廃部の危機に晒されていました。そんな山岳部の扉を叩いた新入生3人は、登山の経験が無いどころか運動そのものが苦手な女子ばかりでした。それでも新入部員の定着を目指す上級生達は、優しい指導に山の厳しさを織り交ぜつつ、3人に登山の面白さを伝えていきます。
かつては各地の登山における有力団体のひとつだった大学の山岳部ですが、厳しい活動内容が時代にそぐわなくなったためか、多くの大学で部員の減少に至っています。そんな山岳部に興味を持った3人の新入生女子はそれぞれ異なった動機や目的を抱えていました。それでも山岳部の先輩に導かれて道具に馴染み、体験を聞かされ、実際に山へと登っているうちに、3人それぞれが山を歩く目的を見いだしていきます。
連載の最後には日本でも指折りの高山のひとつである剱岳(つるぎだけ)に挑むのですが、登山歴1年足らずの彼女達が、それぞれの思いを抱えて山に登っていく様子はわくわくさせられます。
3つの漫画で学べるポイント
奥深い山中であふれる大自然に囲まれるか、それとも険しい山に登ることで自分の体力の限界を確かめるか、パーティーを組んだりすれ違ったりする他の登山家との交流を楽しむか、もしくはそれらの全てを楽しむか。登山の魅力には様々なものがあります。それと同時に山に登ることは非日常的な行動であり、近場の低い山であっても十分に装備を整え、いろんな状況を踏まえた上で登山に挑むことを覚えておいて欲しいです。
一流の登山家達の活躍を描いた『イカロスの山』。作者である塀内夏子先生は、高校の頃にワンダーフォーゲル部で活動したほか、漫画家として活動しながら、およそ5年かけて日本百名山を制覇した登山家としての経験の持ち主でもあります。作中には、ベテランの登山家でも大けがを負ったり、命を落としたりすることのある山の厳しさとともに、登頂を達成した登山家達が感動にうち震える様子が克明に描かれています。この辺りは塀内先生の経験が活かされているのでしょう。
その対極とも言えそうな登山を描いたのが『高尾の天狗と脱・ハイヒール』です。山腹までながらケーブルカーやリフトがあり、毎年夏にはビアガーデンを開催しているので、山頂まででなくとも登ったことがあるネットユーザーもいるでしょう。それでも登山は登山。それなりの装備は必須です。警察庁や八王子消防署の発表によると、高尾山では毎年100件前後の事故や遭難が発生しているとあります。そこに加わることの無いように、ノリコ同様の装備を整えて欲しいものです。
この2作の中間にありそうな作品が『山を渡る-三多摩大岳部録-』です。登山が未経験の主人公としては『高尾の天狗と脱・ハイヒール』のノリコと同じ。ただし、ノリコが高尾山に集中して登山に取り組む一方、三多摩大学の山岳部で先輩達から導かれた新入生の3人は、全国各地のいろんな山に取り組んで行きます。経験を積み重ねた3人の初心者は、まさに三者三様の反応をみせているので、どこか惹かれる読者も多いのではないでしょうか。惜しくも完結してしまいましたが、1年で大きく成長した3人であれば『イカロスの山』のように、世界を股にかける登山家になったかもしれませんね。
まとめ – 登ってから読む? 読んでから登る?
スポーツだったり音楽だったり、「漫画を読んで〇〇をやってみた」のような人も多いでしょう。『イカロスの山』では、雄大な山々の自然とそれに挑む登山家が描かれ、『山を渡る-三多摩大岳部録-』では初心者が熟達していく様子が観察でき、『高尾の天狗と脱・ハイヒール』では東京を始め関東近県に住む人には最も馴染み深い高尾山の四季とりどりの変化が楽しめます。
こうした登山漫画を読んで登山に興味をもったのであれば、まずは街歩きやジョギングなどで体力を確かめたのち、近隣の山歩きから始めてみてはいかがでしょうか。しっかりと準備をしたうえであれば、充分な満足感が得られると思います。
(執筆: 県田勢)
