2025年7月のたつき諒予言を“デマ”で終わらせないために|防災・サバイバル知識を学べる漫画3選

世界を動かした1冊の“予言書”
2025年7月5日、大災難が日本を襲う――そんなウワサが国内外に広がっていました。発端はたつき諒氏が見たという夢の内容を記した漫画『私が見た未来 完全版』。
気象庁をはじめ多くの専門家たちは科学的根拠がないデマだと否定的な見解でしたが、SNSなどで人々の関心を呼び、日本の地上波のみならず米CNN・英BBCといった海外有名メディアでも報じられました。こうした反響もあって『私が見た未来 完全版』の発行部数は100万部を突破。海外から日本への旅行ツアーがキャンセルされるなど現実に影響を与え、経済的損失を約5600億円と試算した報道もあります。
幸いにして予言された日に破滅的な災害は起きませんでしたが、日本は疑いようのない地震大国です。この30年だけでも歴史に残る規模の大震災が2度発生し、さらに今後30年で南海トラフ巨大地震が起きる確率は80%程度とされています。今回の騒動をきっかけに、防災についての意識を高めておきたいところです。
そこで今回は【防災について学べる漫画】をテーマに、3つの作品をご紹介したいと思います。
防災について学べる漫画 3選
■『サバイバル』(さいとう・たかを/1976~1980年)
中学生の鈴木 サトルは、洞窟探検中に激しい揺れに見舞われます。一緒だった友人たちとはぐれ、陸地にいたはずが周囲を水に囲まれた孤島になっていました。このとき全世界が地殻変動をともなう大地震に襲われ、海水面の上昇により主要都市が水没するほどの災害が起きていたのです。たった一人で自然の中に取り残されたサトルの過酷なサバイバル物語が幕を開けます。
最初は頼りない少年のサトルでしたが、手探りで食物と水を確保し、寝床を作り、病気に倒れ、野生の猛獣やネズミにおびえ、生存していた人々との出会いと別れを繰り返しながらたくましく成長するのが見どころです。連載スタートは1976年という古典ですが、過酷な自然描写と実用的な生存スキルの解説、極限下における生々しい心理などが盛り込まれて今読んでもまったく色あせない傑作です。
■『ソウナンですか?』(原作・原案:岡本健太郎、作画:さがら梨々/2017~2022年)
主人公は4人の女子高生。修学旅行中に飛行機が墜落し、彼女たちが無人島へ流れ着くところから始まります。他に生存者の気配なし、場所は日本領かどうかもわからない島、食料はおろか生存に必要な道具すらない。そんな絶望的シチュエーションですが、なんと4人の中には元軍人の父親から高度なサバイバル訓練を叩き込まれたスーパー女子高生・鬼島 ほまれがいました。彼女の知識と経験を活かしながら力を合わせて生き抜き、日本へ戻るための日々が描かれます。
本作はサバイバル系漫画では珍しく、ライトなコメディ仕立てになっているのが特徴です。虫も殺せない普通の少女たちが、虫を手づかみで捕まえて食べる野生少女の影響を受けながら無人島生活に順応していく様子はとても楽しく読めます。それでいて解説される知識は本格派で、水の確保、火起こし、住居の選び方まで抜かりありません。流血シーンが苦手な人でも気軽に手にとって防災知識を高められるでしょう。
■『彼女を守る51の方法』(古屋兎丸/2006~2007年)
マスコミ業界を志望する21歳の大学生・三島 ジンは、会社説明会のため訪れたお台場で、元クラスメートの岡野 なな子と偶然再会します。数年を経てお互い性格が変わってしまったことが理由で口論になった時、いきなり首都直下地震が発生。マグニチュード8.1の強烈な地震はお台場だけでなく首都圏を広く破壊し、あらゆるインフラは麻痺。あちこちに死体が転がり激しい余震も続く中で、ジンとなな子は無事に安全な場所まで逃げ切れるか? という「帰宅困難者」を想定したストーリーです。
舞台が都会ということで大自然の中よりも難易度が低いのではと思いがちですが、彼らの旅路は決して楽なものではありません。地震で崩れて凶器と化すコンクリートの建造物、集団心理が引き起こすパニックやデマの恐怖、不安に乗じた暴動など、むしろ現代に生きる私たちには無人島サバイバルよりこちらのほうがリアルに感じられるでしょう。過酷なトラブルが続きますが、ジンとなな子が同級生の頃からお互い想いを寄せていたことが判明するシーンもあり、2人を心から応援したくなります。
学べるポイント
今回紹介した漫画のうち『サバイバル』と『ソウナンですか?』は、自然の中で遭難した時の生存術が豊富に紹介されています。水や食料の入手、シェルターの構築、悪天候への対処などサバイバルに必要な知識が幅広く学べて、きっと非常時に役立つでしょう。
さらに『サバイバル』の方では脱水症状や栄養失調、孤独感、感染症がどのように人体を蝕むかも丁寧に描かれ、私たちが普段から文明の恩恵を受けて生きていることを強く思い出させてくれます。
『彼女を守る51の方法』は都市型の防災術、いわゆる「アーバンサバイバル」に属するため他2作品とは少し学べる知識が異なります。首都機能が崩壊したとはいえ食料などは備蓄があるので、直接飢えることはありません。代わりに限られた物資の奪い合い、平常時では守られているモラルが崩壊して多発する犯罪や暴動など、自然災害と同じくらい人間が怖い……というリアルな視点を読者に突きつけてきます。
まとめ – 大切なのは“心の持ち方”
このように各作品で描き方の違いはあるものの、共通しているのは「生き抜く意志」が大切だという強いメッセージ性です。すべての主人公は多くの苦難に遭遇して、途中で心折れてしまう場面もあります。しかし家族や友達、愛する人との絆を胸に再び立ち上がり、以前よりも強く成長していきます。
被災時の技術的な知識だけなら一般書籍や動画でも学べますが、こうしたメンタル面まで教えてくれるのは、さまざまなキャラクターを自由に動かせる「漫画」という媒体の強みでしょう。
大地震や遭難で日常が壊されてしまっても決して諦めない、ヤケにならないという心構えは、現実に生きる私たちも災害時に備えて持っておきたいものです。まずは今回紹介した漫画を1冊手に取り、楽しみながら防災意識を高めてみませんか?
(執筆: 浜田六郎)