ホテルの良い口コミを増やす仕組み——「書いてもらう」ための導線設計

口コミスコアを上げる最もシンプルな方法は「良い口コミの件数を増やす」ことです。満足度が高くても、口コミを書く人は全体のごくわずか。何も仕掛けなければ、不満を持ったゲストだけが口コミを書き、スコアが低く見えるバイアスがかかります。

本記事では、満足したゲストに「自然に口コミを書いてもらう」ための導線設計を解説します。

目次

なぜ満足したゲストは口コミを書かないのか

理由はシンプルで、「書く動機がない」からです。不満がある人は「この不満を他の人に伝えたい」という強い動機がありますが、満足した人は「良かった」で完結し、わざわざ時間を使って口コミを書く理由がありません。

オレンジページくらし予報の調査では、93.3%の人が宿泊施設を選ぶときに口コミサイトを参考にする一方で、実際に口コミを書く人はごく一部です。つまり「口コミを読む人」と「書く人」の間には大きなギャップがあります。

施設側がやるべきは、「書く動機を作る」または「書くハードルを下げる」こと。以下の4つの導線が、実務的に効果を発揮します。

出典:プレスリリース(@Press)

導線① チェックアウト時の一言

最もシンプルで効果的なのが、チェックアウト時にフロントスタッフが一言添えることです。

ポイントは「具体的なOTA名を言う」こと。「口コミをお願いします」だけでは、どこに書けばいいかわからず行動に移せません。

スタッフの声かけ例文

「○○様、ご滞在はいかがでしたか? もしよろしければ、じゃらん(または楽天トラベル)にご感想をいただけると大変嬉しいです。○○様のお声が、次にお越しになるお客様の参考になります。」

この一言だけで、口コミ投稿率は目に見えて変わります。全員に同じ言葉を言うのではなく、滞在中の会話を踏まえた一言を添えるとさらに効果的です。「○○のお料理を気に入っていただけて嬉しかったです。もしよろしければ…」のように。

スタッフによって声かけの有無にばらつきが出ないよう、チェックアウト業務のマニュアルに「口コミ案内」のステップを組み込んでおくことが重要です。

導線② 客室内のカード設置

客室のテーブルや枕元に、口コミ投稿を促す小さなカードを置く方法です。

カードの文面例

表面:「あなたの声が、次のゲストの旅をより良くします。ご滞在の感想をぜひお聞かせください。」

裏面:OTAの投稿ページにアクセスできるQRコードを印刷。QRコードの下に「スマートフォンでQRコードを読み取ると、投稿ページが開きます」の一言を添える。

QRコードの作り方

じゃらんの場合は、施設の口コミ一覧ページのURLをQRコード化します。楽天トラベルも同様に、施設の口コミページのURLを使います。Googleマップの場合は、Googleビジネスプロフィールの管理画面から「口コミを増やす」→「口コミのリンクを共有」で専用URLを取得できます。

QRコードの生成は、「QRコード 作成 無料」で検索すると多数のツールが見つかります。URLを貼り付けるだけでQRコード画像が生成されるので、それをカードに印刷します。

カードのサイズは名刺サイズ程度が扱いやすく、印刷コストも抑えられます。ラミネート加工すれば繰り返し使用可能です。

導線③ 宿泊後のフォローメール

チェックアウト後24〜48時間以内に、お礼メールと合わせて口コミ投稿のリンクを送ります。滞在の記憶が新鮮なうちに送ることが重要で、1週間後では効果が大幅に落ちます。

フォローメールのテンプレート

件名:「○○ホテルへのご宿泊ありがとうございました」

本文

○○様

先日は○○ホテルにご宿泊いただき、誠にありがとうございました。ご滞在はいかがでしたでしょうか。

もしよろしければ、ご宿泊の感想をお聞かせいただけると大変嬉しく存じます。
○○様のお声が、私たちのサービス向上と、次にお越しになるお客様の参考になります。

▼ 口コミはこちらから(所要1〜2分)
[じゃらんの口コミ投稿ページURL]

またのお越しを心よりお待ちしております。

○○ホテル スタッフ一同

メール配信の自動化
PMSや予約エンジンにメール自動配信機能がある場合は、チェックアウト翌日の午前中に自動送信されるように設定します。手動配信の場合は、毎朝「前日チェックアウトリスト」を確認し、一括送信するルーティンを作ります。

メールの文面は短くするのがコツです。長文は読まれません。お礼→口コミのお願い→リンク。この3要素だけで十分です。

導線④ 口コミに書かれやすい「ネタ」を意図的に作る

ゲストが口コミに書くのは「驚いたこと」「期待を超えたこと」です。つまり、口コミのネタになる体験を意図的に設計することで、「書きたくなる口コミ」を増やせます。

コストゼロ〜低コストで実現できる「口コミネタ」の例

チェックイン時に名前で呼ぶ(コストゼロ。予約情報を事前確認するだけ)。客室に手書きのメッセージカードを置く(1枚あたりのコストは数円。「○○様、ようこそお越しくださいました」と書くだけで特別感が生まれる)。地元のお菓子をウェルカムスイーツとして提供する(1組あたり100〜300円程度)。共用スペースのマンガコーナーが充実している(「マンガが3,000冊あるホテル」は口コミに書かれやすい鉄板ネタ)。チェックアウト時にちょっとしたお土産を手渡す(地元の飴や入浴剤など。1個50〜100円程度)。

これらに共通するのは「期待していなかったものが、そこにあった」という小さなサプライズです。高額な投資は不要で、「気が利いている」と思わせるだけで口コミの言及ポイントになります。

口コミに書かれにくいもの
「普通に良かった」レベルの体験は、満足はしても口コミには書かれません。清潔な部屋、普通の朝食、笑顔の接客——これらは「当たり前」と認識されるため、わざわざ書く動機にならない。口コミに書かれるのは「当たり前」を超えた瞬間です。

注意点 やってはいけないこと

口コミ投稿の「お願い」は問題ありませんが、「報酬を渡して口コミを依頼する」行為はGoogleのポリシーおよび多くのOTAの利用規約に違反します。また、「高評価の口コミを書いてくれたら割引」のような条件付きの依頼も規約違反となるため、避けてください。

あくまで「もしよろしければ」というスタンスで、自然な形でお願いすることが大切です。

口コミ投稿率を測定する

導線を整えた後は、「実際に口コミが増えたか」を数字で確認します。

月間の口コミ投稿数をOTAごとに記録し、導線整備前の3ヶ月と整備後の3ヶ月を比較する。チェックアウト数に対する口コミ投稿数の比率(口コミ投稿率)を算出する。フォローメールの開封率とリンクのクリック率を確認する(メール配信ツールを使っている場合)。

口コミ投稿率の目安として、何も施策を打っていない場合は1〜3%程度、導線を整備すると5〜10%程度まで改善するケースがあります。

まとめ

良い口コミを増やすには「書いてもらう仕組み」が必要です。チェックアウト時の一言、客室内のカード、宿泊後のフォローメール、そして口コミに書かれやすい体験の設計。この4つの導線を整えるだけで、口コミの件数とスコアは確実に改善します。

大切なのは「仕組み」にすること。スタッフ個人の気配りに頼るのではなく、マニュアルとテンプレートで標準化し、誰が対応しても同じ導線が機能する状態を作ってください。

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