ホテルのGOP率を改善する——利益を残す経営のための実践アプローチ

ホテルの収益性を測る最も実務的な指標がGOP(Gross Operating Profit=営業粗利益)です。売上が伸びていてもGOPが低ければ、経営は「忙しいのに利益が残らない」状態です。
GOP率の目安はビジネスホテルで30〜35%、旅館で15〜25%程度とされますが、これはあくまで参考値です。重要なのは、自施設のGOP率を把握し、改善の余地がどこにあるかを特定することです。
本記事では、GOPを「売上側」と「コスト側」に分解し、それぞれの改善アプローチを解説します。収支構造の全体像は「ホテル経営の収支構造を完全解説」で解説していますので、本記事はその中のGOP改善に特化した深掘りです。
GOP率が低い原因を特定する——売上側とコスト側の分解
GOPの計算式は「営業収入 − 運営費用」です。GOP率が低い原因は、売上が足りないか、コストがかかりすぎているか、またはその両方です。
売上側の主な課題として、ADR(平均客室単価)が低すぎる、OCC(稼働率)が低く固定費を回収できていない、客室以外の収益(料飲・物販・体験等)が弱いことが挙げられます。
コスト側の主な課題として、人件費比率が高い(売上の30%以上は要注意)、OTA手数料の実効コストが把握できていない、光熱費が適正水準を超えている、食材費の原価管理ができていないことが挙げられます。
売上側の改善——RevPARを上げる
RevPAR(ADR × OCC)を最大化することが、売上側の改善の核心です。
ADRの改善策として、ダイナミックプライシング(需要に応じた料金変動)の導入、アップセル(上位客室への誘導)、付加価値プランの設計(朝食付き・体験付き等)が有効です。具体的な手法は「ホテルの客単価を上げる7つのアプローチ」で解説しています。
OCCの改善策として、閑散期の料金戦略の見直し、OTA掲載情報の最適化(写真・紹介文・プラン名の改善による予約転換率向上)、直予約チャネルの強化、法人契約・団体需要の開拓、口コミスコアの改善が挙げられます。
コスト側の改善——「削るべきコスト」と「削ってはいけないコスト」
コスト削減で最も重要なのは、「ゲストの満足度に直結するコスト」を削らないことです。食材の質を落とす、アメニティを安いものに替える、清掃スタッフを減らす——こうした削減は口コミ評価の低下→稼働率の低下→売上の低下という悪循環を招きます。
削るべきは、ゲスト体験に影響しない間接コストです。
人件費の最適化として、省人化できる業務(チェックイン、問い合わせ対応等)はテクノロジーで代替し、人にしかできない業務(対面の接客、クレーム対応等)に人的リソースを集中させます。シフト管理の最適化により、需要の少ない時間帯のスタッフ配置を見直すことも有効です。
OTA手数料の最適化として、直予約比率を上げることが最もインパクトの大きいコスト削減策です。OTA経由の予約1件を直予約に置き換えるだけで、手数料率10〜20%分がそのままGOPに加算されます。詳細は「OTA手数料の実効コスト比較と最適化戦略」で解説しています。
光熱費の見直しとして、LED照明への切り替え、空調の運転スケジュール最適化、エネルギー契約の見直しなど、初期投資はかかるが中長期で回収できる施策から着手します。
外注費の見直しとして、清掃、リネン、アメニティの外注先を定期的に相見積もりし、品質を維持しながらコストを下げる交渉を行います。
GOP率を定点観測する仕組み
GOP率は月1回、部門別に集計して推移を追います。
集計のフォーマットとして、客室部門(客室売上−客室関連費用)、料飲部門(料飲売上−食材費−料飲人件費)、その他(物販、体験、駐車場等)に分け、それぞれのGOP率を算出します。
月次で推移を追うことで、「先月ADRを上げたが、GOPはどうなったか」「清掃外注先を変えた効果はコストに表れているか」といった施策の効果検証ができます。
まとめ
GOPは「ホテルの運営効率を測る最も実務的な指標」です。売上を上げることとコストを下げることの両面からアプローチし、月次で定点観測する。この習慣が、「忙しいのに利益が残らない」状態からの脱却につながります。
