ホテルの体験型プランが予約を変える——「泊まる+α」で選ばれる施設の事例と設計のコツ

2025年版コロナ禍発のホテルトレンドはいま?

「どこに泊まるか」ではなく「何を体験できるか」で宿泊先を選ぶゲストが増えています。OTAで価格と立地を比較されるだけの施設は、値下げ競争から抜け出せません。一方、宿泊に「体験」を組み合わせた施設は、ADR(客室単価)を維持しながら予約を獲得しています。

本記事では、実際にホテル・旅館が導入している体験型プランの事例を紹介し、自施設で体験型プランを設計する際の考え方を解説します。

目次

なぜ「体験型プラン」が選ばれるのか

旅行の目的が「観光地を巡ること」から「その場所でしかできない体験をすること」に変化しています。特にSNS世代は「映える写真」だけでなく「語れる体験」を求めており、「○○ホテルでこんな体験をした」というストーリーが旅行の価値になっています。

ホテル経営の視点で見ると、体験型プランには3つのメリットがあります。ADRの引き上げ(素泊まりより高い単価設定が可能)。OTAでの差別化(「体験付き」は検索フィルターに引っかかりやすい)。口コミの言及ポイント増加(「○○体験が最高だった」は書かれやすい)。

事例① 食の体験——地域の味覚を「プラン化」する

地元食材を使った特別ディナーコース、朝採れ野菜の朝食ビュッフェ、利き酒体験、餅つき体験、蕎麦打ち体験など。食は最も取り組みやすい体験型プランです。

ポイントは「普段の食事メニューをそのままプランにする」のではなく、「このプランでしか食べられない特別感」を設計すること。季節限定、数量限定、料理長の解説付きなど、「特別な理由」があると予約の動機になります。

事例② 文化・アクティビティ体験——「ここでしかできない」を売る

陶芸体験、茶道体験、座禅、農業体験、カヤック、スターウォッチング、焚き火ナイトなど。近隣の体験事業者と連携すれば、自施設で設備を持たなくてもプラン化できます。

旅館であれば「浴衣で街歩き」「女将と巡る朝市ツアー」のように、施設のスタッフや地域の人が案内役を務めることで、他では真似できない独自性が生まれます。

手配代行の手数料として体験料金の10〜20%を受け取るモデルにすれば、初期投資ゼロで客単価アップと差別化を同時に実現できます。

事例③ ワーケーション・長期滞在型——「泊まる+働く」の融合

Wi-Fi環境+ワークスペース+温泉や自然環境。リモートワーカー向けのワーケーションプランは、閑散期の平日稼働率改善に効果的です。

1泊の単価は下がっても、5泊・7泊の連泊で総売上は大きくなります。仕事の合間にリフレッシュできる館内設備(大浴場、マンガコーナー、ラウンジ等)があると、「仕事も休息もできる場所」として長期滞在の満足度が上がります。

事例④ 推し活・ファンダム対応——特定の熱量を持つ層を取り込む

コンサート会場やイベント会場に近いホテルでは、「推し活プラン」(ライブ後の宿泊+推しカラーのルームデコレーション等)が人気を集めています。アニメの聖地巡礼向けプランも同様です。

熱量の高いファン層は「価格」より「体験の特別感」で宿泊先を選ぶため、ADRを高めに設定しても予約が入りやすい特徴があります。

体験型プランを設計する3ステップ

ステップ1 自施設の「半径5km」にある資源を棚卸しする

海、山、川、温泉、農園、漁港、工房、酒蔵、寺社仏閣、イベント会場。自施設の周辺にある「体験の種」をすべてリストアップします。

ステップ2 ターゲットと体験をマッチングする

カップルなら「星空ディナー」、ファミリーなら「農業収穫体験」、ビジネスパーソンなら「ワーケーション」、推し活層なら「会場近接プラン」。ターゲットが明確であるほど、刺さるプランが作れます。

ステップ3 プランの料金を「素泊まり+体験料+α」で設計する

体験部分の原価を計算し、素泊まり料金に上乗せします。体験の付加価値分として10〜30%のマージンを乗せても、ゲストが「この体験に見合う」と感じる設計であれば、値引き感なく予約が入ります。

まとめ

体験型プランは「特別な設備がないとできない」ものではありません。地域の食、文化、自然、近隣事業者との連携で、今ある資源を「プラン」に変えることが差別化の起点です。

宿泊プランの収益構造と設計の考え方は、今後公開予定の「レベニューマネジメント」シリーズで詳しく解説します。差別化戦略の全体像は「ホテルの差別化戦略——価格競争から脱却する5つのアプローチ」をご覧ください。

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