ホテルの需要予測と料金カレンダーの作り方——「いつ値上げし、いつ値下げするか」をデータで判断する
レベニューマネジメントの第一歩は「需要を予測すること」です。しかし「需要予測」と聞くと、高度な統計分析や高額なシステムが必要に思えるかもしれません。
実際には、過去の宿泊データと地域のイベントカレンダーがあれば、中小ホテルでも十分に精度の高い需要予測ができます。本記事では、Excelで作れる「料金カレンダー」の具体的な作成手順を解説します。
需要予測に必要な3つのデータ
データ① 過去の稼働実績(曜日別×月別)
PMSから過去12ヶ月分の日別稼働率データを抽出し、「曜日別×月別」のマトリクスを作ります。
たとえば「6月の火曜日の平均稼働率は42%、12月の土曜日は93%」というデータが見えれば、これだけで料金設定の大枠が決まります。
データ② 地域のイベント・行事カレンダー
花火大会、音楽フェス、スポーツ大会、学会・展示会、地域の祭り、マラソン大会など、宿泊需要を押し上げるイベントを年間カレンダーに記入します。
イベント情報の収集先として、地元の観光協会のWebサイト、コンベンションビューローのイベントカレンダー、近隣の大型会場(コンベンションセンター・スタジアム等)のスケジュール、前年のPMSデータで「説明できない高稼働日」を特定し、その日のイベントを調べる方法が有効です。
データ③ 競合施設の料金動向
OTAで同エリアの競合施設3〜5施設の料金を、2週間先・1ヶ月先・3ヶ月先の日程で定期的にチェックします。競合が料金を上げていれば「需要が高い日」のシグナル、下げていれば「需要が低い日」のシグナルです。
チェック頻度は週1回で十分です。毎週月曜日に「今週〜4週間先の競合料金」を確認し、自施設の料金と比較するルーティンを作ります。
【実践】料金カレンダーの作成手順
手順1 Excelで12ヶ月分のカレンダーを作る
横軸に日付、縦に「曜日」「前年稼働率」「イベント」「需要ランク(A/B/C)」「設定料金」の行を作ります。
手順2 前年の稼働率を記入する
PMSから前年同月の日別稼働率を転記します。前年のデータがない場合は、直近3ヶ月のデータから曜日別の平均稼働率を推定値として使います。
手順3 イベント情報を記入する
地域のイベントカレンダーから、宿泊需要に影響するイベントを該当日に記入します。近隣のコンサート会場でのライブ、スポーツの試合、学会の開催日程なども重要です。
手順4 需要ランクをA/B/Cで分類する
前年稼働率とイベント情報を総合して、各日のランクを決めます。
Aランク(高需要)の目安:前年稼働率80%以上、または大型イベントの開催日、祝前日の金曜・土曜。Bランク(通常)の目安:前年稼働率60〜80%、通常の平日・週末。Cランク(低需要)の目安:前年稼働率60%未満、閑散期の平日。
手順5 ランク別の料金を設定する
レベニューマネジメント入門記事で解説した「A日程+15〜30%、B日程は基準料金、C日程-10〜20%」の原則に基づき、各日の料金を設定します。
手順6 予約状況に応じて随時調整する
料金カレンダーは「一度作ったら終わり」ではありません。予約の入り具合を見ながら調整します。
チェックイン日の2週間前時点で稼働率が70%を超えている場合は、残りの客室の料金を引き上げる余地があります。逆に2週間前で稼働率が40%以下なら、料金を下げるか、OTAのプロモーション(タイムセール等)への参加を検討します。
需要予測の精度を上げる3つのコツ
コツ① 「なぜその日は高稼働だったか」をメモに残す
PMSの数字だけでは「何が原因で稼働率が上がったか」がわかりません。「○月○日は近隣で○○フェスが開催された」「○月○日は3連休の中日だった」など、稼働率の変動理由をカレンダーにメモしておくと、翌年の予測精度が格段に上がります。
コツ② 「予約のリードタイム」を意識する
ビジネスホテルは1〜3日前の直前予約が多く、リゾートホテルは1〜3ヶ月前の早期予約が多い傾向があります。自施設の「予約が入り始めるタイミング」を把握しておくと、料金調整の適切な時期がわかります。
コツ③ 年に1回、前年との比較で振り返る
年末に「今年の料金カレンダーの予測精度」を振り返ります。「A日程に設定したが実際はBだった日」「Cに設定したが実際はAだった日」を洗い出し、翌年のカレンダー作成に反映します。
まとめ
需要予測は高度な分析ではなく「過去データ+イベント情報+競合動向」の3つを組み合わせるだけで、十分な精度が出ます。Excelで料金カレンダーを作り、A/B/Cランクに分類して料金を設定する。この仕組みを一度作れば、毎月の更新作業は1〜2時間で済みます。
まずは来月分の料金カレンダーを作るところから始めてみてください。
