受験シーズンまであと1ヶ月! 受験に必要な考え方・心構えがわかる漫画4選

毎年多くの人が挑戦する受験
私たちは生きていく中で、否が応でも競争にさらされます。受験もそのひとつで、受験者数・受験率の増加により近年過熱気味なのが中学受験です。
特に、中高一貫校であれば高校受験の必要がないため、首都圏では小学6年生の2割強にあたる約5.2万人、関西圏では同じく1割強に当たる約1.7万人が受験。塾の送迎や塾にかかる費用の負担などで親の協力が欠かせないため、中学受験は「親の受験」と言われることもあります。
そして、親世代でも経験した人が多いと思われるのが大学受験。大学受験も2021年に新制度がはじまり、推薦入試や一般入試の他、総合型選抜(AO入試)も加わり、早めの準備が求められるようになりました。
大学受験で受験生のほとんどが受ける「大学入学共通テスト」については、国公立大学だけでなく多くの私立大学も参加しており、全体で約50万人が志願する試験です。
受験の勉強法はさまざまあり、相性がいい勉強方法も人それぞれ。また、能力を発揮しやすい場所も、性格や考え方によって違ってくるでしょう。受験で自分のストレス要因を知ることで、将来何らかの役に立つ可能性もあります。 今回は、「受験」をテーマにした漫画の中から、受験勉強のやり方だけでなく、受験する際の接し方、心理などを入念に描いた4作品を紹介します。
受験をテーマにした漫画4選
『ドラゴン桜』(三田紀房/2003~2007年)
主人公である桜木建二は、駆け出しの弁護士。桜木は、以前よりお世話になっていた弁護士から、経営破綻状態に陥った学校法人の清算・解散の案件を請け負います。物語の舞台となる私立龍山高等学校は偏差値30の落ちこぼれ高校。しかも債務超過状態で破産待ったなしの状態です。あとは、裁判所へ申し立てをして管財人が決まり次第、案件を引き継ぐところでした。
しかし、桜木は「ただ清算するだけでは面白くない」と考え、「進学校化したうえで、5年後に東大合格者を100人輩出する」と大きなアドバルーンを掲げます。それを聞いた教職員たちが「そんなの無理に決まっている」と言う中、半ば強引に連れてきた水野直美を指さし「来年3月の東大合格者第一号」と紹介。後から入ってきた矢島勇介を含めた2人に受験テクニックと勉強のやり方、受験までの過ごし方を伝授して東大合格を目指す物語です。
『ドラゴン桜2』(三田紀房/2018~2021年)
『ドラゴン桜』続編となる本作の舞台は、矢島・水野が卒業して10年後の龍山高校。桜木の受験ノウハウを引き継ぐことで、同校は進学校化を果たしました。しかし、桜木が去った後は有名私立大学への合格者が増える一方で、国公立大学の合格者は激減。東大現役合格者は0名でした。桜木はその現状を見て理事に就任。就任挨拶で「東大専門コース」を作ると宣言します。 その後、目標を立てて努力することが苦手な早瀬菜緒、自分に自信を持てない天野晃一郎の2名が東大専門コースに入り、桜木の教え子で弁護士の水野直美に担任を命じ、東大合格を目指します。10年前とは気質も考え方も違う上、教育改革の過渡期にあった受験生をいかにして東大へと導くか。合格に向けた勉強法や日常の過ごし方など、受験に大切なことを描いた作品です。
『ブルーピリオド』(山口つばさ/2017年~)
本作の主人公は、矢口八虎。高校2年生だった彼は、徹夜で酒を飲むわ、タバコを嗜むわと完全な不良。その反面で学業成績は常にトップクラスという、優等生な一面も持ち合わせた少年です。八虎はノルマをこなすような感じで人付き合いや勉強をしている一方、何をやっても達成感を得られず、空虚な毎日を送っていました。
そんなある日、美術室でみた一枚の絵に惹かれた八虎は、同級生の美術部員の手伝いを経て美術部に入部。少しずつ絵を描くことにのめり込んでいって、真剣に東京藝術大学の受験を考えはじめます。本作は、絵を描く楽しみを知った八虎を中心に、美術大学受験予備校や入学試験で味わった苦悩を経て、東京芸術大学の学生として美術を学ぶ姿を描いた青春群像劇です。
『二月の勝者-絶対合格の教室-』(高瀬志帆/2017~2024年)
舞台となるのは、東京にある中堅どころの中学受験塾・桜花ゼミナール吉祥寺校。物語の中心人物となるのは、同ゼミナールの新任塾講師・佐倉麻衣と業界トップの合格実績を誇る大手から移籍して、新しく校舎長となった黒木蔵人のふたりです。
その黒木は「都内御三家(歴史が長く難関大学への合格実績も高い難関私立中学)合格者ゼロという、残念な校舎のテコ入れをしにこちらに来ました」と言い放ちます。その後も「進学塾はサービス業」と言い切るなど、黒木の言動は生徒や保護者、教職員たちから反感を買います。
しかし、黒木は裏では生徒の悩みをよく見ていて、次第に心を掴んでいき……。 本作は、中学受験塾を舞台に、受験をする小学生および親が抱える苦悩、学習塾業界の闇について、中学受験を経験してこなかった佐倉麻衣の視点で描かれた物語です。
それぞれの漫画で学べるポイント
今回取り上げた4つの漫画作品から学べるのは、まず受験に向き合う姿勢ですね。
『ドラゴン桜』『ドラゴン桜2』では、東京大学受験をテーマにしています。多くの人は、東大と聞けば「日本で一番難しい大学」と答えるでしょう。『ドラゴン桜』では、落ちこぼれ校の生徒を1年で東大まで導く過程を描いたので、一見すると型破りに見えますが効果的な勉強法が紹介されていました。連載終了からすでに20年近く経っており、受験知識という点では少し情報が古いかもしれませんが、勉強法については、今でも通用するものです。
一方の『ドラゴン桜2』は、全体の平均とされる偏差値50近辺にいる受験生の東大受験がテーマです。偏差値50~60というのが、受験生の中でもっとも多いボリュームゾーンと呼ばれ、桜木も作内で「高校3年4月時点で偏差値50くらいであれば、1年間本気で勉強すれば東大に合格できる」と言っています。
もちろん、そのためには正しく努力することが必要です。『ドラゴン桜』『ドラゴン桜2』では、東大合格を引き寄せるための正しい努力について、徹底的に解説されています。
『ブルーピリオド』は、一枚の絵に魅せられて情熱を燃やす高校生の葛藤と成長を描いた物語です。芸術大学という特殊な受験がテーマなので偏差値を高める手段ではなく、美術の知識や作品と向き合う主人公のひたむきな努力と情熱が描かれています。
特に、表現方法や技法といった美術知識について、最初はまったくの素人だった主人公視点で解説されているので、あまり知識がなくても理解しやすいように配慮されているのが特徴です。
また、作中で紹介された絵画の見方やその背景などの知識も解説されているので、美術館で絵画鑑賞する際の新しい視点も得られるでしょう。
『二月の勝者-絶対合格の教室-』は、中学受験をテーマとしています。当たり前のことですが、中学受験に臨むのは小学生。そのため、高校・大学受験と異なり、父親・母親も含めた家族総出で挑むような雰囲気があるのが特徴です。 その中学受験にも、過去問の対策方法や志望校を選ぶ際の戦略、塾の選び方にもコツがあります。作内では塾講師はもとより、子どもたちのキャラクターも個性的で、さまざまなタイプが登場。最終的に成績を大きく伸ばしていく子の特徴や塾の環境、通っている生徒の雰囲気も細かく描かれています。
まとめ - 能力を伸ばすためには適切な関わりが必要である
人生の節目にやってくる、中学受験・高校受験・大学受験。受験で合格するには、何が必要なのでしょうか。答えを見つけるのは容易ではありませんが、ひとつだけ言えるとすれば周囲の大人たちが「期待しすぎず適度な距離感を持って接する」ことです。
これは今回取り上げた4作品の全てに共通しており、家族が絶対的な味方でいること。すぐに結果が出なくても、コツコツと自分のペースで努力を重ねる大切さを伝えることが受験で良い結果を得るために欠かせないと私たち読者に教えてくれます。
受験生と接する機会が多い「親」では、とりわけ母親が子どもの受験を支えることが珍しくなく、母親に過剰なストレスが溜まってしまう例もあります。今回取り上げた漫画でも、受験期における親の接し方が多くのページを割いて紹介されています。
こうした受験漫画の中で学べる膨大なノウハウや成功・失敗の事例は、社会に出てからの人間関係のヒント、人が成長するためのマネジメント論、仕事における組織の束ね方にも共通して役立つ部分があるでしょう。気になった作品があれば、手にとって読んでみてください。桜木や黒木、八虎の言葉にきっと何かしら得るものがあるはずです。
(執筆: なつめれいな)
