『映画ドラえもん のび太の蒸気時間車』は完全オリジナル! 歴代映画を“原作あり・なし”と興行収入で振り返る

『映画ドラえもん』シリーズの最新作となる第46作目、『映画ドラえもん のび太の蒸気時間車』が2027年春に公開されます。舞台は19世紀のイギリス・ロンドン。ドラえもんとのび太たちが21世紀の日本から時空を越え、蒸気機関車の姿をしたタイムマシン「蒸気時間車」に乗って大冒険を繰り広げます(出典:ドラえもんチャンネル、コミックナタリー)。

監督はテレビアニメ版に2020年から参加してきた森山瑠潮さんが映画シリーズ初登板。脚本は劇団「ヨーロッパ企画」を主宰し、時間やタイムトラベルを題材にした舞台で知られる上田誠さんが手がけます。そして公式が強調しているのが、本作が原作エピソードのない「完全オリジナルストーリー」だという点です。

ここで気になるのが、「そもそも映画ドラえもんって、原作マンガにある話を映画にしているの? それともオリジナル?」という素朴な疑問ではないでしょうか。答えは「両方ある」です。46年続くシリーズを“原作あり・なし”という軸で眺め直すと、映画ドラえもんの歩みが驚くほどくっきり見えてきます。歴代の興行収入もあわせて振り返ってみましょう。

目次

そもそも「映画ドラえもん」には2つの系統がある

映画ドラえもんの作品は、大きく2つの成り立ちに分けられます。ひとつは、原作者の藤子・F・不二雄さん自身が『月刊コロコロコミック』などで描いた「大長編ドラえもん」を映画化したもの。もうひとつが、原作にあたるマンガを持たない、映画のためだけに書き下ろされたオリジナル作品です。

原作「大長編ドラえもん」を映画にした作品

1980年公開の第1作『のび太の恐竜』をはじめ、『のび太の宇宙開拓史』『のび太の大魔境』『のび太の海底鬼岩城』『のび太の魔界大冒険』といった初期の名作は、いずれも藤子・F・不二雄さんが自ら描いた大長編マンガが原作です。映画の公開に合わせてマンガが連載される形が長く続き、映画と原作が二人三脚で作られてきました。ページをめくれば、映画とほぼ同じ物語をF先生自身の絵で味わえるのが、この系統の大きな魅力です。

原作を持たない完全オリジナル作品

一方で、藤子・F・不二雄さんの逝去後、シリーズが続いていく中で増えてきたのが、映画のために新たに物語を作る完全オリジナル作品です。近年はこちらが主流になっており、今回の『のび太の蒸気時間車』もこの流れに位置づけられます。原作という“下敷き”がないぶん、脚本家の個性がそのまま作品の色になるのが特徴です。

名作を現代に甦らせる「新・」リメイクの流れ

原作つきの旧作は、時を経て「リメイク」という形でも甦っています。2006年の『のび太の恐竜2006』は、記念すべき第1作を新しい作画と演出で作り直した作品でした。以降も、2007年『新・のび太の魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜』、2016年『新・のび太の日本誕生』、2011年『新・のび太と鉄人兵団』などが公開され、2026年には『新・のび太の海底鬼岩城』が控えています。

これらの「新・」を冠したリメイク作は、原作の骨格を大切にしながら、現代の技術と感覚で描き直すのが持ち味です。親世代が子どもの頃に映画館で観た物語を、いまの子どもたちと一緒に楽しめる。世代を超えて共有できる点が、リメイク作の存在意義になっています。

有名作家・脚本家が書く「オリジナル」の時代へ

そして2010年代後半から鮮明になってきたのが、各界のヒットメーカーを脚本に迎えた完全オリジナル作品の潮流です。原作の枠にとらわれない自由さが、映画ドラえもんに新しい風を吹き込んでいます。

『のび太の宝島』(2018年)― 川村元気さんのオリジナル

『君の名は。』などの企画・プロデュースで知られる川村元気さんが脚本を担当。ロバート・ルイス・スティーヴンソンの児童文学『宝島』をモチーフに、子どもだけでなく大人の鑑賞にも堪える冒険活劇を作り上げました。この作品はシリーズ歴代最高の興行収入を記録しています。

『のび太の月面探査記』(2019年)― 辻村深月さんのオリジナル

『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞した直木賞作家・辻村深月さんが脚本を担当。幼い頃からのドラえもんファンとして、月の裏側を舞台にした想像力あふれる物語を紡ぎました。のちに自ら小説版も書き下ろしています。

『のび太と空の理想郷』(2023年)― 古沢良太さんのオリジナル

『リーガル・ハイ』やNHK大河ドラマ『どうする家康』を手がけた古沢良太さんが、シリーズ初参加で脚本を担当。空に浮かぶ理想郷(ユートピア)を舞台に、“騙し騙される”という古沢さんらしいひねりの効いたドラマを描きました。

『のび太の蒸気時間車』(2027年)― 上田誠さんのオリジナル

そして最新作の脚本を託されたのが、タイムトラベルものの舞台で定評のある上田誠さんです。19世紀ロンドンと蒸気機関車という舞台立ては、時間SFを得意とする上田さんの作風とみごとに重なります。原作を持たないオリジナルだからこそ、どんな物語が飛び出すのか予想がつかない――それこそが、いま映画ドラえもんを観る楽しみのひとつです。

興行収入ランキングで見る“新ドラ”20作(原作あり・なし付き)

2005年の声優陣一新にともなうリニューアル以降、いわゆる“新ドラ”の作品は興行的にも大きく伸びました。ここでは同じ「興行収入」で比較できる2006年以降の全20作を、収入の多い順に並べています。ひと目でわかるのは、ランキング上位をほぼオリジナル作品が独占しているという事実です。

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No.作品名公開年興行収入原作あり/なし
1のび太の宝島2018年53.7億円オリジナル
2のび太の月面探査記2019年50.2億円オリジナル
3のび太の絵世界物語2025年46.1億円オリジナル
4のび太の南極カチコチ大冒険2017年44.3億円オリジナル
5のび太と空の理想郷2023年43.4億円オリジナル
6のび太の地球交響楽2024年43.1億円オリジナル
7新・のび太の日本誕生2016年41.2億円原作リメイク
8新・のび太の海底鬼岩城 ※暫定2026年40.1億円原作リメイク
9のび太のひみつ道具博物館2013年39.8億円オリジナル
10のび太の宇宙英雄記2015年39.3億円オリジナル
11のび太と奇跡の島2012年36.2億円オリジナル
12新・のび太の大魔境2014年35.8億円原作リメイク
13新・のび太の魔界大冒険2007年35.4億円原作リメイク
14のび太と緑の巨人伝2008年33.7億円オリジナル
15のび太の新恐竜2020年33.5億円オリジナル
16のび太の恐竜20062006年32.8億円原作リメイク
17のび太の人魚大海戦2010年31.6億円オリジナル
18のび太の宇宙小戦争 20212022年26.9億円原作リメイク
19新・のび太と鉄人兵団2011年24.6億円原作リメイク
20新・のび太の宇宙開拓史2009年24.5億円原作リメイク

※興行収入は各種興行データによる公表値・報道値をまとめたもの。2026年公開作は暫定値です。2000年以前の旧作は「配給収入」でしか記録が残らず単純比較できないため本表からは除いています。3DCGの『STAND BY ME ドラえもん』シリーズも別枠です。

個人の皆様へ。冒険の“予習”に、大長編と過去作を

最新作の公開を待つあいだの楽しみ方として、まず藤子・F・不二雄さんが描いた「大長編ドラえもん」を読み返してみるのはいかがでしょうか。映画とマンガを見比べると、演出の違いや作り手の工夫が見えてきて、作品の奥行きがぐっと増します。

あわせて、過去のオリジナル作品を配信などで観ておけば、脚本家ごとの持ち味の違いも楽しめます。『のび太の蒸気時間車』が誰の、どんな色に染まった物語になるのか。“原作あり・なし”という視点を持って劇場に足を運べば、いつもとは少し違う角度で新作を味わえるはずです。

施設運営者の皆様へ。世代を超える定番IPを、集客の力に

ドラえもんが46年にわたって愛され続けているのは、親と子、祖父母と孫が同じ物語を共有できる“世代を超える力”があるからです。温浴施設やホテル、待合スペースといった、幅広い年齢層が集まる場所にとって、こうした国民的マンガ・アニメの吸引力は見逃せません。

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