6月4日は虫歯予防デー。歯科医院を舞台にした漫画3選
“虫歯予防デー”はいつから?
数字の64は語呂合わせで「むし」と読めることから、“むし”関連の様々な記念日となっています。例えば、日本昆虫倶楽部は「虫の日」、熊本県観光課は「杖立温泉 蒸し湯の日」、日量製パン株式会社は「蒸しパンの日」、大源製薬株式会社は「水虫治療の日」、さらにゲーム会社のセガ・インタラクティブは「ムシキングの日」としています。
1928(昭和3)年、日本歯科医師会が前述の通り6月4日の「むし」にちなんで、「虫歯予防デー」を始めたのがきっかけです。その後に戦争を挟んで紆余曲折があったものの、1949(昭和24)年に6月4日から1週間を「口腔衛生週間」と制定します。これが2013年から「歯と口の健康週間」と呼ぶようになっています。
全国にはコンビニエンスストアよりも多い数の歯科医院が存在するのですが、それだけ歯が重要である一方、「あまりお世話になりたくないな」と考える人も多いでしょう。しかし、一旦失うと元通りにならない器官の1つが「歯」です。そんな歯の大切さを噛みしめるうえでも、歯医者さん達が活躍する漫画を読んでみてはいかがでしょうか。そこで今回は歯科医院を舞台にした3つの漫画を紹介しましょう。
歯科医院を舞台にした漫画 3選
■『ほたる~真夜中の歯科医~』(高田靖彦/2013年)
親の代から続く「ほたる歯科医院」で、昼間の診察を担当する妹と共に、夜の診察を担う保田留脩(ほだどめ おさむ)が主人公。スキンヘッドでこわもての脩が治療室でも野球帽をかぶって診察する姿は、とても歯科医には見えません。それでも診察や治療の腕前は抜群なので、深夜に飛び込んでくる患者達を相手に、鋭い洞察力と巧みな技術で治療を施していきます。そうした患者の中には歯科医や歯科治療そのものに不信を募らせた人もいるのですが、彼の腕前によって、歯はもちろん、心も治療していきます。
ひと癖もふた癖もある名医が活躍するのは、『赤ひげ診療譚』(山本周五郎)や『ブラック・ジャック』(手塚治虫)からの伝統でしょう。本作では「医者の不養生」の通りに、虫歯を持った歯科医師の主人公が登場します。彼が夜の飛び込み患者を請け負っているのは、その分診療報酬が稼げるからなのですが、そんな銭ゲバなところも患者に「仕方ないか」と思わせるくらい歯科医師としての腕のよさを際立たせています。健康な体のためにはお金を惜しまない人は多いでしょう。だからこそ脩が活躍する余地があるのです。
■『デンタルクエスト』(作画:箸井地図、原作:セキアトム/2020~2023年)
「日本の歯科医療を変えたい」――そう主張する主人公、歯守(はもり)リンゴは歯科衛生士です。歯科衛生士とは歯科医師の手伝いをする国家資格で、歯の予防や保健指導などに携わることができます。歯科医療についてアメリカやスウェーデンに留学をしていたリンゴは、イマイチ気が合わないものの、こちらも歯科医療に真剣に取り組む田名井桜司が経営する歯科医院に拾われ、様々な患者と出会うことになります。そうした患者達の歯のケアに留まらず、生活習慣や思考の改善にも積極的に取り組んでいくリンゴの言動が、更なる問題解決につながることもあります。
医師と看護師のような関係があるように、歯科医師には歯科衛生士がいます。本作を読むと、海外では歯科衛生士のみで自立した職業になっていることが分かるのですが、日本はまだまだ。こんなところも日本における歯科医療の遅れなのかもしれません。作中では、主人公の熱心さの表れとして、歯科医師の立場を危うくしかねない言動が度々あります。そうした言動に周囲の人や読者が危うさを感じてしまうのも、日本の歯科医療の立ち遅れが原因なのかもしれません。1人の人間ができることは限られますし、主人公のように少しずつでも仲間を増やしていけると、歯科医療の先行きも明るくなると思います。
■『錦糸町ナイトサバイブ』(松田舞/2018年~2019年)
ドラマに影響され、秋田からキャバ嬢になることを目指して上京してきた西本小夏(にしもと こなつ)が主人公。とても20歳に見えない童顔でキャバ嬢にはなれなかったものの、いきなり300万円の借金を背負ったことで、旧知の歯科医師が経営する歯科医院に、歯科助手として勤めることになります。歯科助手が歯科衛生士と異なるのは、資格がなくてもなれること。ただし、口の中を触れないなど、できることに限りがあります。そんな素人に毛が生えたような小夏だからこそ、患者の心の内に飛び込んで、歯科医療に役立つこともあるようなないような、の毎日を描いています。
資格の必要な歯科医師や歯科衛生士と違って、歯科助手は手伝いの立場に留まらなくてはいけません。しかし、主人公である小夏は、特技のような人懐っこさを発揮して、患者や周囲の人々を巻き込んで行きます。当初は歯科助手だけだったのが、物語が進むにつれてキャバ嬢との二足のわらじを履くようになります。歯科医院以外の物語も増えていき、その辺りの展開も面白いところ。夜の街としても有名な実在する錦糸町を舞台にしているので、「ここ知ってる」「この建物を見たことがある」と思う人もいるはずです。
3つの漫画で学べるポイント
取り上げた3作ともに歯科医院を舞台にしているのですが、主人公の立場が異なることで、かなり描いている内容に差が出ています。歯科医が主人公の『ほたる~真夜中の歯科医~』は、やはり治療がメインに据えられています。もちろん、そこに至る人間ドラマもあるのですが、主人公はドーンと腰を据えて患者を待ち構える感じです。
それに対して、『デンタルクエスト』と『錦糸町ナイトサバイブ』は主人公の方から動いていく感じが強め。日頃から「歯を大事にしたいな」と考えている人には、『デンタルクエスト』がお勧めです。さらに『錦糸町ナイトサバイブ』では、キャバクラなど夜の世界を中心に、深めの人間ドラマが全面に展開されています。小夏にしても、結構いろいろと悩みを抱えていますし、3作の主人公の中では最も若いながらも一番重い感じがしました。
とは言え、3作に共通するのは歯や歯科医療に関する知識です。ただし、知識だけあっても絶対安心とは言い切れないのが歯の世界。毎日の歯磨きに加えて、数カ月に1回の歯科健診や歯垢取りが大事だとつくづく思わされます。それが分かっただけでも、漫画を読んだ価値があるはずです。
まとめ – 取り返しがつかない「歯の健康」を見つめ直そう
多少の病気や怪我であれば、適切な治療によって健康な体を取り戻すことができます。しかし一旦無くすと元に戻らない器官のひとつが「歯」です。近年、インプラント技術がかなり発達してはいるのですが、実際にかみ合わせてみると、まだまだ本物の歯には敵わないのだとか。「8020運動」にあるように、80歳になっても20本以上の歯を残すために、日頃から予防や治療に努めることが大事です。そうした歯の大切さを知るためにも、ぜひ虫歯予防デーにあわせて歯科医院を舞台にした漫画を読んでみてください。
(執筆: 県田勢)
