芸術の秋、音楽を楽しみませんか? クラシック音楽漫画3選

「芸術の秋」のコンサートシーズン、クラシックを聴いてみませんか?
気候が少しずつ涼しくなる9月。そろそろ「芸術の秋」ということで、展覧会やコンサートが色々と開催されるシーズンです。そこで、ぜひ鑑賞を楽しんでみてほしいのがクラシック音楽。
クラシック音楽とは、中世の教会音楽をルーツとして、17世紀~19世紀に全盛を誇った西洋音楽。主にバロックから古典派、そして、ロマン派、という3つの流れで発展し、その中でバッハやモーツァルト、ベートーヴェンにブラームス、シューマンやドヴォルザーク、チャイコフスキーなど優れた作曲家たちが数々の名曲を生み出してきました。
クラシック音楽はおごそかでお行儀がいいイメージが強いだけに、「難しそう」「聴くのが大変そう」と敷居の高さを感じる方もいるでしょう。しかし、実はクラシックは私たちの身近なところで色々と流れています。
たとえば、「ピアノの詩人」ことショパンが作曲した「24の前奏曲 第7番 イ長調」は、長年太田胃散のCM曲として使われていますし、料理番組「キユーピー3分クッキング」のテーマの原曲は、ドイツの作曲家・レオン・イェッセルが作った「おもちゃの兵隊の観兵式」。いずれも、メロディをそらで覚えて口ずさめる人がたくさんいるに違いない、日本国内で親しまれているクラシック曲です。映画やアニメでもクラシック音楽はよく使われており、映画『2001年宇宙の旅』で使われたリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」や、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』で流れたベートーヴェンの交響曲第9番などは、多くの人の心に残っているといえます。
そして、クラシックになじむならば、漫画からというのもアリ。今回はクラシック音楽の魅力に触れられる漫画作品3つをご紹介しましょう。
クラシック音楽への理解が深まる漫画3選
■『マエストロ』(さそうあきら/2003年~2007年)
まずは、クラシックを聴く際にやはりおさえておきたいオーケストラの物語。解散してしまった名門楽団の団員たちが謎の老人・天道に呼び寄せられ、彼の指揮の元で演奏会を目指していくストーリーです。
タイトルの「マエストロ」とは、主に優れた指揮者への敬称として使われる言葉ですが、本作では、マエストロ=天道の型破りな導きによってオーケストラの団員たちが音楽に開眼していく様が描かれます。それぞれの事情を抱えた演奏家一人ひとりのドラマとともにだんだんと音楽が仕上がっていく物語は読み応え抜群。合奏のシーンも非常に力強く、読みながら目の前で壮大な交響曲が奏でられているかのように感じる瞬間がきっとあるはずです。
■『オッターヴァ!!!~小さな手のピアニスト~』(芹澤知/2026年~)
続いては、ピアノ演奏を扱った作品。ピアノ木材加工を営む家に生まれた矢木楽八(やぎらエイト)が、憧れの奏者・クリスが主催するコンクールを目指していくストーリーです。
ピアノが大好きな主人公・エイトは、音楽高校に入学して指導を受けたり他の相手と連弾したり、コンクール予選でライバルの演奏に驚いたりと、ピアノを通して様々な刺激を受けていきます。ひたむきに楽しんで演奏に熱中するエイトの純粋な姿がとてもみずみずしく、読んだらきっと応援したくなるはず。
ちなみに、タイトルの「オッターヴァ」とは、「オクターブ(8度)=ある音から8音目の同じ音」を表すイタリア語になります。ピアノの演奏者は片手で1オクターブの鍵盤をおさえられるのが望ましいといわれているのですが、エイトの手はようやく1オクターブに手が届く……という大きさ。まだ10代の少年なので今後成長して手が大きくなる可能性もありますが、いずれにしても小さな手の彼がどのような演奏をして、またどんな演奏家になっていくのかが、本作の今後の展開として気になるところです。
■『DIVA』(小野弥夢/1988年~1990年)
最後に紹介するのは、オーケストラ伴奏と歌で彩る華やかなオペラの物語。オペラ歌手の母とヴァイオリニストの父の間に生まれた少女・リマ・ドールがオペラ界の“DIVA(歌姫)”を目指す物語です。
オペラの花形歌手である一方家庭を顧みなかった母・フィオナを嫌い、当初は父の音楽を受け継ぐヴァイオリニストを目指したリマ。しかし、怪我でプロ奏者への道を絶たれ、その後自身の歌の天分に気づいて、オペラ歌手への道を歩み始めます。このリマの成長を軸にフィオナとの関係やヴァイオリニストのルドガーとの恋、歌のパートナーとなるカルロとの絆などが描かれ、華麗でドラマチックなオペラの世界を存分に味わえる一作です。
3つの漫画が伝えるクラシック音楽の魅力とは
今回紹介した3作品は、それぞれの形でクラシック音楽の魅力を伝えてくれています。
『マエストロ』は、多くの楽器が集まるオーケストラの魅力を教えてくれる作品。ヴァイオリンやフルート、オーボエやクラリネット、ホルンやトランペットなど、各パートの団員たちを描く中でそれぞれの楽器の特性なども語られるので、読みながらオーケストラへの理解をごく自然に深めていけるでしょう。また、作品のキーマンである天道の姿を通して、オーケストラの演奏者たちの力を引き出す指揮者という存在の大きさも垣間見ることができるはずです。
『オッターヴァ!!!~小さな手のピアニスト~』はピアノ演奏の楽しさや魅力を伝えるのはもちろんのこと、コンクールが物語の主軸になっていて、エイトやライバルたちが挑む予選の様子から演奏会とはまた違うコンクールの面白さがわかる作品にもなっています。ピアノコンクールといえば、2021年の『ショパン国際ピアノコンクール』で反田恭平さんが1970年の内田光子さん以来となる日本人最高位タイの2位に輝いたことが話題となりました。近年、ピアノコンクールの演奏が動画サイトで配信されることも増えているので、ピアノコンクールを知る糸口として本作を読んでみるのもいいでしょう。
そして、『DIVA』は、歌と音楽、物語による総合芸術とされるオペラの魅力をふんだんに伝えてくれる作品。『椿姫』『トスカ』など、有名な作品を上演する場面から物語や歌の聴きどころを知ることができるので、これらの作品を見に行く前の入門編にぴったりといえます。また、主人公・リマがどう歌えばよいのか、どうすれば役になりきれるのか?と壁にぶちあたりながら成長していく姿を見守りながら、美しく歌うだけでない、表現する、演じる……といったオペラの難しさにも触れることができるはずです。
まとめ – クラシックに親しめる扉は、色々な場所にある
敷居の高いイメージがあるクラシック音楽ですが、映画やアニメ、そして、漫画作品など、親しめる扉は色々な場所で開かれています。漫画やアニメの好きなキャラクターが弾いていたあの曲は、実際どういうものなのだろう……のようなところから入ってみるだけで、美しく楽しい音楽の世界がぐっと広がっていくはず。
これから、芸術の秋真っ盛りの音楽コンサートシーズン。今回紹介した作品も参考にしながら、演奏会に出かける予定など立ててみてはいかがでしょうか。
(執筆: 田下愛)
