『ブラックナイトパレード』が約10年で最終回、中村光は20年にわたって2本の連載を並走させてきた
中村光さんの『ブラックナイトパレード』が、2026年10月19日発売のウルトラジャンプ11月号(集英社)で最終回を迎えました。週刊ヤングジャンプで2016年11月に始まり、2019年にウルトラジャンプへ移ってからも描き継がれてきた、約10年にわたる連載の完結です。
中村光さんといえば、荒川の河川敷に暮らす変わり者たちを描いた『荒川アンダー ザ ブリッジ』や、ブッダとイエスが立川でルームシェアする『聖☆おにいさん』を思い浮かべる人も多いはずです。実はこの作家は、2006年からおよそ20年、ほとんど途切れることなく2本の長期連載を同時に走らせてきました。
黒いサンタの物語はどんな作品だったのか。そして中村光さんの作品は、デビューからどんな順番で生まれ、どう映像化されてきたのか。最終回をきっかけに、その歩みを年代順に振り返ります。
『ブラックナイトパレード』が最終回、単行本12巻は12月17日発売予定
主人公の日野三春は、大学受験にも就職にも失敗し、コンビニでアルバイトをしながら毎日をやり過ごしている青年です。クリスマスの夜、顔のない黒いサンタ服の男に「悪い子」だと告げられた三春は、気づけば北極にある奇妙なサンタクロースの会社へ連れてこられていました。そこで任されるのは、悪い子のもとへ残念なプレゼントを届ける“ブラックサンタクロース”の仕事です。
良い子と悪い子のもとには別々のサンタがやってくるという、実在する言い伝えを下敷きにしながら、物語は会社組織の理不尽さや、働くことへの屈折した思いをコメディとして描いていきます。何をやってもうまくいかない若者が、とんでもない職場で少しずつ居場所を見つけていく過程は、ファンタジーでありながら妙に身につまされる手触りがありました。
連載は2016年11月に週刊ヤングジャンプでスタートし、2019年にウルトラジャンプへ発表の場を移しています。単行本は現在11巻まで刊行されており、最終回を収録するとみられる12巻は2026年12月17日に発売予定です。
さらに、12月18日発売のウルトラジャンプ2027年1月号には番外編が掲載され、同じ号で「重大発表」が行われることも告知されました。発表の中身はまだ明かされていません。クリスマスを舞台にした作品らしく、物語の締めくくりが年末に重なる形になります。
中村光とはどんな作家か、デビューは10代
中村光さんは1984年生まれ、静岡県出身の漫画家です。講談社の著者紹介によると、2001年に「月刊ガンガンWING」(スクウェア・エニックス)に掲載された『海里の陶』でデビューしました。10代でのデビューで、翌2002年にはデビュー作を含むコメディ短編集『中村工房』が刊行されています。
作風の芯にあるのは、ありえない設定と生活感のある日常の組み合わせです。河川敷で自給自足する住人たち、世紀末を越えて下界でバカンス中の聖人、北極のブラック企業で働くサンタ。舞台は突飛でも、描かれるのは家賃や節約、職場の人間関係といった身近な悩みで、そのずれが笑いを生んでいます。
もうひとつの特徴が、連載の重ね方です。2006年に『聖☆おにいさん』が始まってから、2015年に『荒川アンダー ザ ブリッジ』が完結するまでの約9年間は2本立て。1年ほどの間を置いて2016年に『ブラックナイトパレード』が加わり、そこから今回の最終回までの約10年も再び2本立てでした。掲載誌も出版社も異なる作品を、20年近く同時に抱え続けてきたことになります。
年代順にたどる中村光作品の歩み
ここからは、主要な連載作品を始まった順に見ていきます。どの作品も、1本目が軌道に乗った頃に次の1本が始まっているのが分かります。
2001年〜2002年、デビュー作と短編集『中村工房』
デビュー作『海里の陶』が載った「月刊ガンガンWING」は、スクウェア・エニックスの月刊誌です。その後に出た『中村工房』(中村光/スクウェア・エニックス)は全3巻のコメディ短編集で、のちの長期連載に通じるテンポの良い掛け合いを早くも楽しめます。代表作から入った読者が、作家の原点として手に取る1冊でもあります。
2004年、『荒川アンダー ザ ブリッジ』がヤングガンガンで始まる
『荒川アンダー ザ ブリッジ』(中村光/スクウェア・エニックス)は、2004年に「ヤングガンガン」で連載が始まりました。人に借りを作らないことを信条とするエリート青年・リクが、荒川で溺れかけたところを自称金星人の少女ニノに助けられ、河川敷で暮らし始めるところから物語が動きます。
河童の着ぐるみ姿の村長や星のかぶりものの男など、河川敷の住人はそろって強烈です。それでも根底には、借りや貸しで人とつながることへの問いかけがあり、ギャグとラブコメの間を行き来しながら2015年に完結しました。単行本は全15巻で、中村光さんの名前を広く知らしめた出世作です。
2006年、『聖☆おにいさん』がモーニング・ツーで並走開始
『聖☆おにいさん』(中村光/講談社)は、2006年にモーニング増刊「モーニング・ツー」で連載が始まりました。目覚めた人ブッダと神の子イエスが、東京・立川のアパートをシェアしながら下界でバカンスを過ごすという設定で、細かいお金を気にするブッダと衝動買いの多いイエスの日常が描かれます。
宗教上の聖人を主人公にしながら、ネタの中心は銭湯や商店街、ネットやテレビといった庶民の暮らしです。この作品が始まった時点で『荒川アンダー ザ ブリッジ』はまだ連載中で、ここから中村光さんの2本立てが本格的に始まりました。
『聖☆おにいさん』は現在も連載が続いており、最新23巻は2026年11月20日に発売予定です。『ブラックナイトパレード』12巻の発売とおよそ1か月違いで、年末は中村作品の新刊が続くことになります。
2016年、『ブラックナイトパレード』で2本立てが再び始まる
『荒川アンダー ザ ブリッジ』が完結した翌年、2016年11月に週刊ヤングジャンプで始まったのが『ブラックナイトパレード』(中村光/集英社)です。スクウェア・エニックス、講談社に続いて集英社の雑誌でも長期連載を持ち、出版社の異なる3つの青年誌でそれぞれ代表作を描いたことになります。
2019年には同じ集英社の月刊誌ウルトラジャンプへ移籍し、そこから7年ほど連載を続けて今回の最終回にたどり着いています。『聖☆おにいさん』と並走しながらの約10年で、荒川の約11年に迫る長さの連載になりました。
アニメ、ドラマ、映画と、3作品とも映像化されてきた
中村光さんの長期連載は、3作品すべてが映像化されています。最初は『荒川アンダー ザ ブリッジ』で、2010年4月から6月にテレビアニメ第1期、同年10月から12月に第2期が放送されました。2011年7月から9月にはTBS系で林遣都さん、桐谷美玲さん主演の実写ドラマが放送され、2012年2月4日には映画版も公開されています。村長役の小栗旬さん、星役の山田孝之さんの扮装は当時大きな話題になりました。
『聖☆おにいさん』は2013年5月10日に劇場アニメが公開され、森山未來さんがイエス、星野源さんがブッダの声を担当しました。2018年には松山ケンイチさん、染谷将太さんのW主演、福田雄一さんの演出で実写ドラマになり、2024年12月20日には実写映画『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』が公開されています。この映画は、中村光さんが映画化のために描いた原作エピソード「スクリーンへの長い途(みち)」がもとになりました。
『ブラックナイトパレード』も2022年12月23日に実写映画として公開されました。監督は福田雄一さん、主演は吉沢亮さんで、橋本環奈さんや中川大志さんらが共演しています。福田雄一さんは『聖☆おにいさん』に続いて2作目の中村作品を手がけたことになり、中村光さんのギャグとの相性の良さがうかがえます。実写映画化されたマンガ全体の傾向は、こちらの記事でも一覧にしています。
中村光作品と映像化の年表
ここまでの流れを年表にまとめました。連載の始まりと完結、映像化のタイミングを並べると、2本立ての時期がよく分かります。
| No. | 年 | 出来事 |
|---|---|---|
| 1 | 2001年 | 「月刊ガンガンWING」掲載の『海里の陶』でデビュー |
| 2 | 2002年 | 短編集『中村工房』刊行(全3巻) |
| 3 | 2004年 | 『荒川アンダー ザ ブリッジ』がヤングガンガンで連載開始 |
| 4 | 2006年 | 『聖☆おにいさん』がモーニング・ツーで連載開始(2本立てに) |
| 5 | 2010年 | 『荒川アンダー ザ ブリッジ』テレビアニメ第1期・第2期放送 |
| 6 | 2011年 | 『荒川アンダー ザ ブリッジ』実写ドラマ放送(TBS系) |
| 7 | 2012年 | 『荒川アンダー ザ ブリッジ』実写映画公開(2月4日) |
| 8 | 2013年 | 『聖☆おにいさん』劇場アニメ公開(5月10日) |
| 9 | 2015年 | 『荒川アンダー ザ ブリッジ』完結(全15巻) |
| 10 | 2016年 | 『ブラックナイトパレード』が週刊ヤングジャンプで連載開始(11月) |
| 11 | 2018年 | 『聖☆おにいさん』実写ドラマ化 |
| 12 | 2019年 | 『ブラックナイトパレード』がウルトラジャンプへ移籍 |
| 13 | 2022年 | 『ブラックナイトパレード』実写映画公開(12月23日) |
| 14 | 2024年 | 『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』公開(12月20日) |
| 15 | 2026年 | 『ブラックナイトパレード』最終回(10月19日)、12巻は12月17日発売予定 |
約10年の連載を見届けたあとに
10年近く続いた連載の完結は、読者にとってひとつの区切りです。途中で追いかけるのをやめていた人にとっては、最終巻の発売をきっかけに頭から読み直す良い機会にもなります。長期連載の完結という点では、18年半の連載に幕を下ろした『宇宙兄弟』(小山宙哉/講談社)の完結もこちらで取り上げています。
一方で中村光さんの場合、『聖☆おにいさん』の連載は続いています。1本が終わってももう1本が続いている、という状態は2015年の荒川完結のときと同じです。12月18日のウルトラジャンプで予告されている重大発表が何を指すのかも含めて、年末までは中村作品の話題が続きそうです。
12巻が出る前に、黒いサンタの物語を最初から読む
『ブラックナイトパレード』は現在11巻まで出ているので、12月17日の最終巻発売までに追いつくには、ひと月あまりで1日1冊のペースでも十分に間に合います。クリスマスを舞台にした作品なので、季節に合わせて読み進めると三春の職場の空気がより身近に感じられるはずです。
ギャグの好みが合ったなら、同じ作家の『荒川アンダー ザ ブリッジ』や『聖☆おにいさん』に手を伸ばすのもおすすめです。設定はまったく違っても、変わり者たちが寄り集まって暮らす楽しさという点で、3作品は不思議と地続きになっています。
年末の待合スペースに、完結したばかりのクリスマスマンガを
12月はクリスマスや年末年始の休みが重なる時期です。クリスマスを舞台にした作品は季節感がそのまま伝わるため、年末の棚づくりと相性が良いジャンルといえます。完結したばかりで最終巻まで手元にそろう『ブラックナイトパレード』は、途中で続きが読めなくなる心配がなく、滞在中に一気に読み進めてもらいやすい作品です。
あわせて『荒川アンダー ザ ブリッジ』や『聖☆おにいさん』を同じ作家の棚としてまとめれば、1作読み終えたお客様が次の1冊を選ぶ流れも作れます。1話完結に近い構成のギャグ作品は、待ち時間や湯上がりの短い時間にも読みやすいのが利点です。
スマートコミックでは、話題作や季節に合わせた作品の入れ替えを含めて、施設に合ったマンガコーナーづくりをお手伝いしています。料金表や導入事例は、下のリンクからご覧いただけます。
