投票率回復で注目を集めた2025年参院選!|政治へ興味を持てる漫画3選
投票率が回復した参議院議員選挙
7月20日に投開票が行われた参議院議員選挙。大方の予想通りに与党である自民党、公明党が大敗。一方で野党第一党である立憲民主党が伸び悩みつつ、国民民主党や参政党が議席を大幅に伸長、日本保守党やチームみらいが新たに議席を獲得しました。投票日が三連休の中日だったにも関わらず、投票率は58.51%と2022年の参院選から6.46ポイント増加したのは注目したいところです。
米をはじめとした物価高、不透明な政治資金、オーバーツーリズムや不法在留外国人などの問題を目の当たりにして、「投票に行った方が良いよね」と考えた人が増えた結果と思われます。それでも4割以上の人が投票していない現状は、まだまだ政治を縁遠いと考えている人が多そうです。そこで【政治へ興味を持てる漫画】をテーマに、3つの作品を紹介します。
政治へ興味を持てる漫画3選
■『極悪がんぼ』(原作:田島隆、作画:東風孝広/2001~2009年)
広島県を舞台に表向きは探偵事務所、裏では違法なことも甘受する事件屋として暗躍する人々を描いた作品。主人公である神崎守は経験を重ねた後、事件屋として先輩格だった金子千秋を地元の市議会議員に当選させるべく後押ししていきます。周囲を巻き込みつつ、まさに一票一票を積み重ねて当選。その後も市議会議員となった金子と事件屋の神崎は付かず離れずの協力関係を続けていきます。
地道に票を集めることを「どぶ板選挙」と表現するように、じわじわと人脈を広げて、神崎が金子を市議会に押し込んでいく様子は見事の一言。もちろん当の金子もつながった人脈を無駄にすることなく、当選した後も支援者の面倒をアレコレと見ていきます。小さな積み重ねが大きな力に繋がるのは、「うちの地元でもあるよね」と思えそうな内容です。
■『ゆとりの町長』(小坂俊史/2016~2018年)
失業&失恋して、東京から地元にUターンした町本ゆとり。あこがれていた先輩の意思を継いで町長選挙に立候補しました。彼女が持ち前のポジティブシンキングで、これまでに3選している現町長を相手に選挙を戦う様子をコミカルな4コマ漫画にしています。
過疎の進む地方では、報酬の低さもあって議員や首長のなり手を探すのも、ひと苦労なのだそうです。その意味では、やる気を十分持ったゆとりのような存在は貴重なのですが、足元も考え方もフワフワしているのは心配なところです。しかし、ガチガチに固まった既得権益を打破するのは、若さ頼りであってもポジティブなパワーなのかもしれないと思わせてくれます。
■『空母いぶき』(かわぐちかいじ/2014年~2019年)
20XX年、日本の領土である尖閣諸島を不法占拠した中国軍と、それを駆逐する自衛隊の活躍を描いた架空戦記。最前線で尽力する自衛隊とともに、後方で判断する政治家の対応を余すところなく描いています。作中において総理大臣である垂水慶一郎は、幾多の場面で難しい決断を迫られており、振り返れば最善とは思えなかった判断を下すシーンもありますが、逆にそこがリアリティを感じさせます。彼や自衛隊を取り巻く政治家、マスコミ、アメリカ、中国などの立場や思考も詳しく表現されています。
こんなにも日本のことを考える魅力的な総理大臣や政治家がいたらなあ、と思わせるような作品。ここまで苦労する政治家であれば、報酬や政治資金が多少高額でも認めたくなります。もっとも違法なものは論外ですが。なお、本作の約5年後を描いた『空母いぶき GREAT GAME』が2020年から連載中。こちらでは日本初の女性総理となった柳沢律子が登場します。ロシアとのあつれきに対して、垂水前総理と同様に難しい決断を迫られています。
3つの漫画で学べるポイント
身の回りのささいな出来事から、国と国との外交や貿易まで、それらの大元になっているのが政治であり、それに直接携わるのが政治家です。
『極悪がんぼ』と『ゆとりの町長』は大きなイベントにもなっている選挙や、その前後の政治活動を泥臭く、またコミカルな漫画にすることで、ふとしたことでも政治や政治家につながっているのが理解できるでしょう。
市議会議員や町長は多くの人にとって比較的身近な存在ながら、自分が住んでいる場所の議員や首長について詳しく知らない人も少なくなさそうです。そうした政治家の経歴や実績を再確認するのも面白いと思います。
『空母いぶき』では、外交や防衛といった高度に感じられる政治的判断も、小さな出来事や思考の積み重ねとなっていることが分かります。日本を代表する総理大臣であっても、皆さんの一票が最終的には総理大臣に繋がっているのは間違いありません。 「こいつが最低の政治家と思ったら、もっと最低の政治家が出てくる」のように批判されることも多い政治の世界ですが、政治家の判断の元になっている出来事には、どんなものがあるかを『空母いぶき』から読み取って欲しいと思います。
まとめ – 行動を決めるのは“あなた”
漫画やドラマなどで「モブ」と呼ばれるキャラクターがあります。英語で群衆や大衆を意味する「mob」が語源で、先にあげた3作品にも大勢のモブが登場します。しかし、モブであっても1人1人に思想や信条があり、それに基づいて行動しているはずです。問題は、それが表に出るか出ないかでしょう。作品の中では、ストーリーやキャラクターに影響を与えない存在だからこそ、モブとなってしまいます。
しかし現実の生活でモブになって良いのでしょうか。生きている以上、誰もが何らかの形で周囲に影響を与えているはずです。その影響のひとつである選挙に行かないのは残念なことに思えます。今回取りあげた3作品を読んで、もっと政治に興味を持ってみませんか。
(執筆: 県田勢)