あらゆる人物の仕事観をリアルに描く! 『働きマン』

「上司と反りが合わない」「仕事内容が能力に合っていない」などの理由で、なんとか出社しているものの働く意味を見失いそうになっている人は少なくないのではないでしょうか。
実際にこういったことが積み重なり、うつ病になってしまう人も多いといいます。そんな人たちにおすすめするのが、安野モヨコ先生の『働きマン』です。2024年6月には17年ぶりに最新刊が発表され、総発行部数は400万部を超えています。
日々悩みながらそれぞれの仕事・人生に向き合う人々を描いた物語
大手出版社の豪胆社から発行されている週刊誌「JIDAI」。その編集部を舞台にした本作の主人公は、雑誌編集者として働く松方弘子です。
時には編集長・上司・同僚たちと一緒に迷ったり、苦しんだりしながら良い雑誌を作ることを目指し、仕事には妥協を許さない姿勢で臨んでいます。
プライベートを犠牲にしても仕事に没頭することから、ついたあだ名はタイトルにもなっている『働きマン』。
本作は、主人公の松方と彼女に関わる個性豊かな編集部員たちを通して「働くとは何か」「仕事とは何か」について向き合う姿を描いた物語です。
『働きマン』を読んでもらいたい2つの理由
それぞれのキャラ設定がしっかりしている
本作には、主人公の松方弘子をはじめ、デスクの成田君男、張り込み屋の菅原文哉、彼氏の山城新二など、個性豊かな人物が次々と登場します。
成田は危ない橋を渡らない要領の良さと、常に余裕を持った態度で接している「生き方上手」な一面があります。それでいて、周囲を納得させる口のうまさもあわせ持っている、社内にひとりはいそうなタイプの人物です。
菅原文哉は、入社から9年間スクープを取るための張り込みを専門にやり続けています。そんな彼は、無愛想で無骨・無口。苦手意識があるのか女性と仕事をしたがりません。
山城新二は松方の恋人で、温厚な人当たりの良いタイプです。勤務先は大手ゼネコンで、現場監督を経て営業の仕事をしています。しかし、現状とやりたいことのギャップや熱意を持って仕事ができないことに悩みを持っている様子。
各回のタイトルは、その回で取り上げる人物の特徴より「〇〇マン」とつけられ、見るだけで誰を取り上げるのかわかるようになっています。
【タイトルの一例(『働きマン』1巻より)】
・女の働きマン(主人公・松方弘子)
・おいしいところを持ってきマン(上司・成田君男)
・張り込みマン(張り込み専門・菅原文哉)
・あやまりマン(仕事に悩む彼氏・山城新二)
令和の現在と平成を比較する材料になる
本作の連載開始は2004年で、現在(2024年)から20年前。休載したのが2008年なので、休載から数えて16年前の作品です。
そのため、全巻まとめて読んでみると、現在と連載当時(2000年代)における職場環境の違いがよくわかります。
・喫煙シーンの多さ(主人公や同僚、編集長が堂々とタバコを吸っています)
・携帯電話はいわゆるガラケー、ノートパソコンが分厚い
・紙資料と新聞がデスクに山積みされている
・女性は細眉
・男性は編集部員・ライターともオラオラ系が多い
いずれも2000年代はよく見られた光景です。しかし、2010年代に入るとともに減っていき、令和になった現在ではほとんど見られません。
この時代に働き盛りだった40代後半~50代にとっては、懐かしく感じられる人も多いと思います。2010年代以降に社会人になった人は、働く環境の移り変わりを知るために読んでみるのもいいでしょう。
「働くとはなにか」を見直すのに最適な一冊
2006年にノイタミナ(深夜アニメ枠)でアニメ化され、2007年には日本テレビ系列で菅野美穂さん主演でドラマ化されたことで話題となった本作。
2008年に作者の安野モヨコ先生が長期休載を発表して以降、新エピソードが発表されていないため、やや古い作品となっています。
しかし、働く意味そのものは現在でも変わりありません。
平成の終わり頃から徐々に風向きも変わり、令和になってからは多様性も認められるようになってきたものの、2000年代はまだそこまで主流な考えではありませんでした。そんな中で「自分らしく生きたい」と願い行動した、松方弘子の軌跡をぜひお読みください。