悲劇の王妃はマッチョだった!? 抱腹絶倒の歴史改変ロマン『パワー・アントワネット』

皆さんはフランス革命という出来事をご存知でしょうか? おそらく学校の授業で習うので知らない人は少ないと思いますが、18世紀末に起こった大規模な市民革命のことですね。
ここで夫のルイ16世とともに処刑された王妃が、マリー・アントワネット。これまた多くの人が知っているであろう有名人ですが、彼女を題材にしたトンデモない作品が登場して高い評価を受けています。
今回はそんな美しく優雅で強すぎる王妃が大暴れする『パワー・アントワネット』をご紹介します。
我々の知ってる歴史と違う……?
舞台は革命の嵐が吹き荒れる18世紀のフランス。国民を愛し、国民のため尽くしてきたマリー・アントワネットは、革命派によって捕らえられ処刑の判決が言い渡されました。
人生最期の朝もマリーはダンベルで上腕二頭筋を鍛え、プロテインを摂取しています。
なにか違和感をおぼえる冒頭ですが、ともかくギロチンがある広場へ移送されるマリー。被告の言い分を一切聞かない処刑判決は理不尽なものの、愛する国民が決めたことなら仕方ない、と彼女は抵抗せず従います。
しかし刑場へ向かう途中、沿道を埋め尽くす群衆から信じられない言葉が聞こえました。
「お前の子を嬲り裂いて街頭に吊るしてやる」
すでに夫は処刑され、自分も今から後を追うが、まさか幼い子たちまで殺そうというのか。これが私の愛するフランスの民か? 革命の陶酔に浸っているただの酔っ払いだ。
吹っ切れたマリーは鍛え抜いたパワーを開放。
落下してくるギロチンの刃を素手でつかみとり、襲い来る武装兵たちを筋力、そして宮廷格闘術で撃退します。
もはや愛すべきフランスの民はいない。ならば私がたったひとりのフランスになる。
こうして美しき王妃が作り出す筋肉(フランス)の新たな歴史が始まるのでした……!
筋肉至上主義が生み出すカタルシスが心地よい
ざっくりストーリー概要を見てわかるように、本作は史実をもとにしたギャグ&アクション作品です。
もしマリー・アントワネットが死の運命に反逆したら? もし彼女が極限まで肉体を鍛えていたら? もし当時のヨーロッパが筋肉を重んじる価値観だったら? そんな歴史の「IF」を詰め込んだロマンとも言えますね。
筋肉と書いて「フランス」とルビをつける言語センスが独特で、作中では筋肉こそフランスの誇りであるようです。
また革命側の兵士が使う銃器をマリーは「共和筋肉」と呼び、こちらは鍛錬をしなくても手に入るお手軽な武力という意味の蔑称らしいです。
パンがなければケーキを食べればいいじゃない、と史実のマリー・アントワネットは言い放ったそうですが、こっちのマリーは「パンがなければ己を鍛えなさい」と名言を残しています。
どれもこれも意味がわかりませんね。私もわかりません。たぶん作者もわかっていない気がしますが、この何ともいえない勢いが本作最大のおもしろさでしょう。力こそパワーですよ。
そんなマリーは処刑場を突破し、彼女を慕う数少ない仲間とともに愛する我が子を助けるため各地で転戦。
高潔なる筋肉義務(ノブレス・オブリージュ)を心に秘め、圧倒的パワーによるゴリ押し(シャンゼリゼ)で敵中を突破していくマリーの筋肉(フランス)は、もはや言葉など必要ないほどのワクワク感とカタルシスに満ちています。
広くオススメしたい痛快娯楽活劇!
ちなみに本作、元はといえば原作者がTwitterでつぶやいた単なるネタだったそうです。
それがあれよあれよという間に拡散され、まだ新人賞を獲得しただけでプロデビュー前だったにも関わらず「パワー・アントワネット」がTwitterでトレンド入りする始末。
責任をもって本人が執筆することになり、それがめでたく小説として刊行。さらに今回ご紹介した漫画版へつながっていきます。
アクション要素が強めなだけにコミカライズとの相性は良く、このまま勢いでアニメ化も狙ってほしいところですね。
勢いだけのレビューになりましたが、本当に勢い全振りで最強の痛快娯楽歴史ロマンとなっています。これはもう「読むプロテイン」と言っても過言ではありません。
元気の出る漫画が読みたい人、歴史が好きな人、バトルヒロインが好きな人、そして筋トレが好きな人。幅広い層に刺さる良作なので、ぜひ手にとってみてください!