できない子も恋をする! 容易にハーレム化しないのが魅力の『ぼくたちは勉強ができない』

タイトル | ぼくたちは勉強ができない |
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ジャンル | 少年漫画 |
作者 | 筒井大志 |
出版社 | 集英社 |
掲載誌 | 週刊少年ジャンプ |
巻数 | 全21巻 |
主人公 | 唯我成幸 |
【少年漫画】ラブコメディ『ぼくたちは勉強ができない』を解説―アニメ化作品(メディア化)―
週刊少年ジャンプの人気作品で、アニメ化も二度された『ぼくたちは勉強ができない』。
主人公の唯我成幸(ゆいが なりゆき)は家が貧乏ではあるが、学校の成績は優秀。そこへ学園長自ら「できない生徒」二人の指導者になって欲しいと頼まれ、その報酬は行きたい大学への推薦状。成幸は悩みますが、ひとまず引き受けてみます。
一人の生徒は緒方理珠(おがた りず)。数学の天才でありながら、文系を目指し、心理学に興味がある不思議系女子です。もう一人は古橋文乃(ふるはし ふみの)。こちらは国語の天才でありながら、幼い頃から天文学者を目指していて、理系の大学に進みたいと思っています。
そう! 自分にはちゃんと得意分野があるのに、あえて真逆の方向の進路を希望しているのです! 成幸はそんな二人に勉強を教えつつ、自分も猛勉強します。
成幸の幼馴染の武元うるかや、浪人中で医大を目指す小美浪あすみ、教師の桐須真冬先生など、成幸に関わる女子は大勢いるのですが、ひたすら勉強の成幸は、よくあるハーレムものの主人公のようにはなりません。ラッキースケベもほとんど起こらず、机の下で足が当たっただけで赤面する純情少年。現実にはありえないハーレムものに辟易している人には、優しい世界観になっています。
成幸は彼女たちと交流していくうちに、それぞれの「できない子」が、なぜできる方ではなくできない方を目指すのかを知っていきます。どの女子も深い理由を持っています。そして成幸を拒絶していたはずの女子たちも、真摯に各人用のノートを徹夜で作ってきてくれる真剣な成幸に心を許していくのです。彼は今までの教師のように、自分たちの進路を無理やり変えさせようとはしない、と──。
実は週刊少年ジャンプで本編は一旦最終回を迎えたのですが、その後「ifルート」として、あのとき花火を一緒に見たのが○○だったら……という設定で、他の女子とのグッドエンドを連載中(2020年8月末現在)。ここは自分の推しの女子が哀しい顔をするのを見たくないという、さまざまな読者に対するサービスとも言えるでしょう。作者も、誰が最後に成幸とうまくいくのかを考えて悩んだのかも知れませんね。
基本的にラブコメではありますが、シリアス要素もあり、父子のすれ違いや自分との戦い、恋愛をとるか好きなものをとるか、などという葛藤がそこかしこに出てきます。女子同士もお互いの成幸への感情を知っても、変に感情的にならず、「決めるのは唯我くんだもんね」と穏やか。だからこそ、抜け駆けのような真似はしたくないという気遣いも見られるのです。
最終回付近では、あらゆる「できない女子」たちが成幸に手を貸してくれます。ここはもう、人徳としか言いようがないですね。成幸はそれほど慕われる人柄なのです。さらに加えると、成幸の友人の小林くんは超イケメン! カワイイ系イケメンで、性格も良い! 男子キャラにも愛されている成幸が羨ましすぎます!
実は最終回は本誌よりも先にアニメでネタバレしてしまったので、ファンは「原作はどう来る? まさかの他エンドか?」と一時沸き立ちましたが、本誌も同じままで終了し、ifルートでファンを喜ばせています。読んでいて勉強にもなりつつ、人の心模様や家族のありがたさ、友情の厚さなど、さまざまな要素が詰まっている作品です。 勉強と恋愛以外の大切なものもたくさん詰まっていると言えるでしょう。いろいろな意味で勉強になります。リアルにより近い恋愛ものを求めている読者には、ぴったりなのではないでしょうか?