RevPAR・ADR・OCC・GOPの計算方法と実務での使い方——ホテル経営指標の完全ガイド

ホテル経営の状態を「数字で把握する」ための基本指標が、RevPAR、ADR、OCC、GOPの4つです。名前は聞いたことがあっても、「自施設の数字を毎月計算しているか」と問われると、答えに詰まる経営者は少なくありません。
本記事では、各指標の計算方法を具体例で解説し、「計算した後にどう使うか」の実務活用までをカバーします。経営の全体像と収支シミュレーションは「ホテル経営の収支構造を完全解説」で解説していますので、本記事はその中の指標部分を深掘りする位置づけです。
ADR(Average Daily Rate)——平均客室単価
計算式 ADR = 客室売上 ÷ 販売室数
30室のホテルで月間の客室売上が576万円、販売室数が720室(稼働率80%)の場合、ADR = 576万円 ÷ 720室 = 8,000円。
ADRが示すのは「1室あたり平均いくらで売れたか」です。値引きやクーポンの影響もここに反映されるため、「定価」ではなく「実勢価格」を把握できます。
実務での使い方として、ADRの月次推移を追い、前年同月と比較する。ADRが下落傾向なら「値引き依存が進んでいないか」を確認。上昇傾向なら「稼働率が犠牲になっていないか」をRevPARで確認します。
OCC(Occupancy Rate)——稼働率
計算式 OCC = 販売室数 ÷ 販売可能室数 × 100
30室のホテルで月間販売室数が720室、販売可能室数が900室(30室×30日)の場合、OCC = 720 ÷ 900 × 100 = 80%。
OCCが示すのは「客室がどれだけ埋まったか」です。ホテルは固定費型ビジネスのため、一定以上の稼働率がなければ固定費を回収できません。
実務での使い方として、曜日別・月別のOCCを分析し、「埋まらない日」を特定する。火曜・水曜の稼働率が極端に低いなら、その曜日に絞った料金施策や法人プランの設計を検討します。
ただし、稼働率100%が常に最善ではありません。ADRを大幅に下げて100%にするよりも、ADRを維持して80%のほうが利益が大きいケースもあります。OCCは単独ではなく、必ずADRとセットで見てください。
RevPAR(Revenue Per Available Room)——1室あたり売上
計算式 RevPAR = ADR × OCC(または、客室売上 ÷ 販売可能室数)
ADR 8,000円 × OCC 80% = RevPAR 6,400円。 ADR 10,000円 × OCC 70% = RevPAR 7,000円。
後者のほうがADRは高く稼働率は低いですが、RevPARは高い。つまり「利益は後者のほうが大きい可能性が高い」ということです。
RevPARはADRとOCCのバランスを1つの数字で表す、ホテル経営で最も重要な指標です。「ADRを上げたら稼働率が下がった。結局どっちが得だったのか?」——この問いにRevPARが答えを出します。
実務での使い方として、RevPARの月次推移を追うことで、料金戦略の効果を一目で判断できます。料金を上げた月にRevPARが上がっていれば成功。RevPARが下がっていれば「値上げで逃した客数のほうが大きかった」ということです。
競合ホテルとのRevPAR比較も有効です。自施設のRevPARが地域平均を下回っていれば、ADRとOCCのどちらに課題があるかを分解して特定します。
GOP(Gross Operating Profit)——営業粗利益
計算式 GOP = 営業収入 − 運営費用(人件費+食材費+光熱費+清掃費+OTA手数料等)
GOPには減価償却費、家賃・ローン返済、保険料などの「所有に紐づく費用」は含めません。つまりGOPは「ホテルの運営がどれだけ効率的に利益を生んでいるか」を示す指標です。
GOP率の計算は、GOP ÷ 総売上 × 100。一般的な目安として、ビジネスホテルで30〜35%、シティホテルで25〜30%、旅館で15〜25%程度とされますが、業態・規模・立地によって大きく異なります。
実務での使い方として、GOPを部門別(客室部門・料飲部門・宴会部門等)に分けて管理すると、「どの部門が利益を生み、どの部門が足を引っ張っているか」が明確になります。客室部門は一般的にGOP率が高く、料飲部門は人件費と食材費で率が低くなる傾向があります。
GOP率の改善方法は「ホテルのGOP率を改善する——利益を残す経営のための実践アプローチ」で詳しく解説しています。
4指標を組み合わせて判断する
4つの指標はそれぞれ単独では片手落ちです。組み合わせることで初めて経営判断に使えます。
ADRが上がってもOCCが下がれば、RevPARで総合判断する。RevPARが上がっても運営コストが増えていれば、GOPで最終判断する。
月次で「ADR → OCC → RevPAR → GOP」の4指標をこの順番で確認する習慣をつけると、「何が起きているか」「次に何をすべきか」が数字で見えるようになります。
まずは今月分だけでも、この4つの数字を計算してみてください。
