財宝を手にするのは誰か!? 超ド級の冒険活劇『ゴールデンカムイ』

皆さんはタフな男たちが躍動するアドベンチャー物はお好きでしょうか? 往年の名作映画『インディ・ジョーンズ』、そして現代の漫画では『ONE PIECE』など、衰えることのない人気ジャンルですよね。
さて今回は男だけでなく女性キャラも非常にタフな、冒険・アクション・グルメ・謎解きすべて詰まった大人気作『ゴールデンカムイ』をご紹介します。
2014年から2022年まで週刊ヤングジャンプ誌上で連載され、コミックスは全31巻で完結。単行本の累計発行部数は2,300万部超え。TVアニメは第4期まで制作され、実写映画化も決定するなど、いまや日本を代表するコンテンツと言ってもよいでしょう!
アイヌの財宝を探す兵士と少女
時代は20世紀初頭。日露戦争を生き延びて除隊した青年・杉元 佐一が主人公です。心優しい彼は幼なじみの手術費用を稼ぐため北海道で砂金掘りをしていましたが、ひょんなことから「北海道のどこかにアイヌの集めた莫大な金塊が眠っている」という噂を聞きます。
最初はホラ話かと思っていた杉元ですが、その話を聞いたとたんに自分が殺されかけることになり、噂は真実だったと確信。ある理由から金塊を探すという目的が一致したアイヌの少女・アシリパ(正しい表記はアシㇼパ)を相棒にして、北海道の地で果てしなき冒険が開幕します――!
「和風闇鍋ウエスタン」は伊達じゃない!
そんな流れで始まった本作のストーリーですが、どこをどう紹介すればいいのかわからないほどエンタメ要素が詰まっています。なにせ公式がジャンルを「和風闇鍋ウエスタン」と命名したほどですから、あらゆる面白さを内包していると言えるでしょう。
ここからは、特に楽しいと感じたポイントを4つに分けて紹介してみます。
【1.ワイルドで美味しいアイヌ流の北海道グルメ】
まだ人間の手が現代ほど入っていない時代の北海道ですから、大自然がいっぱい! 杉元たち金塊探しの一行は、アイヌ伝統文化に詳しいアシリパの知恵を借りて現地の狩猟&料理を体験しまくります。
新鮮な肉を細かく叩いて刻み、あますところなく栄養をいただく「チタタプ」、肉や野草の旨味たっぷりの汁物「オハウ」など、見ているだけでヨダレが出てくる豊穣なアイヌ食文化は一読の価値ありです。
さらに冒険の舞台が北海道から樺太まで広がっていくため、アイヌ料理に限らないさまざまなグルメも登場。エゾシカ肉のライスカレー、シャチの竜田揚げ、ある理由からファンにとてつもない衝撃を与えたラッコ鍋(ネタバレのため解説は自粛)など飯テロ度は漫画界でもトップクラスでしょう。
凄惨な殺し合いシーンも多いため、随所に散りばめられたグルメ描写は本当になごませてくれます。
【2.練り込まれた財宝探しのミステリー】
杉元が聞いた黄金の噂話は軍部の人間やテロリストたちにも伝わっており、他勢力より早く宝を見つけるため、ある物の奪い合いが発生します。ある物とは「脱獄囚の生皮」!
なんと財宝のありかを知る唯一の人間は獄中にいるため、暗号化したお宝の情報を24人の囚人にイレズミ地図として彫り込んでいたのです。彼らは監獄から抜け出して北海道のあちこちで独自の思惑によって動いています。イレズミに記された暗号は1人分だけでは何のヒントにもならず、完全な情報を得るためには脱獄囚たちの皮膚をひっぺがして1枚の大きな地図につなげなければいけません。
財宝を探すのは杉元とアシリパ、他には陸軍第7師団の猛者たち、さらに戊辰戦争で死んだと思われた新選組の土方歳三などクセのある面々ばかり。それぞれの勢力が時には殺し合って、時には協力して、ここぞという時には裏切って……誰がアイヌの財宝にたどり着くのかラストまで本当に目が離せません。
【3.生き残りを賭けた壮絶なバトル】
『ゴールデンカムイ』を語る上で忘れてはならないのが、強靭な肉体と精神を持ったキャラクター同士のバトルでしょう。
主人公は鬼神のごとき戦闘力と、どんな重傷を受けても死なない生命力から「不死身の杉元」と呼ばれる最強クラスの人類です。しかし敵たちも彼に劣らず、個々の練度と人数で優位に立つ第7師団の兵士、老いてなお圧倒的な剣術を誇る新選組の生き残りたちなど一筋縄ではいかない相手ばかり。
おまけに舞台が北海道ですから、敵が人間だけとは限りません。訓練された兵士を一瞬で殺害するヒグマをはじめ、野生動物たちもおそろしい脅威として描かれます(倒した後は北海道グルメとして胃袋に収まりますが)。
刃物で、銃で、爆発物で、毒物で、そして素手の格闘技で。 すさまじいバトルシーンの迫力だけでも、本作は一流だと言えるでしょう。
【4.怖いけど笑える、奇人変人ショー】
最後の見どころは、登場人物のかなり多くが常軌を逸した「変人」に設定されているところでしょう。
墓から盗んできた死体を素材に芸術品を作ろうとする者、自分が殺されるところを想像して興奮する者、野生動物と交尾(!)することに命をかける者、殺した若者から体のパーツを移植して自身の老いた肉体を若返らせようとする者など、なかなか他の作品では見られないようなキャラクターが続々と登場します。
あまりの変態ぶりに乾いた笑いが出てしまう、独特なノリを楽しめると思います。
クセは強いけど、ぜひ一読を!!
そんなわけで『ゴールデンカムイ』の特色をいくつか紹介してきましたが、まだまだ到底すべてを語り尽くせません。卓越した画力、キレのあるギャグ、そこから一転してシリアス展開や感動シーンにつなげる構成力……よくここまで面白さを追求できたなと驚く完成度です。
ストーリー序盤では目的がたまたま一致した旅の相棒、くらいな関係だった杉元とアシリパの2人が、さまざまな出来事を経て最終的には「無二のパートナー」になっていく感情描写も見事でした。
バイオレンスと死体描写が多く、やたらイケメンマッチョの裸体が登場するなど読者を選ぶところはありますが、万人向け路線を捨てた結果として多くの熱狂的ファンを得るに至った本作。まるでクセの強い豚骨ラーメン店のような不思議な魅力があります。
この作風が合うか合わないかは第1巻を読めばわかるはずなので、まずは心踊る大冒険ストーリーの序盤だけでも体験していただきたいと思います!