世界初”ポケモン空港”が7月7日開港! 佐賀キングダムに続く「マンガ空港」ブーム、そのルーツは30年前の”妖怪列車”だった
2026年、日本の「空の玄関口」が次々とマンガ・アニメに塗り替えられています。1月には作者の故郷・佐賀県を舞台にした「佐賀キングダム空港」が登場して大きな話題を呼び、続く7月7日には、なんと世界ではじめて「ポケモン」の名を冠した空港「のと里山ポケモン・ウィズ・ユー空港」が能登半島にオープンします。
到着ロビーを出た瞬間に物語の世界へ飛び込める——。そんな仕掛けが、いまや旅のはじまりの”定番演出”になりつつあります。
ところで、ふと気になりました。この「空港×マンガ」という流行は、いったいいつ始まったのでしょうか。佐賀キングダムが最初ではないはずです。たどっていくと、その源流は意外なほど古く、しかも「空港」ではなく「駅」と「電車」にあったのです。今回は、交通拠点がマンガに染まっていった約30年の歩みを振り返ってみたいと思います。
すべては境港から。1993年、「鬼太郎列車」が走り出した
物語の出発点は、鳥取県・境港市です。
『ゲゲゲの鬼太郎』で知られる漫画家・水木しげる先生の出身地であるこの町では、1993年(平成5年)7月、商店街の活性化を目的に、妖怪のブロンズ像が並ぶ「水木しげるロード」が誕生しました。最初はわずか23体の像から始まった取り組みでしたが、これがいまや178体(2024年時点)に増え、年間数百万人が訪れる一大観光地へと成長しています。
そして見逃せないのが、このロードの誕生に合わせて、米子駅と境港駅を結ぶJR境線で「鬼太郎列車」が走り始めたことです。車体の外側はもちろん、天井や座席までキャラクターで埋め尽くされ、車内アナウンスはアニメの声優陣が担当するという徹底ぶり。さらに2005年には、境線の全16駅に「ねずみ男駅」(米子駅)「鬼太郎駅」(境港駅)といった妖怪名の愛称までつけられました。
「町」も「電車」も「駅」も丸ごとひとつの作品世界にしてしまう——。いま空港で起きていることの原型は、すでに30年以上前、ここで完成していたのです。
「駅」から「空港」へ。マンガ愛称空港の先駆け、米子と鳥取
この成功体験が、やがて空へと広がっていきます。
口火を切ったのは、またしても鳥取県でした。2010年(平成22年)4月、境港にほど近い美保飛行場が**「米子鬼太郎空港」**という愛称を使い始めます。マンガ作品に由来する空港愛称としては、まさに先駆けといえる存在です。境線の終着点が「鬼太郎駅」なら、その先の空も鬼太郎で——という、見事に一貫した”妖怪ワールド”が完成しました。
その流れを受け継いだのが、同じ鳥取県の鳥取空港です。2015年(平成27年)3月、観光地「鳥取砂丘」と、県出身の漫画家・青山剛昌先生の代表作『名探偵コナン』を掛け合わせた「鳥取砂丘コナン空港」が誕生しました。館内にはコナンと蘭の等身大フィギュア、トリックアート、青山先生の描き下ろしイラストなどが並び、空港そのものが観光スポット化。愛称使用後には利用者数が前年同月比で伸びるなど、いわゆる「コナン効果」を示す数字も出たと報じられました。
こうして「地域の知名度を、その土地ゆかりの作品で一気に高める」という手法は、空港運営の有力な選択肢として定着していったのです。
そして2026年。空港は「名前」から「体験」へ
愛称を変える段階から、空港まるごとを舞台装置に変える段階へ。その進化を象徴するのが、本サイトでもお伝えした「佐賀キングダム空港」です。
2026年1月27日、作者・原泰久先生の故郷である佐賀県で、九州佐賀国際空港が期間限定で「佐賀キングダム空港」に変身。館内装飾や特別展に加え、有明海沿いの防波堤に最新刊までの全ページを掲出した全長300メートル超の「キングダム読破堤」、激闘シーンを特産品「佐賀海苔」のステッカーで隠す遊び心まで——。単なる名前の付け替えではなく、「訪れて、歩いて、読んで、笑う」体験そのものをデザインする方向へと、空港コラボは進化していました。
そして2週間で2.4万人を動員し、当初3月末までだった会期が延長されたことは、皆さんもご存じの通りです。
世界初!「のと里山ポケモン・ウィズ・ユー空港」が7月7日開港
その進化の最前線に登場するのが、2026年7月7日にオープンする「のと里山ポケモン・ウィズ・ユー空港」です。能登半島の空の玄関口・のと里山空港(石川県輪島市)が、世界ではじめて「ポケモン」の名を冠した空港として、2029年9月末までの期間限定でリニューアルされます。
これは単なる観光企画ではありません。石川県とポケモン・ウィズ・ユー財団が結んだ、令和6年能登半島地震の被災地に笑顔を届けるための連携協定にもとづく取り組みで、「地元の子どもたちでにぎわう空港に、そして全国のポケモンファンが能登を訪れるきっかけに」という想いが込められています。
仕掛けの規模も圧巻です。2階の吹き抜けには大きなピカチュウと飛行機のバルーンが浮かび、空港敷地内には2026年5月時点で発見されている「ひこうタイプ」のポケモン111種すべてが装飾されているとのこと。見学者デッキ「ピカチュウのさとやま」には数えきれないほどのピカチュウが集合し、スマホで楽しめる空港オリジナルのショート動画、限定グッズ、オリジナルメニューまで用意されます。まさに「空港そのものがアトラクション」と呼ぶにふさわしい体験型の空間です。
「鬼太郎駅」から始まった交通拠点×マンガの物語は、ここでひとつの到達点を迎えた、といえるかもしれません。
余談 空を飛ぶマンガの”元祖”は「ポケモンジェット」だった
ちなみに、空港ではなく「飛行機そのもの」にまで目を向けると、キャラクターと空のコラボにはもうひとつ古い源流があります。1998年、ANA(全日本空輸)が就航させた世界初の「ポケモンジェット」です。機体の外装だけでなく、座席カバーから機内ムービーまでポケモン一色という、当時としては画期的な特別塗装機でした。
そして偶然にも、2026年はポケモン誕生30周年。これを記念してANAは「ポケモンジェット」を約10年ぶりに復活させ、赤・緑・青をテーマにした3機を順次就航させると発表しています。地上の空港(のと里山)と、空を飛ぶ機体(ポケモンジェット)の両方でポケモンが舞う——2026年は、空とマンガがこれまでになく接近する一年になりそうです。
なぜ今、「交通拠点 × マンガ」なのか
こうして約30年の流れを並べてみると、ひとつの共通点が見えてきます。それは、マンガには「人を、その場所まで足を運ばせる力」があるということです。
駅も空港も、本来はただの「通過点」です。けれど、そこに愛される物語が宿った瞬間、通過点は「目的地」へと変わります。鬼太郎に会うために境港へ、コナンに会うために鳥取へ、キングダムの世界を歩くために佐賀へ、ピカチュウに迎えられるために能登へ。作品をきっかけに人が動き、地域に活気が生まれ、ときに復興の後押しにもなる。マンガIPの活用が、単なる装飾ではなく地域戦略の柱になりつつある理由が、ここにあります。
そしてこの「物語で人の心を動かし、その場所のファンにする」という発想は、空港や駅のような大きな施設だけのものではありません。ホテルや旅館、温浴施設、待合スペース——お客様が”ふと過ごす時間”が生まれる場所であれば、規模を問わず応用できる考え方なのです。
個人の皆様へ。物語を片手に、旅に出かけてみませんか
もし旅の予定があるなら、ぜひ次の行き先候補に「マンガ空港」を加えてみてください。妖怪に見送られ、名探偵に迎えられ、ピカチュウと一緒に旅立つ——そんな体験は、目的地に着く前から旅を特別なものにしてくれます。
「作品はまだ読んだことがない」という方も、この機会に世界観に触れておけば、現地での感動は何倍にもふくらむはず。お気に入りの一作を見つけて、物語ごと旅に持っていきましょう。
施設運営者の皆様へ。「通過点」を「目的地」に変えるヒント
空港の事例が教えてくれるのは、「人は、物語に会うために移動する」という普遍的な事実です。これは、お客様をお迎えするすべての施設に通じるヒントでもあります。
ロビーや休憩スペースに作品の世界をそっと添えるだけで、その場所は「ただ立ち寄る場所」から「また来たい場所」へと変わります。弊社では、こうしたマンガの力を活かした空間づくりを、施設の規模やコンセプトに合わせてお手伝いしています。お客様の滞在体験にもう一段の彩りを加えるきっかけとして、まずは「マンガのある空間」から始めてみませんか。
【交通拠点 × マンガ・アニメ コラボ年表】
| 年月 | トピックス |
|---|---|
| 1993年7月 | 水木しげるロード(境港市)オープン。あわせてJR境線で「鬼太郎列車」運行開始 |
| 1998年7月 | ANA「ポケモンジェット」就航(世界初のキャラクター特別塗装旅客機) |
| 2005年3月 | JR境線の全駅に妖怪名の愛称を付与 |
| 2010年4月 | 「米子鬼太郎空港」誕生(マンガ由来の空港愛称の先駆け) |
| 2015年3月 | 「鳥取砂丘コナン空港」誕生 |
| 2026年1月 | 「佐賀キングダム空港」期間限定オープン(体験型コラボ) |
| 2026年7月 | 「のと里山ポケモン・ウィズ・ユー空港」開港(世界初のポケモン冠名空港、2029年9月末まで) |
| 2026年内 | ANA「ポケモンジェット」が約10年ぶりに復活(ポケモン30周年) |
参考リンク
