「紙のマンガ vs. 電子マンガ」で読後の脳活動に差 東大などの研究から見えた紙の読書体験の価値

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電子書籍やスマートフォンでマンガを読むことが当たり前になった今、紙のマンガにはどのような価値があるのでしょうか。

読みたい作品をすぐに購入できること、持ち運びやすいこと、保管スペースを取らないことなど、電子マンガには多くのメリットがあります。日常的にスマートフォンやタブレットでマンガを楽しんでいる人も多いはずです。

一方で、紙のマンガには、ページをめくる感覚、見開きで作品全体を味わう体験、本棚から偶然作品を手に取る楽しさなど、デジタルとは異なる魅力があります。

こうした「紙のマンガ」と「電子マンガ」の読書体験の違いについて、東京大学大学院総合文化研究科の研究チームなどが、fMRIを用いて脳活動を調べた研究成果を発表しました。

研究では、紙のマンガを読んだ場合、電子書籍で読んだ場合に比べて、その後の読解や問題解答に関わる脳活動が抑えられる、いわば“省エネ化”する傾向が確認されたとされています。

今回は、この研究から見えてくる紙のマンガの価値と、施設におけるマンガコーナーの可能性について考えてみます。

目次

「紙のマンガ vs. 電子マンガ」で何が分かったのか

今回の研究では、同じ物語を複数の登場人物の視点から描く「ザッピングストーリー」形式のマンガが使われました。

参加者は、物語の前半を紙の本またはタブレットで読み、その後、MRI装置内で後半をデジタル画面を通じて読みます。そして、物語の内容に関する問題に答える際の反応や脳活動が調べられました。

その結果、前半をタブレットで読んだ場合は、前半と後半の情報を統合して理解する問題で、回答に時間がかかる傾向が見られたとされています。

一方、前半を紙の本で読んだ場合は、後半を読むときや問題に答えるときに、言語処理や補助的な理解に関わる脳活動が抑えられていたことが報告されています。

ここでいう“省エネ化”とは、脳が働いていないという意味ではありません。むしろ、余分な負荷をかけずに情報を処理できている状態を指します。

つまり、紙のマンガで読んだ内容は、その後の理解や思考を支えやすくする可能性がある、という点が今回の研究で示されたといえます。

紙のマンガは、なぜ読書体験として記憶に残りやすいのか

マンガは、文字だけで読むメディアではありません。

セリフ、コマ割り、登場人物の表情、視線、背景、ページ全体の構成など、さまざまな情報を同時に読み取りながら楽しむコンテンツです。

読者は、言葉を追うだけでなく、場面のつながりや登場人物の心情を推測しながら物語を理解しています。

特に紙のマンガでは、見開きの構成やページの位置、読み進めた厚み、前後のページとのつながりなどが、視覚的・身体的な手がかりとして残ります。

「あの場面は右ページの下のほうにあった」
「この展開の前に、あの表情が描かれていた」
「物語の中盤あたりで印象的なシーンがあった」

このような感覚は、紙の本ならではの読書体験といえるでしょう。

電子マンガにも、すぐに読める、場所を取らない、持ち運びやすいといった大きなメリットがあります。しかし、画面上でページが切り替わる読書体験では、紙の本が持つ物理的な手がかりや、ページ全体を身体感覚として捉える感覚は得にくい面があります。

今回の研究は、そうした読書体験の違いが、読後の脳活動にも影響しうることを示した点で注目されています。

大切なのは「紙か電子か」の勝ち負けではない

「紙のマンガ vs. 電子マンガ」という見出しだけを見ると、どちらが優れているのかという比較に見えるかもしれません。

しかし、今回の研究から考えたいのは、単純な勝ち負けではありません。

電子マンガには電子マンガの良さがあります。読みたい作品をすぐに購入できること、移動中でも読めること、保管スペースを気にせず多くの作品を持ち歩けることは、デジタルならではの大きな価値です。

一方で、紙のマンガには、じっくり読む、作品の世界に入り込む、偶然の出会いを楽しむ、同じ空間で誰かと共有するといった、リアルな読書体験としての価値があります。

つまり、これからの読書環境では「紙か電子か」を一方的に選ぶのではなく、それぞれの特性を理解し、目的や場面に応じて使い分けることが重要になっていくのではないでしょうか。

施設における紙のマンガコーナーの価値

今回の研究は、店舗や施設に紙のマンガコーナーを設置する意味を考えるうえでも、興味深い示唆があります。

温浴施設、ホテル、旅館、学生寮、公共施設、商業施設などに設置されるマンガコーナーは、単なる暇つぶしのための設備ではありません。

利用者が本棚の前で作品を選び、気になる一冊を手に取り、ページをめくりながら物語に入り込む。友人や家族と「このマンガ知ってる?」「昔読んでいた」と会話が生まれる。思いがけない作品との出会いが、施設で過ごす時間の満足度を高める。

こうした体験は、紙のマンガだからこそ生まれやすいものです。

特に施設というリアルな空間では、紙のマンガは「そこにあること」自体が価値になります。本棚に並んだ作品が目に入り、なんとなく手に取り、気づけば長く滞在している。そうした自然な行動を生み出せる点は、紙のマンガコーナーならではの強みです。

紙のマンガコーナーは、施設の滞在時間を伸ばすだけでなく、その施設らしい過ごし方をつくるコンテンツでもあります。

デジタル時代だからこそ、紙のマンガが施設の差別化になる

スマートフォンでいつでもマンガを読める時代に、あえて施設に紙のマンガを置く意味は何か。

その答えのひとつは、デジタルでは代替しにくい「場の体験」をつくれることです。

家では電子マンガを読んでいる人でも、施設に来たときには本棚の前で作品を選び、紙のページをめくりながらゆっくり読むことがあります。普段は読まないジャンルに出会ったり、昔好きだった作品を見つけて懐かしさを感じたりすることもあります。

紙のマンガコーナーは、単にコンテンツを提供するだけではありません。施設の中に、滞在したくなる理由や、もう一度訪れたくなるきっかけをつくります。

さらに、幅広い年代に親しまれているマンガは、子どもから大人まで楽しめるコンテンツです。親子、友人同士、学生、ひとり利用など、さまざまな利用シーンに自然になじみやすい点も、施設向けコンテンツとしての大きな魅力です。

スリープツーリズムとも相性がいい、紙のマンガという“眠る前の過ごし方”

近年、宿泊業界やウェルネス領域では「スリープツーリズム」という考え方にも注目が集まっています。

スリープツーリズムとは、観光地を巡ることだけを目的にするのではなく、睡眠の質を高めたり、心身を休めたりすること自体を旅の目的にする考え方です。

ホテルや旅館でも、寝具、照明、香り、音、入浴、リラクゼーションなどを組み合わせて、「よく眠るための滞在体験」を提供する動きが広がっています。

この流れの中で、紙のマンガは意外にも相性のよいコンテンツではないでしょうか。

休息というと、すぐに「何もしないこと」や「寝ること」を思い浮かべがちです。しかし実際には、いきなり眠ろうとしても、スマートフォンを見続けてしまったり、仕事や日常のことが頭から離れなかったりすることもあります。

そんなとき、紙のマンガを手に取り、ゆっくりページをめくる時間は、眠りに入る前のちょうどよい“余白”になります。

スマートフォンのように通知が届くこともなく、次々と情報が流れてくることもありません。読者は、目の前の一冊に自然と集中し、物語の世界に少しずつ入り込んでいきます。そして、読みながら少し眠くなったら、そのまま本を閉じて休むことができます。

個人的には、この「マンガを読んで、眠くなったら寝る」という過ごし方は、かなり贅沢な休息体験だと思います。

ただ寝るだけではなく、スマホから離れ、紙のページをめくり、物語に身をゆだね、自然に眠気が来たらそのまま眠る。

これは、デジタル時代の宿泊施設や温浴施設において、ひとつの“究極の休息体験”として提案できるのではないでしょうか。

特に、温浴施設やホテル、旅館、グランピング施設などでは、入浴やサウナ、リラックススペースで過ごしたあとに、紙のマンガを読む時間を組み合わせることで、滞在全体の満足度を高めることができます。

「よく遊ぶ」「よく食べる」だけでなく、「よく休む」「よく眠る」ことが旅の価値になっている今、紙のマンガコーナーは、施設の休息体験を豊かにするコンテンツとしても見直せるはずです。

紙のマンガの価値は、まだ終わっていない

電子化が進むなかで、紙の本の役割は変わりつつあります。

かつては「マンガを読むための当たり前の手段」だった紙のマンガは、今では「深く読む」「偶然出会う」「空間の中で共有する」という体験を生み出すメディアとして、改めて価値を持ち始めていると筆者は感じます。

今回の研究は、紙のマンガの魅力を、懐かしさや手触りといった感覚的な面だけでなく、読後の理解や脳活動という観点からも考えるきっかけになるものです。

さらに、スリープツーリズムのように「休むこと」や「眠ること」そのものが価値として注目される時代において、紙のマンガは、眠りに入る前の過ごし方としても可能性があります。

スマートフォンから少し離れ、紙のページをめくり、物語を楽しみ、眠くなったらそのまま休む。

そんなシンプルな時間が、宿泊施設や温浴施設における新しい休息体験になるかもしれません。

デジタルにはデジタルの良さがあり、紙には紙の良さがあります。そのうえで、施設というリアルな場においては、紙のマンガだからこそ生み出せる滞在体験や休息体験があります。

弊社スマートコミックのサービスでは、施設の目的や利用者層に合わせたマンガコーナーづくりをサポートしています。紙のマンガが持つ体験価値を活かし、施設の魅力づくりや滞在時間の向上、休息体験の充実につなげたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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