管理会社がADを「増やしましょう」と言ってきたときに確認すべき5つのこと

「空室が続いているので、ADを増やしませんか?」

管理会社からこう提案されたとき、すぐに「わかりました」と応じていないでしょうか。ADの増額が正しい判断であるケースは確かにあります。しかし、すべてのケースでそうとは限りません。

ADの増額は仲介業者へのインセンティブを高めるための施策ですが、空室の原因が「仲介業者の紹介頻度」以外にある場合、ADを積んでも空室は解消しません。本記事では、AD増額の提案を受けたときにオーナーが確認すべき5つのポイントを解説します。

目次

確認① なぜ今の条件では決まらないのか、具体的な説明を求める

最初に確認すべきは「なぜ現在のADでは入居が決まらないのか」の具体的な理由です。

「市場が厳しいので」「競合が多いので」といった曖昧な説明では不十分です。具体的にどの競合物件と比べて、何が(家賃か、設備か、ADの金額か)見劣りしているのか。問い合わせは何件来ていて、内見は何件あったのか。内見後に決まらなかった理由は把握しているのか。

これらの数字を管理会社が持っていない、あるいは説明できない場合は、ADの増額が本当に有効な対策かどうかの判断材料が不足しています。「とりあえず増やしてみましょう」という提案は、根拠のない出費を促している可能性があります。

確認② 管理会社自身がADの受け取り先になっていないか

ADは通常、入居者を連れてきた仲介会社(客付け業者)に支払われます。しかし、管理会社自身が賃貸仲介も行っている場合、管理会社の仲介部門がそのADを受け取る構造になります。

この構造が直ちに問題というわけではありませんが、利益相反のリスクを含んでいます。管理会社にとっては「ADを増やすことが自社の仲介収入増につながる」ため、オーナーの利益最大化よりも自社の収益を優先した提案になっている可能性があるのです。

確認すべきは、ADの支払い先がどこになるのか。管理会社自身が客付けする場合と、他社の仲介会社が客付けする場合で、ADの流れがどう変わるのか。この構造を把握しておくだけでも、提案の妥当性を判断する助けになります。

確認③ ADの増額以外にできることはないか

ADの増額はあくまで「仲介業者のモチベーションを上げる」施策です。しかし空室の原因は、仲介業者の紹介頻度だけとは限りません。

たとえば、そもそもポータルサイトへの掲載が不十分であれば、ADをいくら積んでも入居希望者の目に触れません。写真が暗い、紹介文が薄い、掲載サイトの数が少ない——こうした問題はADでは解決できません。

管理会社に対して「AD増額以外にできる対策はありますか?」と聞いてみてください。写真の撮り直し、掲載情報の充実、フリーレントの導入、募集条件の見直し——ADより先にやるべきことが残っていないかを確認することが重要です。

空室の原因を切り分けた上で、「仲介業者の紹介頻度を上げることが解決策になる」と判断できた場合に限り、AD増額は合理的な選択肢になります。

確認④ 増額後の具体的な募集活動の変化を確認する

「ADを増やしたら、具体的に何が変わるのですか?」と聞くことも大切です。

ADを増やした結果、仲介業者がどのような追加の行動を取るのか。ポータルサイトでの掲載順位が上がるのか、営業マンが優先的に紹介してくれるのか、新たな媒体に掲載されるのか。具体的な変化が説明できなければ、ADの増額はコストだけが増える結果になりかねません。

もちろん、ADの仕組み上、仲介業者の営業マン個人のインセンティブに直結するため、「優先的に紹介してもらえる」という効果は確かに存在します。しかし近年は、入居者自身がポータルサイトで物件を指定して来店するケースが大半です。営業マンの「おすすめ」だけに頼る戦略は、かつてほど有効ではなくなっています。

確認⑤ AD増額の「上限」を自分で把握しているか

最後に、最も根本的な確認です。あなたはADにいくらまで出せるのか、自分で計算していますか。

ADの適正額は、物件の利益構造から逆算して決めるものです。月間手残り、平均入居期間、入居者1人あたりの総利益(LTV)。これらの数字を把握していれば、「ここまでなら投資として合理的」「これ以上は赤字になる」という判断基準を自分で持つことができます。

管理会社から「ADを3ヶ月分にしましょう」と提案されたとき、その金額が自分の物件のLTVに対して何%なのかを即座に判断できるかどうか。この判断力があれば、管理会社の提案に対して「承諾する」「減額を提案する」「別の対策を求める」の3択を根拠を持って選べるようになります。

ADの増額を断っても問題ないのか

「管理会社の提案を断ったら、関係が悪くなるのでは」と心配するオーナーもいるかもしれません。しかし、管理会社はオーナーから管理委託を受けて報酬を得ている立場です。オーナーが経営判断に基づいて提案を検討し、条件を付けたり代替案を求めたりすることは、経営者として当然の行為です。

むしろ、何でも言われるがままに承諾するオーナーよりも、数字に基づいて質問し、建設的な議論ができるオーナーのほうが、管理会社にとっても仕事がしやすい相手です。

AD増額の提案を受けたときは、上記5つの確認を行った上で判断する。この一手間を加えるだけで、広告費の無駄遣いを防ぎ、空室対策の精度を大きく高めることができます。

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