2026年トレンド予測|なぜ今「昭和の少女マンガ」? Z世代を魅了するロマンチックな美学とレトロ・リバイバルの行方

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レトロブームで昭和のマンガが見直されている

切なくなってくるラブストーリーから、気持ちが盛り上がりそうなスポーツマンガ、胸が熱くなるバトルシーン満載の物語、思わず涙が止まらなくなる感動作まで、昭和時代の高度成長期から平成初期にかけて多くの名作が誕生しました。

特に1970~80年代は、マンガの黄金期と言われており、現代の若者も一度は目にしたことのある有名作が豊富です。実際にマンガ雑誌も週刊・月刊問わず多く創刊しており、雑誌やコミックスを学校の友だちや部活仲間、兄弟姉妹といっしょに夢中になって読んだ経験を持つ人も多いのではないでしょうか。

そうした中でも今回は、当時めざましい飛躍を見せた少女マンガに注目したいと思います。

今でいう小学校高学年~中高生を対象にした少女(マンガ)雑誌は、大正時代からありました。盛りあがりはじめたのは、「なかよし」(講談社)と「りぼん」(集英社)が創刊した1955年以降です。そこから、62年に「週刊少女フレンド」(講談社)、翌63年に「マーガレット」(集英社)。その後、68年に「少女コミック」(小学館)、74年に「花とゆめ」(集英社、現在は白泉社)、「月刊プリンセス」(秋田書店)、77年に「ちゃお」(小学館)などが次々と創刊されました。

これらの雑誌で連載をはじめたのが、池田理代子先生や大和和紀先生、美内すずえ先生、細川智栄子先生、庄司陽子先生など「花の24年組」を中心に1960年代後半にデビューした作家たち。彼女らが大作の連載をスタートしてから、少女マンガおよび上記雑誌の隆盛がはじまりました。

本稿ではレトロ志向の高まりで2026年に再注目されそうな、または今も現役コンテンツとして連載継続されている、チェックしておきたい昭和生まれの少女マンガ作品を紹介します。 取りあげるのは『ベルサイユのばら』『はいからさんが通る』『ガラスの仮面』『王家の紋章』『生徒諸君!』の5本。いずれ劣らぬ傑作・名作ぞろいです。これらを読んで、最もマンガ界に勢いがあった時代の空気感にふれてみませんか?

1970年代の名作少女マンガ5選

『ベルサイユのばら』(池田理代子/1972~1973年)

18世紀後半のフランス、フランス革命のベルサイユ宮殿が物語の舞台。男装の麗人、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェを主人公に、ブルボン朝後期、ルイ15世末期からマリー・アントワネット処刑までを描いた物語です。

物語は、ヨーロッパにある3つの国で1755年に生まれた、オスカル、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン、マリー・アントワネットの誕生から始まります。オスカルは由緒ある将軍での末娘でありながら、男として育てられ、後継ぎとして剣や学問を修め、王太子妃を護衛する近衛士官に任命されます。

その後、孫のルイ16世が即位して、フランスの王妃になったのがアントワネット。オスカルはアントワネットの護衛をすることになりました。そんなある日、アントワネットは舞踏会で出逢ったフェルゼン伯爵と恋に落ちます。

一方、オスカルも幼馴染に恋をしていて……。フランス革命の嵐の中で、その生涯をまっとうした男女の物語です。 連載終了後の1974年には宝塚歌劇団で、本作を原作にした演劇公演が行われ、その後何年かおきに複数回リメイク公演されています。また、1979年にはTVアニメ放映、2025年には発表から50周年を記念して劇場版アニメが公開されました。

『はいからさんが通る』(大和和紀/1975~1977年)

舞台は大正7年の東京。「はいからさん」こと花村紅緒が本作の主人公です。お酒と騒動が大好きな彼女は、竹刀や大槍を持たせれば向かうところ敵なしで、跳ねっ返りのいわゆるじゃじゃ馬娘。

周囲からはガサツとか言われていましたが、人柄は心優しくおおらか。なぜか憎めない性格で、周りの人から愛されていました。

そんな紅緒に紹介されたのは、婚約者(許嫁)の少尉・伊集院忍。最初は納得行かないところもあり、さまざまな騒動を引き起こしますが少しずつ心を開いていきます。しかし、ある事件がきっかけでふたりの運命は大きく引き裂かれることに。

舞台となる大正時代の日本は、第一次世界大戦、大正デモクラシー、関東大震災など大きな時代の波がありました。その中で、多くの苦難を乗り越えてゆく紅緒を描いた物語です。

1978年にTVアニメが放映された他、1979年と2017年、2020年には宝塚歌劇団により舞台化。特に、アニメはCSでもたびたび再放送されています。

『ガラスの仮面』(美内すずえ/1976年~)

主人公は、おそるべき演技の才能を秘めた13歳の少女・北島マヤ。貧しい家庭で育ち、一見すると「取り柄がなさそうに見える少女」です。しかし、一度芝居や映画を見ただけでセリフや役者の動作を正確に再現し、自分がその役だったかのように演じる能力がありました。

そんなマヤと出会うことになるのが、かつて名作「紅天女」で主役を演じ、大女優と呼ばれた月影千草。千草は後に劇団を立ち上げ、マヤはそこへ奨学生として入団します。そして、父親に有名映画監督、母に大女優を持ち、自らも美貌と才能、卓越した演技力を持つ姫川亜弓。亜弓はそれまで自分の地位を脅かしそうな人物に出会ったことがありませんでした。しかし、マヤの演技を見て、はじめて生涯の競争相手と認めます。

本作は、北島マヤと姫川亜弓の切磋琢磨を軸に、さまざまな人物との出会いや葛藤を経て、伝説の舞台である「紅天女」に挑む物語です。 本作も1979年から幾度となく舞台化され、1984年と2005年にはテレビアニメ化。2026年には連載50周年を迎えました。

『王家の紋章』(細川智栄子あんど芙〜みん/1976年~)

物語の舞台となるのは、古代エジプト。主人公のキャロル・リードは、考古学を学んでいる16歳のアメリカ人少女です。

リード家の事業は墓の発掘作業。その一環として、若くして暗殺された古代エジプト王(ファラオ)、メンフィスの墓を暴きます。そこに居合わせたキャロルは、神殿の祭祀でメンフィスの姉であるアイシスに呪術をかけられてタイムスリップ。行き着いた先は古代エジプトでした。

古代エジプトにタイムスリップしたことがわかり、一時はパニックに陥ったキャロル。しかし、彼女には現代に生きる人間としての倫理観や考古学の知識があり、そこに興味を持った古代の人たちは古代エジプトを助ける慈悲深い「ナイルの娘」「黄金の姫」として崇めます。

キャロルは幾度となくメンフィスを暗殺から救い、晴れて王妃となります。しかし、現代の英知と可憐な容姿を持つキャロルは、古代エジプトでさまざまな困難に遭遇することに。 本作は、時空を超えた現代人と古代エジプト王のロマンスを描いた物語です。

『生徒諸君!』(庄司陽子/1977~1985年)

物語の舞台は、聖美第四中学校。主人公は、中学2年生の少女・北城尚子(愛称ナッキー)です。物語は、聖美第四中学校2年A組に転校するところからスタート。彼女は自分に素直な感性を持ち、思ったことはなんでも口にする性格。その快活さで、学園生活に新たな風を巻き起こします。

明るくパワフルなナッキーは、転校先で初恋の人と出会い、同じ教室で出会った6人とグループ「悪たれ団」を作り、学校では体育祭など学校行事で大活躍。しかし、その裏には寂しさの影がつきまとっていて……。

中学・高校・大学、そして社会へ出るまでに間に起こる、学校行事や進学、恋愛、家庭の事情などのイベントを通して多くの経験を積みながら、強い友情を育み成長していく物語です。 『生徒諸君!』本編は1985年まで連載。続編として描かれた『生徒諸君!教師編』(2003~2011年)『生徒諸君!最終章・旅立ち』(2011~2019年)がシリーズ三部作と呼ばれ、現在はナッキーが旅立ってから数年後を描いた『生徒諸君!Kids』が連載されています。

少女マンガにおける昭和リバイバルブームの理由とその行方

本稿で紹介した名作たちは、現代にも通じる普遍的なテーマや世界観を持っており、現代のレトロ(昭和リバイバル)ブームで再評価されている作品です。

ここでは、なぜ昭和の少女マンガが見直されているのか、その理由と今後の行方についての考察を述べていきます。

1. 親・祖母世代との価値観共有

1970年代に、今回紹介した『ベルサイユのばら』『ガラスの仮面』などを読んでいた少女たちは、現在50代~60代。子どもや孫がいる世代です。

親・祖母世代にとっては、小さい頃に読んでいた懐かしいマンガとして映りますし、子どもにとっては親が読んでいたマンガを自分たちなりの解釈で語る機会になり、親子2代もしくは3代でコミュニケーションを取るきっかけとなります。

2. アニバーサリー企画などとの連動

2026年は、出版社の集英社が創業100年を迎えます。また、2026年2月から美内すずえ先生の『ガラスの仮面』50周年原画展示会が東京と大阪で、2026年10月からは「少女マンガ・インフィニティ 萩尾望都×山岸凉子×大和和紀 三人展」が、東京の国立新美術館で行われるなどイベント豊富です。

こうした企画には、リアルタイムで読んでいた世代はもちろんのこと、親・祖母の影響で読みはじめた子どもや孫世代の集客も期待できるので、よりリバイバルブームが盛り上がるでしょう。

3. テーマ・ストーリーラインの再評価

少女マンガのテーマにおける近年の傾向として、いわゆる「普通の女の子の努力」を描いた作品から、多面性を持つ主人公が登場する作品、好きなことに忠実に生きる自立型の人物を描く作品が増えています。

これは、作品の傾向が共感できる生き方から理想の生き方を描くものへと変化したことが理由でしょう。

たとえば、ガールズラブやLGBTQといった多様なジェンダー観の主人公、「好きなもの」にこだわって生きているオタク気質の主人公など、描かれる人物も時代に合わせて変化しているのがわかります。

少女マンガにおける基本である、「憧れの人と結ばれようと奮闘する姿」や「少しヌケたところのある主人公とヒロインとの恋愛」。その多くは、1970~80年代の少女マンガ黄金期に作られたものです。 そうした点こそ、昭和の作品が今見直されている理由といえるでしょう。

まとめ – リバイバルブームは形を変えて続いていく

現在の少女マンガ界は「推し活」や悪役令嬢ものに代表される「異世界転生もの」、「ジェンダー」、「緻密な心理描写」、「乙女ゲーム原作作品」などのようにテーマ・ジャンルとも幅広くさまざまです。

その中で、1980年代に発表された『摩利と慎吾』を代表作に持つ木原敏江先生が、小学館の「フラコミLike!」にて『ミーガンとD卿』という新作を発表するなど、ベテラン作家の新たな挑戦も注目されています。

マンガに限らず1970~80年代(昭和40年代~60年代)における流行のリバイバルブームは、20年周期で起こるとも言われます。

その中で、昭和の少女マンガも過去の作品がそのまま続いていくのではなく、リアルな心理描写や、現実に起こっているジェンダーや多様性への理解を取り入れて、令和の少女マンガとして発展していくのではないでしょうか。

(執筆: なつめれいな)

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