予測不能のミステリー!『遺書、公開。』は心の闇を暴く

学生時代は大っぴらにとは言えないまでも、どこかスクールカーストに支配されていたという方も少なくはないでしょうか?
今回ご紹介する『遺書、公開。』では、誰かが作ったらしい「序列表」がクラス内で広まったことで起きる悲劇を描いています。
果たして誰が何のためにそんなことをしたのか、犯人は誰なのか、そして──?
スリル溢れるサスペンスをお届けします。
自殺した序列「1位」
とある私立中学の2年D組。始業式の朝、クラスメイト全員に「お知らせ」と題したメッセージが届きました。それは学校側が送ったものではない、惑わされないようにと教師は言います。
1位とランク付けされていたのは、姫山椿という笑顔の可愛らしい穏やかな少女でした。クラスメイトはどことなくそんな「1位」の姫山を無意識に持ち上げたりします。
しかしメッセージが届いてから半年経ったある日、姫山は学校のトイレで自殺をしてしまいました。遺書はありません。
クラスメイトは葬儀に集まり、学校に戻ると、各々の机の上に封筒が置かれていました。どうやら姫山からの手紙のようで、遺書とも言えます。
姫山の自殺の理由を探るため、D組ではそれぞれ自分の受け取った手紙を公開していくことになったのですが……?
ただの手紙ではない?
本人にとっては何ということもない手紙の内容でしたが、他の人間が深読みすると、どこか皮肉めいた文面であることがわかってきました。そんなことが続き、姫山の自殺の理由を知る公開の場が、いつの間にか姫山を死に追いやった「犯人探し」へと変わっていきます。
クラスメイトたちは互いにギクシャクし始めます。しかし30人分の遺書の辻褄が合わないとおかしいため、安易に偽装もできず……。
作者もあとがきで述べているように、何を書いてもネタバレになるという複雑な関係のD組。しかし姫山と本人しか知らないことが書かれていて、他の人間が遺書を書いたとも断言できません。
かと言って姫山は「そんな人」ではないとみんなが思っています。それは序列が「1位」だからなのです。
本作のみどころは、何を根拠にした序列かもわからないのに、みんながそれに引っ張られているところでしょう。そしてお互いが疑心暗鬼になり、姫山を自殺に追いやったのは自分ではないと思いたがります。
見えてくる意外な真相にドキドキが止まらない
本作には死んだ姫山を含めて30人の生徒と、担任教師1人が登場します。
果たしてみんなが本当のことを話すのか、真実は明らかになるのか? 興味は尽きず、読む手が止まりません。
初めはクラスメイトの顔と名前が一致しなかったりもしますが、読み進めていくうちに各々の個性がわかり、すんなり物語が入ってくるようになるでしょう。ここで個人的な推しを挙げたいところですが、誰を挙げてもキーマンになってしまうので断念します(泣)。
さて、果たして真実はどこから出てくるのでしょうか? 予測不能でどんでん返しが何度もあり、1コマも読み飛ばせない本作。一度「序列」を刷り込まれてしまうと、人はそれに準じた行動をしてしまうように思えます。
いじめではなく、逆に「1位」であることで姫山が抱えていた心の闇や、クラスメイトの心の内をなぞるうち、真実に近付いていくでしょう。
この目が離せない衝撃作をぜひ読んでみてください。暇つぶし以上の大作ですよ。