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TOP > スタッフブログ > 2021/11/15

『ツツジモリ─遺品整理始末録─』は遺族の心も癒す

主人公は友人に裏切られ、会社で居場所をなくし、家賃まで支払えなくなっていた青年・森村風介。彼は気が弱くお人好しで、何でも思いつめて考えてしまう性質でした。そのため勢いで自殺を試みます。

そこへたまたま訪れた躑躅森花壱(つつじもり はないち)が風介を救い、自宅に連れ帰ることになります。生活に困っていた風介は突然仕事を与えられますが、それは死者の部屋を片付けて「遺品整理」をすることでした。しかし本当の仕事内容は片付けだけではなく──?

遺品を「片付ける」生と死のドラマ

冒頭から物語に引き込まれる『ツツジモリ─遺品整理始末録─』は、もちろんただの「遺品整理屋」の物語ではありません。死者が出た部屋からは「遺魂」(いこん)と呼ばれる穢れのようなものが残り、死んでからも生者に影響を与えることがあるのです。躑躅森一族は、そんな「遺魂」を葬ることをメインの仕事にしているのでした。

視えてしまう体質

風介は躑躅森一族とは何の関係もないただの人間でしたが、無意識に「遺魂」に同調して、この世とあの世の間にある「躑躅ヶ間」(つつじがま)に迷い込んでしまいます。しかも躑躅森の一族でも特殊な道具を使わなければ祓えない「遺魂」を、何も持たずに消滅させてしまう能力があることも判明。

半ば「遺魂」に意識を乗っ取られた状態になってしまう風介を、花壱はやがて危険視するようになります。それは、風介と同じ体質だった妻が過去に亡くなっていたからなのでした。もしかすると風介にも取り返しのつかない出来事が訪れるかもしれない……。世話を焼きながらもその心配は拭えないまま、ストーリーが進んでいきます。

死んでから遺族が気付かされる真実

1話完結で続く物語の中で、一番救いがあって個人的に涙を誘われたのは、2巻収録の第7話「遺された宝物」でしょう。余命宣告を受けた依頼人が亡くなり、遺品整理に向かう花壱の息子・奏雅と風介がコミカルに描かれています。

物語は亡くなった男性の妻と、それを認めない男性の両親という冷たい空気の中で進行します。しかしそれも死者の遊び心のある宝探しによって、家族の絆が深まるという心温まるお話です。

他のエピソードでもそうですが、遺品整理屋に依頼をする遺族は得てして死者と仲違いしていたりするもの。自分でしたくないことを業者にやらせるのですから、気分も良くないでしょう。躑躅森の仕事は、そんな遺族に見えなかった真実を気付かせ、円満に収まるようにするという側面も持っています。

風介のトラウマや過去など、触れると痛いような章もありますが、最後には心がスッキリするエンディングが待っています。ようやく自分の人生を自分で決めることができるようになる風介の成長とともに、遺族たちの遺恨や喪失感、そして噛みしめる幸せを一緒に感じてみてください。今生きているという幸せに気付けるのではないでしょうか。

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