皆さん、『北斗の拳』はご存知でしょうか？ 週刊少年ジャンプ誌上で1983～1988年に連載され、アニメ化もされた有名なバトル漫画です。 核戦争で荒廃した世紀末を舞台に、伝説の暗殺拳「北斗神拳」を使う青年ケンシロウが多くの強敵（とも）と戦いながら弱き人々を救っていく姿は、当時の子供たちを熱くさせました。 ・主人公は胸に北斗七星をかたどった7つの傷がある
・人体を内部から破壊する暗殺拳を使う
・決めゼリフは「お前はもう死んでいる」
・倒された敵は「ひでぶ！」「あべし！」など独特の断末魔をあげて爆散する 作品を未読でも、こうした知識がある人は多いのではないでしょうか。 今回はその名作を「もし『北斗の拳』が最初から実写ドラマだったら？」という大胆なIF設定で描きなおした『北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』をご紹介したいと思います。 現実と作中のエピソードがごっちゃにならないように、実在するオリジナル漫画のほうを『原作版』と表記しますね。 あの名シーンは偶然から生まれた!?舞台は核戦争で文明が失われた199X年……ではなく、普通にみんな暮らしている1983年の日本。若手俳優・橘 優李（たちばな ゆうり）を主役として新しい金曜ドラマ『北斗の拳』製作が進行していました。 荒廃した世界にモヒカン頭の悪党がヒャッハー！と暴れているのは『原作版』と同じですが、こちらのドラマはまだ撮影スタートしているにも関わらず設定が固まり切っていません。 橘が演じるケンシロウも発勁という実在する中国武術の技を使い、それに打たれた敵も鼻や口から血を吹き出して倒れるだけでした。敵や主人公の肉体美はうまく表現できているのですが、戦闘シーンにいまひとつ迫力がなく監督は悩みました。 そんな時、ザコ敵の上半身を模した精巧なダミー人形にアクシデントが起きます。人形の体内には血糊を通すためのパイプが仕込まれており、鼻や口・眼球から血が吹き出すのですが、
撮影本番でパイプが絡まってしまい出口を失った血糊が内部で膨張。ついに圧力に耐えきれなくなったダミー人形が内部から爆散したのでした。 想定外のNGシーンですが監督は「こんな演出観たことねぇ！ とんでもないドラマになるぞ!!」とまさかのOK。他のザコ敵も同じ方法で倒すため全シーンが撮り直しになります。さらに現場のインスピレーションで脚本になかった必殺技「北斗百裂拳」や名ゼリフ「お前はもう死んでいる」が生まれ、結果的に私たちが知る『原作版』と同じ内容でドラマが完成。 放送された第1話はあまりのインパクトで当時のお茶の間にセンセーションを巻き起こし、シリーズ化されたドラマ『北斗の拳』は多くの伝説を築いていくのでした……！ 撮影裏話とキャラたちの掛け合いで2倍楽しめるこんな感じで現場スタッフと役者のアドリブパが炸裂しまくる本作。怒りに燃えたケンシロウが筋肉の膨張だけで自分の衣服を破く有名なシーンは、役者の服に四方八方からワイヤーをつなげてウインチで引っ張る危険な方法で実現。 人間では演じられない20メートル級の敵を出すため昔の映画用に作成された巨大獣のセットを流用するなど、あらゆる方法でインパクトある映像が作られていきます。今ならCGで済ませるだろうという危険なスタントも役者が実際にこなすハメになり、昭和時代の良くも悪くもおおらかだった空気感がうまく表現されていますね。 撮影完了したものの1話分には尺が足りずシーン追加することになり、そのおかげでケンシロウとシン（初期ライバル）に深い因縁が生まれるなど、『原作版』を知っていればニヤリとできるエピソードが続々と登場します。 また、こうしたドラマ撮影の裏話に加え、本作オリジナルキャラクターである役者たちの人間関係や成長ぶりも見逃せません。 第1話の撮影時点では「とんでもないドラマの主人公になっちゃった」と困惑していた主演の橘ですが、トラブルを乗り越えて作品づくりする中で俳優としての才能を開花させていきます。ここぞというシーンではケンシロウが憑依したかのように、脚本になかったセリフを生み出して視聴者を感動させるほどです。 他にもイケメンがウリだった俳優は今までにない役柄を演じたことで一皮むけ、演技力に自信のなかった清純派アイドルは体当たりでスタントシーンに挑戦してチャレンジ精神あふれる女優に変貌、気の弱さが原因で引退した元力士は過酷な撮影現場で鍛えられたおかげで格闘技界に復帰するなど、『北斗の拳』は関わった役者たちの人生をも救っていきます。 ストーリーが進むうちに役者同士の縁も深まっていき、撮影中のちょっとした雑談シーンさえおもしろく感じるほど。そして突然のスポンサー降板で番組が存続の危機に立たされたときも、過去に出演していた大人気タレントが助けに来てくれるなど、基本的にコメディ作品でありながら胸が熱くなる展開もすばらしいですね。 これを機に原作コミックを読み直すのもアリ！ちなみに『北斗の拳』は約40年前に誕生しましたが、今も現役コンテンツで本作『世紀末ドラマ撮影伝』を含めてスピンオフ、メディアミックスが盛んに行われています。 原作を知らない人は、まずこちらの『ドラマ撮影伝』を読んでから原作版『北斗の拳』を読むという逆パターンも十分アリじゃないでしょうか。 この原作シーンはすごく上手にキャラの感情が表現されてるけど、もしドラマだったら現場の撮影は大変だったかもしれないよね、と新鮮なおもしろみが感じられるかもしれません。そこから豊富なスピンオフ作品に手を伸ばしていくのも良さそうですね。 原作を知っている人はなつかしさを感じながら、知らない人は驚いたりハラハラしたりしながら、ぜひ本作をご一読していただければと思います！ 『北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』も店舗向け漫画リース「スマートコミック」でレンタル可能！店舗向けコミックレンタルサービス「スマートコミック」は、漫画コーナーを作りたいお店様へコミックの貸出・リースを行っています。 すべて料金内で付いてくる！ 「スマートコミック」のうれしいポイント
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